愛される学校づくり研究会

分かりやすい学校サイト・デザイン講座


★このコラムは、「愛される学校づくり研究会」にて発表された、「わかりやすい学校サイト・ポイント講座」を元に、具体例を追加しながら、デザインにつてい解説していくシリーズです。

【第7回】CMから学ぶ広報戦略

学校広報を考える時に、よくきかれるのが、学校に宣伝が必要なの? というような声です。 広報と広告・宣伝は違います。

■広告と広報

一般の会社で、自分たちの商品を世間に知ってもらいたいという時に、まず広く宣伝しよう!となりますよね。
宣伝、広告、広報、PR、CMなど、商品や企業の情報を相手に伝えるということに関連した言葉は沢山あります。 それぞれの言葉はどこがどうちがうのでしょうか。

  • 広告:アドバタイズメントの日本語訳、宣伝とほぼ同義だが、ポスターやチラシなどの物体をさすことも。
  • 宣伝:プロパガンダ、目的をもってある状態に誘導することもふくむ。広告とほぼ同義だが、行為を指す事が多い。
  • CM:コマーシャルメッセージ、商業的な宣伝。民放のTV番組の合間に入る宣伝を指すことが多い。
  • 広報:パブリックリレーションズ、PR活動。

広告も広報も、広く世間に知らせるという情報発信であることにかわりはありません。

一般企業(まあ、ちょっと大規模な)には広報部、宣伝部といった部署があります。特に、広報については社長室や秘書室に直結した部門である場合もあります。会社の戦略を担っているという意味で、広報戦略室という部署がある会社もあります。トラブルや不祥事が有った会社が、マスコミ対応をする時には、宣伝部ではなく広報室が動きます。

一方、華やかなイメージの宣伝部は、戦略室というよりは、広告代理店との窓口や一企画部門という扱いも少なくありません。商品を売る為の部門であって、商品を外へアピールするための企画をしているのです。

宣伝部と比較すると、広報部は一見地味ではありますが、企業の長期にわたる戦略やその企業イメージを確立するための作業を地道にやっている部門です。もちろんどちらも企業にとっては大切な活動です。

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インターネットは、これらを全て網羅する可能性のあるメディアですので、広告、広報に携わる人々は様々な可能性を試しているという段階ではないでしょうか。

対象でみると、広告宣伝は自分たちの商品をまだ知らない人に知ってもらい、購入の動機としてもらう。広報は知りたいと思っている人にむけて、欲しい情報を用意して納得してもらうためのもの。というような見方もできます。

看板やポスターも広告ですが、テレビラジオなどのマスメディアを利用したCM広告は、広範囲に影響をあたえるということで、いろいろな手法が考えられています。今回はCM広告から、広報にもちゃっかり利用できる物がないか探ってみます。

■CMについて

CMの存在は消費者からみると、よりよいモノを求めたい、知りたいという欲求をかなえてくれるものですが、必ずしも好意的にCMを見ているとは限りません。

広告はなんでもあり、結果売れれば良いのだ とする商業主義を批判する声もありますが、商業活動ですから、売れないといけません。テレビなどのCMを見て「いいね、この商品」と思う人と、「こんなにお金を使ってCM代も価格に入ってるんでしょ、そんな商品は買わない」と思う人がいると思いますが、CM肯定派>CM否定派という式が成立するので、CMが存在するわけです。

知らない人にまでメッセージを届ける(認知度アップ)ことは大変な労力とお金がかかるわけで、当然その効果も期待されます。CMでは様々な工夫と手法が試みられています。

■これは使えるか? CM手法

  • 繰り返し型:商品名だけを連呼する刷り込み型。歌に合わせて何度も連呼すると子どもも覚えてしまう。オヤジギャグやだじゃれの場合も。CMの最後の1秒でかならず出てくる会社ロゴなども刷り込み型。
  • イメージ型:企業イメージや商品イメージを高める為のもの。
  • 参加型:一般の人の意見(のように)紹介する。ひげ剃りを使った人の感想や、映画館から出て来たときにインタビューしてるCMなど。
  • 否定型:「高いから買うなよ」「にがくてマズイ」など、否定されるとついついどんな物か試してみたくなる。
  • ティザー広告:じらし型。あえて全てを見せないで「期待させる」手法
  • ストーリー型:連続ドラマのように話が展開していくCM。白犬やガスコンロ(東京地区)など。「続きはWEBで」として、誘導するパターンも。
  • サイレント型:映像として静止画をつかったり、まったく説明や言葉や音のないCM。最後に社名だけ出るという味付け。
  • ほのぼの型:動物や子ども(赤ちゃん)の力に頼るCM。
  • キャラクター型:タレントやキャラクターを統一して印象付ける。特定のタレントにたよってしまうとリスクもあるので、キャラクターが無難。
  • 検索誘導型:「◯◯で検索してね」と画面で多くを語らないWEB型。情報としては最新の情報に更新できるので、CMの作り直しがないが、◯◯で検索して常に上位にリストアップされるようにしておく事のほうが大変

