★このコラムでは、全国各地で教育の情報化に尽力されている皆さんへのインタビューを通して、情報化を推進するための肝について明らかにしていきます。情報化にかける思いや、予算獲得のポイントや学校現場での利活用率を高めるコツなど、様々な視点から語っていただきます。
【第7回】江戸川区編
〜モデル校の校長として(その3)〜
*お答えいただくのは、江戸川区立平井小学校長の宮澤不可止さん。質問者は愛知県教育委員会海部教育事務所の玉置崇さんです。
さて、全国各地で校務の情報化を推進しようという動きが出てきています。その情報化の推進を決定づけるのは、管理職のリーダーシップだという方がおられます。先生は、積極的に情報化を進められた方だとお聞きしました。
そこでお尋ねいたします。校務の情報化(通知表の電子化など)を推進するために、校長はどのようなことを大切にすべきだとお考えですか。先生がどのような考えで、実際にどう動かれたのか、具体的にお話ししていただけないでしょうか。
宮澤 通知表の電子化の推進で大切にしたことは、職員の共通理解でした。反対意見の中で多かったのは、「通知表は手書きでないと心が伝わらない」「パソコンのソフト、エクセルの使い方がよく分からない」等でした。「学校便りも学年便り等もすべてワードで作成していますが、心が伝わっていないとは思いません」「エクセルの使い方は、担当者を決めて丁寧に教えます」等と話して、電子化を進めていきました。
また、電子化によって、学期末の忙しい時期に時間の余裕が生まれ、子どもと触れあう時間もできることや教材研究・個別指導等を行うことも容易になると説明しました。
実際に取り組んだ昨年の1学期の成果としては、次のようなものがありました。
- 通知表の作成時間が大幅に削減され、通知表提出締め切り日の1週間前に提出した学級が、半数(8学級中5学級)を超えたこと。
- 例年、学年ごとに通知表を印刷屋に出していたために約9万円の支出がありましたが、電子化により4枚の紙をはさむプラスチックファイル(1冊115円)を236名分購入しただけですみ2万8千円ほどの支出であったこと。紙代を含めても3万円を超える程度で済み、経費削減ができたこと。
- 管理職にとっても活字で書かれている通知表は読みやすく点検が容易で、点検時間の短縮になったこと。また、所見等の間違いや訂正が終業式の日まで可能なこと。
これ以後、反対意見はすべてなくなりました。また、3学期には指導要録の作成も電子化により行いました。通知表の所見を若干加工することにより、要録に使用することが可能なために、作成時間を短縮することができました。
6年生にとっては、中学校におくる指導要録の抄本も同時に作成することができましたので、年度末の忙しい時期が楽になったとたいへん感謝されました。
では、もう一つお聞きします。学校としての今後の情報化の方向については、どうお考えですか。
宮澤 今年度、本校では出席簿と保健日誌の電子化を進めています。来年度は週案簿等の電子化も予定しています。特に来年度はホームページのソフトを「スクールWebアシスト」に変更することにより、ホームページを操作できる技術がなくても、だれでも情報をホームページに容易に立ち上げることができます。
つまり、今後の学校の情報化の方向としては、リアルタイムに情報を保護者に伝えることが重視されるようになってくると思います。
本校では、昨年度より携帯電話による緊急配信メールサービス(はなまる通信)を行っています。はじめは不審者情報や台風による緊急一斉下校等に使用する予定でしたが、メールサービスの加入が携帯電話ということもあり任意なために、加入率が70%を超えることができませんでした。
そこで、保護者が知りたい情報を学校がリアルタイムに伝えるという姿勢に立ち、運動会や生活科・社会科見学、夏期休業中の水泳指導の実施または中止のお知らせ等もメールで伝えるようにしました。
そのほかに、林間学校やウィンタースクールで行われた行事や子どもたちの様子を毎日現地から配信したところ、現在は加入率が95%に達しました。情報化は学校だけのためでなく、地域や家庭のためにもあると思っています。
現在、子どもたちの登下校の安全を見守っていてくださる地域ボランティアのスクールガードや学童クラブ(すくすくスクール)の方々にも加入していただいています。
玉置 宮澤先生のお話は実に具体的で説得力がありますね。意図的に教育活動をされているので、こうして数値で語ることができるのだと思います。ぜひ先生の姿勢を学びたいと思います。とても良いお話をありがとうございました。
(2010年11月22日)