愛される学校づくり研究会

分かりやすい学校サイト・デザイン講座


★このコラムは、「愛される学校づくり研究会」にて発表された、「わかりやすい学校サイト・ポイント講座」を元に、具体例を追加しながら、デザインにつてい解説していくシリーズです。

【第11回】主治医をさがそう

学校サイトとは無関係の医療の話に聞こえますが、とても似ている点が多いので、こんなタイトルにしてみました。なんとなくWEBデザインを誤解されていることがあり、しかし説明が困難だし、もう少し分かりやすい話に持っていきたいと常々考えていたところです。

春休みのこの時期は、新入学準備や人事異動などもあり学校・職場は大忙し。4月からの学校サイトの運営を相談されるのも丁度この時期が多いので、今回は予定を変更して、「春休みに考えるサイト運営」ということでお話させていただきます。

■ 不安な日々

WEB関連で相談される内容はじつに様々です。たとえば、サイトを一新したいという大掛かりなものから、評判のコーナーを目立つようにしたいというような具体的な相談。その中でも特に多いのが、「なんとかならないか?」「どうしたらいいのか分からない」といった声なのです。
 自分の学校のサイトが一番良いとは思っていないけれども、何が悪いのか具体的にわからないというのが正直なところでしょう。その気持ち、とてもよくわかります。専門的な技術は難しいし、本屋のWEBコーナーでは、どの本を読むべきなのかすらわからない。なにが悪いのか分からないので、なおしようがない。

■ドラッグストアと主治医

そんな時に提案させていただくのが、「主治医を見つけること。」担当医やかかりつけの医師といってもいいですが、日頃から何でも相談できる医師が頼りになります。

今の時代、ドラッグストアを覗けば、薬でも日用品でもなんでも揃う時代です。新商品、流行りの商品、最近の傾向はなんとなく、盛りだくさんの陳列の中に見て取れます。自分の生活に必要なものが分かっていれば、それを購入して利用すれば良いでしょう。ただ、薬を処方したり、健康状態を見てもらって安心するためには、主治医の存在が必要です。そして年に一度は健康診断の実施。生活習慣病は、自分一人では見つけられないですから。

なんでこんな話をするかというと、デザイナーとして相談されたときに、気をつけているのは、主治医として長くお付き合いできるようにしたいと思っているからです。

自分に合った主治医を探すのは、なかなか大変かもしれません。特にWEBサイトの世界は情報も技術も進化のスピードが速いので、専門家でもついていくのはかなり大変です。ましてや、学校の校長先生やホームーページ担当の先生では、何科に受診すればいいのかすら的確な判断は難しいでしょう(失礼)

こんなデザイナーがいたとしたら・・・

  • 「リニューアルですね、ロゴと背景の色を変えておきました。アイコンとバナーを一つずつ選んでお持ち帰りください。」
  • 「うーん、少し動きが足りない様ですね、アニメを追加しましょう。無料のアニメGIFがありますから、こちらのサンプルから選んでトップにおいてくだい。ではお大事に。」
  • 「カッコよくしたいなら、Flash(注1)がいいですよ。みんな使ってる評判のソフトです。少しお高いですが購入して損はないですよ。」
  • 「セキュリティソフトを処方しておきますから、全てのパソコンに入れてください。」

ありがちな光景です。サイト担当の先生がこんな医師に出会ったら、不安のあまり、言いなりになってしまうかもしれません。

私が思う理想の主治医は、学校の現状を見て、経営者(校長)の意志をたずね、健康チェックをしたのち、問題点を説明して(必要があれば、セカンドオピニオンも)では、一緒に改善していきましょう。 という提案をさりげなくできる専門医が良いのではないかと思います。 
 改善の方法も学校学校にあった薬があるはず。本当は薬など必要なくて、日頃の運動や食事を少し気をつけるだけで改善することもあります。 当事者である先生には、なかなか気付かない部分かもしれません。

専門医としての主治医はWEBデザイナーだけでなく、他校の先生や教育委員会、ネットワーク担当のメーカーの人と、セカンドオピニオンが沢山あるはずです。保護者の中にも専門的な知識を持った方がいれば、見方になってもらいましょう。 学校サイトは子供から大人まで訪問してくれる客層の広いサイトです。その人たちからのアドバイスも参考にしましょう。

■健康診断の必要性

主治医に相談することと同時に、自身で行う日頃の健康チェックもかかせません。
 健康チェックは人間でなくロボットも利用できます。たとえば、GoogleAnalitics等を利用すれば、サイト分析が数値で見えてきます。
 自校サイトで一番アクセスの多いのは、当然トップページでしょうが、2〜10番目位のアクセス数や、滞在時間を見て、「意外」なページが上位にあったら、閲覧者との思いにズレがあるかもしれません。
 GoogleAnalyticsなどの利用が困難であれば、Googleの検索枠に自分の学校名+スペースをいれて、よく検索される第二キーワードを見て分析してみるのがもっとも簡単な方法です。訪問者が何を探しているのか教えてくれますし、その探している情報がトップページから探しやすいかを検証するだけで生きたサイトになります。まさに、必要なところに血液を流れるようにすることが健康につながる訳です。

本格的な健康診断を年に1度はしておきたいものです。ご安心ください。無料の診断がこちら(J−KIDS大賞実行委員会:選考資料)で可能です。

 小学校サイトの問診票といっても良いもので、3ページしかありませんが、基本的な健康状態を見るには充分の項目がならんでいます。もちろん、それらの項目は中学校でも有効です。

自分の学校が客観的にどれくらいの評価なのか知りたい時には、「日本の学校」で自分の地域をいれて検索してみます。(国際大学豊福准教授の運営するサイトです) もし、現状のサイトの評価が低くても、がっかりしないでください。指針は「選考資料」にあり、これらを満たすだけでグンと評価は上がります。

「主治医も大事ですが、大切なのは本人が健康になりたいと思うこと。少し身体が動くようになれば、良い方向にころがっていきます。そのお手伝いをWEBデザイナーとしてできれば良いと思います。」
 先週、卒業式準備で忙しい中、このようなお話を校長先生として、ぱぁっと表情が明るくなられたので一安心しているところです。そして、保護者の前で「力を貸してくださいと。」語られた先生には感心させられ、ファンになってしまいました。
 こちらも主治医でいることより、ファンとして応援している方が楽しいに決まっているのです。

さて次回は最終回、1年間の区切りになるような事をお話できるといいのですが。

(2012年3月12日)

脚注

(注1)Flash:アドビ社のWEBコンテンツ作成用開発ソフト。なめらかなアニメーションやゲームなどのプログラムを得意とする。絵と文字に加えて映像を扱うことができるので、目を引くカッコイイサイトに仕上げる事ができる。ただし、iPadや一部のスマートフォン・携帯では見る事ができないので、注意が必要。

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●堀田敦士
(ほった あつし)
教育+ネットワーク+ゲームを3本柱に開発するデザイン会社勤務。若くて元気な頃は、シミュレーションゲーム「TheTower」「シーマン」などのアートディレクターとして徹夜の連続。現在はWEBサイトデザインやCMS開発で主に学校を対象にした広報支援のためのお手伝い。お手伝いがエスカレートして、息子の高校PTAのICT委員会顧問に抜擢され、ICT教育の準備で徹夜の連続。