★新教育コラム「出会いこそが教師をつくる」開始にあたって
だれしも、教師人生に変化をもたらした、心に残る出会い(人、物、出来事など)があるといいます。このコラムでは、その出会いについてリレー方式で語っていただきます。
【第11回】先輩からのバトンを後輩に
〜新城市立千郷中学校 川本篤史〜
「それはまずいよ、川本君」
当時、新任ながら担任を持った私に、隣のクラスを担任していたアラサーの先輩からよく言われた言葉です。学級経営、指導の方法、連絡や対応の遅れ。「それはまずいよ、川本君。そういうときは・・・」と毎日のようにいろいろなことを教えていただきました。
そんな先輩に対して、自分の考えに固執する時もたびたびありました。そんなときには、後から学年主任の先生が、「川本君の考えもわかるけれど、アラサー先生の思いはね・・・」と教えてくださいました。アラサーの先輩は2年間、私と同じ学年を担当し、その後、隣の学校に転勤されました。
それから数年が経ち、私が30歳近くになったある日、久しぶりにアラサーの先輩とゆっくり話す機会がありました。その際に、昔たくさん指導していただいたことのお礼と共に、「当時の先輩と同じ年になっても、先輩のようにはなかなかできない。」という話をしました。
先輩はちょっとばつが悪そうな顔をした後、「実はな。」と教えてくださいました。当時「それはまずいよ、川本君」とご指導いただいたことの多くは、学年主任からの命を受けての指導だったそうです。
学年主任はよく先輩に、「同じことを言っても、自分の立場で言うとアドバイスではなく指示の意味合いが強くなる。アドバイスは少し上の先輩が言うのがちょうどいい。それで困るようなら自分が出るから。」と話されていたそうです。先輩自身も私を指導しながら、学年主任から多くのことを学んでいたそうです。そして、学年主任自身もまた、過去に先輩からの命で後輩を指導することで多くのことを学んだのだそうです。
この話を聞いて、自分はなんてすばらしい先輩たち恵まれ、育てていただいたのだろうと感じました。そして、自分が先輩たちから教えていただいたことや先輩の思いを、自分の後輩へ受け継いで行かなければいけないと思うようになりました。
当時の学年主任に近い年齢になった今でも、当時の学年主任には全く及ばない未熟な自分でしかありません。しかし、若手を誘い、後輩を巻き込み、若手と後輩と一緒に教師力を高める努力をする中で、後輩に先輩からの思いを伝えていきたいと考えています。
(2013年7月1日)