愛される学校づくり研究会

★新教育コラム「学校マネジメント考」開始にあたって

 管理職には、特に「学校マネジメント力」が必要であると言われるようになりました。ところが、愛される学校づくり研究会の中で「学校をマネジメントするとは具体的にどういうことか」ということを話題としましたが、お互いになかなか明確に示すことができませんでした。
 そこで、それぞれが考える「学校マネジメントの具体例」をリレーで示しながら、考えを深めていくことにしました。皆さんからもご意見をいただきたいと思い、いわば研究会の内部資料ですが、その公開もかねて、この教育コラムを始めました。

学校マネジメント考【10】 
 ― 新城市立作手中学校長 牧野 暢二

このリレーコラムも、岡本薫氏のマネジメントの流れ(7)評価に進むべきところまで来ていると思うのですが、4月からの新米校長の私には、とてもそこまで進むことができません。そこで、自分なりにマネジメントとして大切にしたいことを述べてみます。

私は、学校のマネジメントの中で、「(4)手段を企画する」さらに「(5)集団意思を決定する」という部分が、特に重要ではないかということ考えています。学校は組織ですから、「(5)集団意思を決定する」が必要です。それを通して、職員は一枚岩になっていくように感じます。ここでは実際の職員会議であったことを元に述べてみます。

現在の中学校に校長として赴任してすぐ4月の職員会議が紛糾しました。「校内テストの結果を生徒に返すときに順位を示すか、示さないか」という議論です。
 昨年度まで本校は、全国学力学習状況調査と同じ方法で「正規分布の中のこの位置」ということを示して、明確に順位は示していませんでした。それを「示すべき」とする意見と「昨年度通りでよい」とする意見に分かれました。こうしたことを真剣に議論してくれる職員に恵まれたことが、まずありがたいことです。全員が意見を述べてくれました。それぞれ、受験に向けてという意見、下位の子供の気持ちを考えた意見、保護者の立場からの意見が様々出され、最後に判断を迫られました。

私の(「現状把握」も「原因の特定」もしていない)個人的な意見なら述べることができましたが、校長としての判断はできませんでした。「少し時間をください」というのがそのときの答えでした。
 それから、「現状把握」「原因の特定」を始めました。ここで重視したのは、生徒の現状と保護者から過去に寄せられた声です。また、なぜ示してないのかという原因についても調べてみることにしました。職員にも声をかけて会議中には聞けなかった意見も聞くようにしました。
 そして、数日後に教頭、教務主任とともに議論をして出した結論は、「順位を示す」というものでした。この件については、「PTA総会で教務主任が説明する」「保護者からの質問があった場合には、教務主任・教頭・校長が答える」ということも付け加えました。
 誰一人として異論を唱える職員はいませんでした。幸い保護者の理解も得られました。実力テストの結果を返す場面に立ち会った際に、生徒から「校長先生、順位はやめてくださいよぉ。」との声もありましたが、「次は上がるかもしれないぞ。励みになるだろう。」と切り返すと「あっ、はい。」との応えでした。生徒に浸透するには時間が必要ですが、必ず生徒のためになると考えています。

この職員会議の後、私は「今年は議論する職員会議で行こう!」と職員に声をかけました。そして、「給食の残菜ゼロは今年も進めるべきか」、「メール配信システムのより有効な活用」、「個別懇談会の内容」など様々なことが議論に上がりました。その都度判断に悩まされていますが、議論を尽くした後の職員はいずれの判断も受け入れてくれるように思います。そして、職員集団がより強固な一枚岩になっていくのを感じています。

以上に述べたことを元に、マネジメントについて考えてみます。きれいに岡本薫氏のマネジメントの流れに乗らないのですが、次のように考えました。
(1)現状を把握    「個々に優秀な職員であるが一枚岩とは言えない」
(2)原因を特定    「校長を含め半数の職員が異動した」
(3)目標を設定    「全員が学校運営にかかわる一枚岩の職員集団になる」
(4)手段を企画    「議論する職員会議を行う」
(5)集団意思を決定 「議論する職員会議を行う」
(6)手段を実行    「議論する職員会議を行う」
(7)比較(評価)

このままでは(4)(5)(6)が同列となりしっくりしませんので、どこか考え方がおかしいのかもしれませんが、(5)集団意思を決定することが、一枚岩の職員集団となるために大きな意義を持つように思います。
 また、(3)目標はスローガンの域を脱していませんので、具体的に(7)比較(評価)ができるようなものにしていく必要があります。(7)比較(評価)を考える中で目標も具体性のあるものにしてきたいと考えています。

(2012年7月18日)

学校マネジメント考

●牧野 暢二
(まきの・ようじ)

現在、新城市立作手中学校校長(1年目)。市教委指導主事時代には、情報教育の基盤整備に取り組んできた。初の中学校勤務が校長職であるため新鮮さ感じながら、職員と共に疑問点を明確にする努力をしている。旧作手村に1校の中学校として、地域に愛される学校づくりを推進中。