他にもCM広告には様々な工夫と手法がありますが、われわれが利用したいのは、CM作りのなかのエッセンスです。15、30秒の中のCMでは沢山のことを伝える訳にはいきません。CMで削ぎ落とされている情報はたくさんありますが、それ故に強いメッセージになって記憶してもらえるわけです。商品だけでなく企業名も覚えてもらわなくてはいけません。

学校でいえば、子どもが通っている直接的な関係者以外にも、学校の事を知ってもらいたい。

 ・地域の人が「あの中学は合唱と駅伝が強い学校だ」と言ってくれる。
 ・隣町の小学校は3校連携して、多くの施設を回り、お年寄りにも好評。我が校もやってみよう。

などという話が直接の関係者でないところでも聞かれるようになると、成功と言えるでしょう。

広告や宣伝が大衆を相手にした発信だと書きましたが、実はターゲットとして明確な年齢ゾーンや性別、利用者像があります。誰に、何を伝えるかを明確にしないと、いつ、どこで、どのように宣伝するかが決まらないからです。

■学校広報=WEBサイト+?

みなさんの学校組織の中で広報や宣伝にたずさわっている方は何名いるでしょうか。公立の学校では明確に仕事としての担当者が決まって無い学校もあるかもしれません。校務分掌をみると、情報担当という言葉はありますが、広報という仕事は校長先生の役割のようです。実際、そういう学校の話をよく聞きます。

私立の学校サイト運営をお手伝いしてると、明確に目標をかかげて広報活動しています。一例をあげると

  1. ターゲットは再来年の受験生:
    3年生になってホームページをみて情報を探してるようでは遅い、という意味です。
    1、2年の段階で学校選びをしているような積極的な学生を欲しがっている。
  2. 受験者数の◯%増加:
    他学校や他学部の情報もリサーチしてどの学校の生徒に受験してもらいたいか、戦略を練ります。
    その学校・地区へ重点的にパンフレットを投下します。
  3. 合格者の偏差値アップ:
    入学者の人数をそろえるだけでは、数年後にどんどん人気が下がっていきます。そのためには、多少難解な言葉を使った説明ページをいれたり、合格後の勉強がどんなに難しいかを伝えて、それでもチャレンジするような生徒に来てもらう。

戦略としてのサイト利用ですから、合格してからの生徒への聞き取りで、サイトアクセス回数や、どのページや情報を見て志望したかを集計し、サイトやパンフレットや授業へフィードバックします。これが広報戦略室の仕事であり、WEBサイト担当者と違うところだと思います。

インターネットのサイトには、バナーやフラッシュなどの広告で維持されているページが多く有ります。派手に動く動画広告にかくれて、ほしい情報が見つからないなんてこともしばしばおこります。その点、学校サイトは、運営者側が完全にコントロールできるサイトですから、戦略を考えだしたらそのままサイトへ反映させることができるので便利です。あからさまな宣伝をする必要はありませんが、CM手法から次のようなことも出来るのではないかと思います。

■学校広報CM戦略版

教育目標や、キャッチフレーズを画面に積極的に入れておく。トップページのタイトルに「愛と勇気の◯◯第一小学校」 恥ずかしければ、もう少し控え見めにウインドウのタイトルに仕込んでもいいでしょう。

また、「愛と勇気」の学校である事を第3者にアピールする時には、html内のdescriptionタグにも入れます。こうすると、検索エンジンにも表示されるので、認知度がアップします。(スクールWEBアシスト・プラスではページ作成時に自動で入ります)

もちろん、サイトだけでなく、名刺やメールの署名にも学校便りにも毎回入れましょう。とにかく露出回数を増やして、沢山の人に見てもらうことです。

学校ブログなどで情報発信するときには、ティザー広告を上手に使えば、毎日アクセスしてもらえるかもしれません。 運動会の準備を少しずつ見せていくとか。あるいは全く見せないで、日付のカウントダウンだけしていくようなことも考えられます。

学校の毎日の給食がアップされているサイトがありますが、これもアップする時間と一覧性が大切。 なぜなら、夕食の支度をする保護者さんに、今日はこんな給食でした。と伝えるためのものですから。夕食の材料を買う前に見てもらいたい訳です。CMは鮮度も重要。

キャラクターを使ったクラス、クラブ活動はどの学校でもあると思います。それもWEBサイトに載せていけば、他の学校の方にも覚えてもらえます。そもそもキャラクターデザインは子どもたちが大好きですしね。

授業参観では、伝えたい事がなかなか保護者に伝わらないものです。黒板の隅に、「つづきはWEBで」と書いておきましょう。

CM手法から利用できそうなものが沢山あります。CMになったからチャンネルを変える(ザッピング)ではなく、CMにかくされた、気を引く手法についていろいろ考えてみませんか。

次回は「矢印の使い方でこんなにわかりやすい、生きた矢印の使い方」を予定しています。

(2011年11月14日)

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●堀田敦士
(ほった あつし)
教育+ネットワーク+ゲームを3本柱に開発するデザイン会社勤務。若くて元気な頃は、シミュレーションゲーム「TheTower」「シーマン」などのアートディレクターとして徹夜の連続。現在はWEBサイトデザインやCMS開発で主に学校を対象にした広報支援のためのお手伝い。お手伝いがエスカレートして、息子の高校PTAのICT委員会顧問に抜擢され、ICT教育の準備で徹夜の連続。