【第1回】気がつけば今日も、子どもたちの「いいとこみつけ」
「えっ、どうして?!」
校務分掌の通知表担当の欄に自分の名前を見つけたとき、思わず私が口にした言葉です。後で、教務主任からお話を伺ったところ、「昨年度、『いいとこみつけ』(通知表の個別評価シート)に、たくさん入力していたからだよ」との返事。それが、この仕事に抜擢された理由でした。
私は昨年度小牧中学校に転勤してきました。職員室の全机上に置かれたノートパソコン。学級日誌を教室のパソコンからいとも簡単に入力してしまう生徒たちを見て、噂には聞いていたものの、そのネットワークのすごさに驚いたものでした。とはいえ、三年生所属で、担任もなく、のんびりした一年を過ごさせていただきました。私が与えられた分掌は給食指導。その年導入されたエクセルによる給食実施簿の点検と管理。この実施簿は、1と0(欠食)を入力すれば、自動的に食数と徴収金額が正確に計算されるしくみ。同じ食数や金額の数字を何度も書き込む手間が省けるので、担任の先生方からずいぶん重宝がられました。が、このもとを作成したのは教頭先生。私が特に何かをしたというわけではありませんでした。
テレビなどのマスコミでよく取り上げられていますが、本校の通知表はファイル形式で、約20ページあります。学習状況はもちろん、創(総合的な学習)の内容と評価、定期テスト範囲と結果、発育測定結果などで構成されています。中でも、生徒や保護者から喜ばれているのが、個別評価シート(いいとこみつけ)と言われるもので、授業や行事での活躍はもちろん、清掃時や放課などでも、生徒ががんばっている姿を目にした教員が、学級や学年を越えて、そのことを評価します。知り合いの他校の先生方からは、「牧中は大変でしょう? 通知表もたくさん作らなくてはいけないし。コンピュータが苦手だとやっていけないよね」などと、よく言われました。「確かに、コンピュータができるにこしたことはないけれど、教員同士教え合ってやっているよ。通知表はファイリングするときは、学年の先生が一斉に作業するから早い。ただ、その資料を作るために、いろいろ入力しなければいけないし、担任の先生は、総合所見や創の所見、おまけに『いいとこみつけ』が少ない生徒には、その部分も所見を考えるから大変だよね。だから所属の先生が、『いいとこみつけ』をできるだけ入力するようにしているんだよ」と答えました。担任の先生のお手伝いが少しでもできれば、また通知表を手にした生徒からの「先生、『いいとこみつけ』を書いてくれてありがとう」がうれしくて、気づいたときに入力しただけでした。
今年度、その通知表を基礎から築き上げられた先生が他校へ転勤になりました。そして私が引き継ぐことになったのです。通知表が現在の形式になるまでの試行錯誤がまとめられた分厚いファイル3冊を受け取ったとき、その責任の重さを痛感しました。今はまだ、「これからどうやっていけばよいのだろう」「いつ、何をしたらよいのだろう」と不安だけがいっぱいで何も手についていない状況です。ただ気がつけば今日も、「いいとこみつけ」を入力するために、机上のパソコンに向かっている私でした。
(2003年6月23日)