愛される学校づくり研究会

【第2回】1学期の通知ファイル

7月18日、1学期終業式。私が担当する3年1組の生徒にも通知ファイルを配布するときが来ました。
 その日の生徒は、「ああ、いやだなあ」「通知ファイルはいらな〜い」などと言いながらも、早く欲しいような口ぶりでそわそわ。内心「上がっているといいなあ」「下がっていたらどうしよう」という気持ちが、彼らの表情に表れていて、「ううん、その気持ち、よく分かる」と、自分の○○年前の学生時代を思い出しながら一緒になってドキドキしていました。

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でも実は、ドキドキしていた理由は、別にもあって…。それは、自分の2人の子どもたちも、その日に通知表をもらってくることになっていたからです。特に上の子は、今年中1になって初めての通知表。特別のんびり家の娘で、家での様子を見たら、その結果は想像できるものの、やはり多少は期待してしまいますよね。こういうときには、親の気持ちがよく分かります。まあ、我が家のことはさておき、3年1組に話題をもどして…。

 クラスの生徒の中には、評定を気にする中、「『いいとこ見つけ』いくつ入っているかな」と予想する子もいました。ああ、楽しみにしているんだなあと思いました。実際、通知ファイルを手にした生徒は、まず学習成績シート、次に個別評価シート(いいとこ見つけ)、そして学習所見シートの順に目を通していました。廊下で一人ひとりにコメントをしながら渡しましたが、教室では「おれ、5つ入っていたよ」とか「えっ、4枚もプリントがあるの!」という声が響いていました。ふだん教師の手を煩わせているやんちゃ坊主の男の子も「同じような内容で2つも書いて」と通知ファイルを手にした早々、報告に来てくれました。彼なりのお礼の言葉だったのでしょう。ちなみに彼の「いいとこ見つけ」に入力したことの要点は「英語の発音練習がしっかりできたこと」「練習プリントに一生懸命取り組んだこと」の2件。そんなことできて当然の内容ですが、当然のことができていなかった生徒にとっては一つの成長の証ですよね。受け取った本人への励みになります。また、「先生たちは見ていてくれる」という安心感にもつながると思うのです。もちろん、ふだんからしっかりできている生徒にも同じ内容のことを入力していますよ。
 同じ日帰宅して、自分の子どもたちの通知表を見ました。2人とも従来どおりの形式で見開き1枚の通知表でした。隅から隅まで子どもたちと目を通して、あれこれ言ってもすぐに見終わってしまいました。所見欄は総合的な学習と総合所見の2つ。行動評定の○があれども、「ああ、もう少し学校での様子が知りたいなあ」と思ったのは事実です。改めて通知ファイルの良さを実感しました。

 この通知ファイルの仕事を担当しての1学期間、正直仕事はきつかったです。今まで所見は期末テスト期間中に仕上げていましたが、今回はそれができませんでした。終業式ギリギリまで通知ファイルにかかりっきりでした。それは、教科担任の先生方が成績を入力するための設定準備、その入力や印刷方法のプリント作成などに追われ、また、「いいとこ見つけ」の入力を落としている生徒はいないか、コンピュータですので入力ミスはないかなどを確認していたからです。教務主任はさらに大変なものであったと思います。がそれ以上に、苦しいと思ったのは、自分が作ったものでもなく、特別コンピュータ操作に長けているわけでもないのに、みなさんに説明や指示を出していることに対するプレッシャーです。今でも、このような原稿を書いているのも身分不相応ですし、夏に行われるフォーラムに参加するのもおそれ多い話と思っているのです。まあ、でも、とにもかくにも、みなさんに支えられて無事1学期を終えることができたことに、今は感謝の気持ちでいっぱいです。

 我が子の通知表を見ましたが、従来のものも悪いことばかりではありません。表紙名と特別活動は担任の先生の手書きでした。短い言葉ですが手をかけてくださっている温かみを感じました。ないものねだりでしょうが、長年英語を教えていると日本の良さを再認識します。それと同じでコンピュータは便利で同時にたくさんの人が作業できます。本校の「いいとこ見つけ」ができるのもコンピュータのできる技だと思います。しかし手書きの良さも捨てがたいものです。コンピュータの中にも、手書きならではの良さを入れられたら、つまり少しでも気持ちのこもった表現を心がける、これが、通知ファイルと通知表を同時に見ることができた私の気持ちです。多くの先生方と一緒に作業する中で、通知ファイルの改善点も少しずつ出てきました。2学期、それらを改善しながら、温かみのある通知ファイルになるように努力していきたいと思います。
 あ、そうそう、あの子市内大会でがんばっていたなあ、「いいとこ見つけ」に書かなくちゃ。
 

(2003年7月28日)

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●峰 好美
(みね・よしみ)

小牧中学校教諭。英語を教えるかたわら、子どもたちのいいところを見つけパソコンへ入力する日々。裁縫・料理は全くできないが、なぜか家庭科部顧問でもある。春日井の不二太鼓に所属し、市民祭りはもちろん、太鼓の依頼があればどこにでも出かけていく。