愛される学校づくり研究会

★新教育コラム「学校マネジメント考」開始にあたって

 管理職には、特に「学校マネジメント力」が必要であると言われるようになりました。ところが、愛される学校づくり研究会の中で「学校をマネジメントするとは具体的にどういうことか」ということを話題としましたが、お互いになかなか明確に示すことができませんでした。
 そこで、それぞれが考える「学校マネジメントの具体例」をリレーで示しながら、考えを深めていくことにしました。皆さんからもご意見をいただきたいと思い、いわば研究会の内部資料ですが、その公開もかねて、この教育コラムを始めました。

学校マネジメント考【14】 
 ― 春日井市教育委員会 学校教育課 指導主事 田中雅也

学校組織をマネジメントする理論や考え方には様々ありますが、ここでは、平成23・24年度に私が教頭として勤務していた学校において取り組んだことを、本コラムで取り上げられている岡本薫氏が示されたマネジメントの流れ等をもとに、失敗談も交えながらまとめてみたいと思います。

以前勤務していた学校は、当時開校5年目の学校で、全校児童約770名、学級数25学級(特別支援を含む)、非常勤を含めると教職員は40名を超えるかなり大きな学校でした。さらに、平成23・24年度には「学習指導」の研究委嘱を受け、平成24年度11月に研究発表会を控えていました。このように、前任校は非常に明確な目標設定や組織づくり等をしやすい状況がありました。しかし、赴任1年目は、それを上手く活かすことが困難な現状もあり、失敗もありました。当時の状況を整理してみます。

<平成23年度当初の現状>

  • 子どもたちも教職員も新しい学校をつくりあげてきた雰囲気に溢れていて、やる気と元気が充満している。
  • 児童の様子として、「明るく元気で素直な子どもたち」「学習の基礎、基本は無理なく定着している子が多いが、活用が今ひとつ」「あいさつや表現(自分の考えや意見等がうまく伝えられない)が今ひとつ」などの実態。
  • 教育活動は盛りだくさん。年間計画には、様々な活動がびっしり盛り込まれている。日課の工夫はあるもののも、柔軟な分、変更が多い行事計画、週日課。週2回、月・木の帰りの打合せと、月1回の職員会議以外は、研究のための諸会議を設定する隙間がない行事計画。
  • 研究で決まっていたことは、助言者の玉川大学教職大学院教授 堀田龍也先生が来校される年4回の期日と24年度の研究発表会の期日のみ。その他は、研究のねらいやテーマ、そのための計画や組織は何も決まっていない。

このような現状でスタートを切った1年目。上手くいくはずがありません。事実、研究テーマや計画、方針や実際の活動の重点などを設定したものの、年度途中で変更したり、研究の授業スタイルも実行しながら修正する手法であったりしたので、担任はじめ授業者には戸惑いが大いにあったはずです。さらに、私自身の管理職としての覚悟のなさにより、研究の継続にも影響する大きな出来事もありました。幸い、一生懸命取り組む教職員の皆さんに救われましたが、大きな反省点です。振り返れば、組織マネジメントとして、目標設定や手段の企画、全体による集団意志の決定や評価などについて十分練られておらず、機能していなかったということです。


 これらの失敗から学んだことをもとに、23年度1月より、24年度スタートに向けた体制づくりをしました。つまり、目標設定や計画、組織や指令や統制をはじめとして、マネジメントが機能するように次のように準備しました。

1 目標設定と計画

  • 研究活動を通してよりよい学校づくりに結びつける。そのための研究テーマとめざす子ども像の設定。
  • 年間計画での教育活動の精選、安定した週時程・日課。研究に関する協議が可能となる時間と場の設定。校内授業研究会(校内研)を核とした年間の研究授業の設定。

2 組織化と指令(集団意志の決定と共有)

目標の達成と、学校全体の意志決定と情報の伝達・共有をスムーズにするための、学年主任を核とした研究推進組織と実践主体を一体化した組織。

3 統制と評価

  • 授業改善を中心とした研究活動が計画通りに進んでいるか確認するための日常的な授業参観 と情報発信(学校HPへのアップ)
  • 年間4回の校内研による客観性の確認と評価の実施。


 そして、スタートした平成24年度。ここでは研究した内容の詳細に触れませんが、前年度から継続して取り組んできた学習規律の徹底と、ICTの有効活用をベースとした確実な習得と、それをもとに活用を図る授業改善への取組が、日を追うごとに順調に進んでいきました。このようになったのは、組織マネジメントが上手く機能したというよりは、助言者である堀田先生からの、適切で教職員のやる気を起こすアドバイスと、それに応えようと熱心に取り組んだ教職員の姿勢の賜であることは間違いありません。
 ただ、このことについて今振り返ると、マネジメントとしても機能していたことが確認できます。とくに重点を置いていたのは、指令と統制です。すなわち、何のためにそれをするのか目的を分かりやすく伝えることと、活動が計画通りに進んでいるかを確認し必要な修正を行うことを大事にしていたということです。具体的には、次の2つです。
 1つ目は日常の授業を観察し、デジカメで場面を切り取りながら、内向きの情報共有を意識して、学校HPに毎日いくつかの授業の具体的な取組(単なる様子でなく、授業のめあてや児童の活動で大事にしたい指導のポイントなど)をアップしたこと。
 もう1つは、校内研で明らかにされた課題について、学年主任が核となった研究推進役でどのように解決していくのかを直ちに検討し、素早く全体に共有したことです。

これらのことを含め、PDCAサイクルで整理すると、次のようになります。
P【共有】 全体会での検討や確認
D【実践】 学年部会での指導案検討・模擬授業・授業実践の繰り返し
C【客観性の確認・評価】 校内研での研究協議や助言者からのアドバイスをもとに評価
A【方向付け】 研究推進部での課題解決の方向性の決定と各部連絡調整
 これらについては、市内の小中学校の研究推進システムの参考となるように図式化して紙面で配付しています。  

以上、前任校での取組を学校マネジメントの面からまとめてみましたが、学校が組織として自動改善していくことができるような仕組みづくりについて、市内全体としても整えていくことが大切であると認識しています。前任校の研究成果の発信・還元とともに、重点を置いて取り組んでいきたいと考えています。

(2013年10月7日)

学校マネジメント考

●田中雅也
(たなか・まさや)

昭和60年4月より春日井市の中学校を皮切りに教員生活をスタート。その後、名古屋、春日井市の小学校、4年間の市教委指導主事を経て、平成23・24年度研究委嘱校の出川小学校の教頭。平成25年度より再び市教委指導主事として勤務し、出川小の研究成果の発信・還元に取り組んでいる。