愛される学校づくり研究会

分かりやすい学校サイト・デザイン講座


★このコラムは、「愛される学校づくり研究会」にて発表された、「わかりやすい学校サイト・ポイント講座」を元に、具体例を追加しながら、デザインにつてい解説していくシリーズです。

【第4回】写真は撮るではなく、選ぶだ!(編集長になろう)

〜〜学校ブログに有効な写真の使い方〜〜

学校行事や授業などの様子をブログで発信していくことを中心に考えると、高画質な写真は必要ないので、コンパクトデジカメや携帯電話のカメラで充分です。軽くて小型のデジカメ、しかもメモリーもどんどん安くなってきているので、何百枚撮ってもかかるコストはわずかです。動画で撮影しても何十分も撮影できるようになりました。
 高スペックの一眼レフデジカメなども有った方がよいとは思いますが、それよりも、コンパクトデジカメをいつも持ち歩いて、気軽にどんどん撮影して、その中からテーマにあった写真を選んでいきましょう。というのが今回のお話です。昨今のデジカメはほとんどAutoですし、誰でもボタンを押すだけできれいな写真が撮れるようになりました。

 我々はプロのカメラマンではありません。一瞬の美しい瞬間を狙ってシャッターを押すなどということを目指す必要はないでしょう。 今回は、写真の撮影時と選択時とに分けて、テーマを伝える工夫を考えてみます。

 ところで、カメラは3Dを2Dに記録するものだと思っていませんか? 実は、空間のみならず時間軸も含めて記録してくれるのがカメラなのです。ですから、4Dを2Dへ変換する装置ということができます。

〜〜〜空間を切り取るのが写真だ

 先ず、「撮影する」ということについて、空間と時間を別にして考えてみます。空間を切り取る時に対象物とカメラの位置関係は非常に重要です。ぐっと近づいて被写体に迫るのか、全体を俯瞰して広範囲を撮影するかは、何を写したいかによって変わってきます。
 空間を切り出す時に重要なのは、レンズの画角です。 最近では一眼レフカメラ+交換レンズという贅沢な買い物をしなくても、安価に広角から望遠レンズまで使えるコンパクトデジカメが出ています。

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超広角(魚眼)や超望遠というレンズもありますが、高価ですし、学校で使用するには、必要ないでしょう。28mm〜120mmくらいのズームレンズ(光学4倍ズーム等)があれば、充分と思います。もし、レンズにお金をかけるとしたら、レンズのf値の小さい(f1.4〜f2.8などの明るい)レンズを選択するほうが得策です。(コラム参照)
 体育館などでのスポーツ撮影には、シャッタースピードを速くしたい場合が多いので、明るいレンズだとかなり有効です。

撮影する時のコツということで大切なのは、被写体との距離と画角でしょうか。例えば、運動会の撮影で考えても、全体の雰囲気をとらえるのは広角で、児童生徒の真剣な表情は望遠で。といった使い方があります。ブログ用に記録するなら、すべて撮影しておくのがよいでしょう。私は、広角側で数枚、望遠で気になった被写体を数枚。自分の前後左右を含めて360度周りを。さらに腰を落として数枚、できれば高い位置から地面を入れて数枚、一気に撮影しておきます。(一つのシーンに数枚〜10数枚程) 広角で撮る時には、全ての人間が小さく写りやすいので、近距離や中距離にもモノを入れるとよいでしょう。広角は手前から遠くまでピントが合いやすい特徴がありますので、奥行きが表現しやすいレンズです。例えば校舎全体を撮影する場合は、手前に校門やジャングルジム、桜の木の枝などを中心から外して入れておくと、空間に奥行きが出ます。

〜〜〜時間を切り取るのも写真だ

カメラは切り取る時間を選ぶこともできます。スポーツ選手の真剣な表情をとらえたりするのは、肉眼でよりもカメラの方が得意です。また、天体写真のように長時間露光することで、見えてくる世界もあります。
 この写真は、落雷が続く夜に30秒程シャッターを開けてたまたま撮れるのを待っていた写真ですが、三脚を使って、空に向かってシャッターを押すだけですので、誰でも撮れます(ただし、100枚程撮影して1枚やっと成功。これもまた楽しい)。

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デジカメの低価格化と、高機能化によって、写真を取り巻く環境が激変しました。また、近年ではメモリー価格も安くなり、4〜8GBのSDカードメモリーでも数百円で購入できます。数年前には2〜3万円でしたので、100分の一のコストです。フィルムの時代では考えられないことです。写真の枚数にすると、何百枚も記録しても、1枚1円という価格。しかも繰り返し使えるメモリー媒体ですので、コストは0円と同じです。フィルム時代では、余程の趣味でもないかぎりこんな写真を撮影するのは勇気が要りました。

 また、徒競走やリレーなどの時はここぞという瞬間をのがさない為には、動画モードにして撮影しておきます。一般に静止画とビデオモードを比べると、ビデオモードでは画素数が足りませんが、ブログ用の写真ならビデオの中の1コマでも充分にきれいです。

デジカメですと、シャッターを押した時に画面が見えなくなるものが多いので、ビデオモードのように常に被写体を補足できる方がブレないのです。目の前を猛スピードで走り抜けるクルマでも、ビデオでしたら問題無く撮影できます(富士サーキットにて、iPhoneでビデオ撮影)。 その中からこれという一枚を後でじっくりとパソコンで選ぶのです。

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どんどんシャッターを押すのはよいですが、ひとつ気をつけたいのは、ボケとブレです。
 ボケは焦点があっていない状態で、ピンボケのこと。オートフォーカス(自動焦点)のカメラがほとんどですが、どこにピントが合うのかは、カメラの設定によってちがいますので、普段から慣れておく必要があります。
 ブレは、動きの早いものや、カメラの持ち方がしっかりしていないために被写体がずれて写ることです。次の点に注意です。
(1)カメラは両手で持つ。
(2)シャッターは息を止めて、ゆっくり押す。
(3)暗い場所ではストロボを使う。
(4)スポーツモードなどで、シャッタースピードを速くする。

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但し、わざとブレを使って撮影することもあります。シャッタースピードが200分の一の写真では動きが止まってしまいますが、20分の一くらいにすると、手前の速く動く部分はブレるので、スピード感が強調されてきます。(Autoのデジカメでは、わざとスポーツモードにしない)


〜〜〜選択時の工夫

 沢山の素材が集まったら、それをどう料理するかを決めますが、その前にテーマを決めましょう。
 写真を撮っている時に、テーマを決めながら撮影するのは難しいですが、運動会の一日が終わったあとで、振り返ってみて今日のテーマはこれだ!というものはきっと見つかるはずです。リレーの中なら、アンカーのがんばり以外にも、クラスの応援、真剣に走っている横顔、おもわず大声で応援する保護者の顔。ゴールした後のガッツポーズや、おしくも負けた後の悔しい顔。逆転をささえた最後の応援。
 写真のキャプションや、ブログのタイトル考えながら、沢山の写真を見ていくとテーマが見えてくることもあるかもしれません。そういう、振り返りの中での発見は楽しいものです。
 複数の人が撮った写真を集めて、編集会議をするのもおすすめです。同じ場面を撮影していても、撮影者によって違ったテーマが見えてくることがありますから。

〜〜〜3コマで物語をつくろう

 1枚の写真でテーマを見せるのではなく、2〜3枚を組み合わせて物語をつくることができるのがブログのいいところ。
 そして、必要な写真がたまたま撮れていなくても、言葉で補えるものブログのいいところです。

例えば、何気ない給食の献立を撮影して、学校日記に掲載している学校は多いと思います。 ここで、編集長ならどうする? と考えてみました。

(1)今日の献立として給食の写真、地域の特産物が入っているのでそのアップ写真(例えばキウイフルーツ)、児童の食事の様子の3枚
(2)今日の献立として給食の写真、キウイフルーツのアップ写真、ニュージーランド国旗の3枚

 3枚を選ぶ時に、(1)とするか(2)とするかで、添えられる文章がちがってくるはずです。明らかに、(2)には意図があります。これは給食を撮影した時には考えていないテーマかもしれません。

何かテーマを決めて撮影すると分かりやすい写真になるのはいうまでもありませんが、あえて写真を撮る行為と、選ぶ行為を分けて考えると違った使い方が見えてくると思います。
雑誌作りでいうと、カメラマンと編集長が別なように、撮影する役割とテーマ作りが別でもかまわないということです。そう思うと気軽に撮影することができると思います。

写真がそろってくると、タイトルや、キャプションにも凝りたくなってきます。
 次回は、「ついいつい読みたくなるブログタイトル」についてです。

【コラム 適正露出】

写す対象のことを被写体といいます。
写真は被写体に当たった(あるいは発する)光をとらえるものですから、光が無いと写りません。光をとらえることを露出(露光)といいます。
 シャッターを押すと、レンズを通して被写体の光が受光部(フィルムやセンサー)に当たりますが、写真によっては、暗くなったり、明るくなったりして失敗することがあります。露出には最適な状態があるのです。(適正露出)

 適正露出は、シャッタースピード、絞り値、受光部感度の3つの要素できまります。

 人間の目に置き換えると、シャッターはまぶた、絞りは光彩、受光部は網膜の関係に似ています。

 シャッタースピードは30分の1秒とか250分の1秒という露出時間です。シャッターの開いている時間が短い程、一瞬を写すことができますが、光の量が足りなくなるので、明るい屋外やストロボを使って十分な光の量が必要です。

 絞りは、レンズの直径です。絞るとレンズを通過する光の量が減りますので暗くなります。絞らないと、明るくなるのでシャッタースピードを速くできます。
レンズの特性として、絞らない明るいレンズは、焦点が合う場所が前後に狭くなるので、ボケを利用した写真が撮れます(明るいレンズは被写界深度が狭い)。

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被写界深度を利用して周りをぼかす。

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絞って遠くまで鮮明に写す。

レンズには、口径が大きくて明るく写るレンズと、口径の小さい暗いレンズがあります。明るいレンズの方が一般的に高価です。

 受光部の感度はISO感度というのですが、弱い光でも適正露出にしようとして、感度を上げると画質が悪くなります。
 逆にISO感度が低い時は画質が良いのですが、十分な光を与えないといけません。

 この3つの組み合わせで適正露出が決まりますが、どれを優先するかによって、写真の仕上がりが変わります。テーマに応じて使え分ける必要があるわけです。

20年程前は、夜の撮影では画質を犠牲にしてISO1600などのフィルムを使い、昼間の撮影で高画質の写真に仕上げたいときはISO64などのフィルムを選択していました。これは、フィルムを入れ替えないと切り換えができないので、非常に不便でした。デジカメでは、フィルムがありませんし、スイッチの切り換えで、ISOを設定できます。またほとんどのデジカメはISOの設定自体もAutoですから意識する必要はありません。

(2011年8月8日)

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●堀田敦士
(ほった あつし)
教育+ネットワーク+ゲームを3本柱に開発するデザイン会社勤務。若くて元気な頃は、シミュレーションゲーム「TheTower」「シーマン」などのアートディレクターとして徹夜の連続。現在はWEBサイトデザインやCMS開発で主に学校を対象にした広報支援のためのお手伝い。お手伝いがエスカレートして、息子の高校PTAのICT委員会顧問に抜擢され、ICT教育の準備で徹夜の連続。