愛される学校づくり研究会

★このコラムでは、全国各地で教育の情報化に尽力されている皆さんへのインタビューを通して、情報化を推進するための肝について明らかにしていきます。情報化にかける思いや、予算獲得のポイントや学校現場での利活用率を高めるコツなど、様々な視点から語っていただきます。

【第6回】江戸川区編
 〜モデル校の校長として(その2)〜

*お答えいただくのは、江戸川区立小松川第三中学校長の金子雄治さん。質問者は愛知県教育委員会海部教育事務所の玉置崇さんです。

玉置  金子校長先生。それでは前回に引き続きお聞きします。
 江戸川区教育委員会の指導主事・赤津先生から「モデル校から近隣のモデル校以外の学校へ情報を提供していただけたことで、次年度は自分たちの学校も取り組まなければならないという意識がモデル校以外の学校にも自然と芽生え、徐々に心構えや準備が整っていたからだと考えています」というお話がありました。「近隣のモデル校以外の学校への情報提供」についてとても興味があるのですが、例えば校長会などで何かしらの動きをされたのでしょうか。これも多くの自治体の参考となると思います。具体的にお教えいただければ有り難く思います。

金子  では、今回もお話しさせていただきます。

 先生方は、教科、部活動や主任会といったところでいろいろなネットワークをもっています。また、そのネットワークとは別に近隣の学校の先生方から通知表作成について、質問されることも多かったようです。その都度、本校の先生が、丁寧に対応している姿を見ることができました。

 この背景には、区の方から、校長会において、校務の電子化について説明がなされ、区の意気込みを各校の校長先生が感じ取り、各校の職員に来年度はわが校でも通知表の電子化をせざるを得ないとの認識が高まったからと思います。毎月開かれる区の中学校長会において、モデル校の状況を報告させていただき、校長先生からの「なぜ電子化なの?」といった素朴な疑問や職員の説得についてなどなどモデル校の実践から得られたことを説明させていただきました。

 22年度に入り、課題の大きなものとして、学期末に全校で通知表を作成しているため、ホストサーバーにアクセスが集中し、レスポンスが悪くなり、時間がかかりストレスを感じることです。外国籍の生徒の漢字の一部が表記できないことがあることも判りました。

 また、通知表の全校電子化に障害となったことは、意外にも実はもうすでに学校独自で通知表作成システムを構築していた学校の先生方から、「使いにくい」、「時間がかかる」といったご意見でした。また先生の中には、通知表の所見は、手書きでなければならないといった信念をお持ちの方もおられたことです。これらのご意見も尊重しながらも電子化に成功させることができたのは、各校の校長先生の説得と区の情報教育担当の教育推進課計画調整係・指導室のご尽力にほかなりません。

 校務の電子化による効率化によって、時間の有効活用ができ、児童・生徒に関われる時間のゆとりが、各先生方の心の余裕につながり、より良い教育ができることにより、多くの教育課題の一部が解消されるのではないかと考えております。

玉置  なるほど。毎月の校長会でモデル校の状況をお話しされたのが功を奏したようですね。否が応でも各学校長の通知表電子化への意識は高まりますからね。各校長がそれぞれの学校で話せば、それを聞いた先生方の意識も当然変わります。近隣の先生方からモデル校の先生方へ質問があったというのは、素晴らしいことだと思います。そのきっかけ作りをされたのが金子校長先生であることがよく分かりました。
 今後とも江戸川区の取組は注目されると思います。ますます校務の情報化を推進され、先生方がゆとりをもって子どもたちの教育にあたられ、素晴らしい学校づくりを進められることと思います。ありがとうございました。

(2010年11月8日)

我が町の情報化

●金子 雄治
(かねこ・ゆうじ)

昭和46年、技術科教諭として中学校教員生活スタート。昭和50年代後半よりCMI・CAIの研究・実践開始。技術・家庭科研究大会での発表多数。平成4年度より、教頭職、平成11年度より江戸川区立中学校長職就任。現在、校長職12年、3校目。

●玉置 崇
(たまおき・たかし)

現在、愛知県教育委員会海部教育事務所長。校長、教頭時代に校務の情報化に邁進。文部科学省発行「教育の情報化に関する手引」(平成21年3月発行)の執筆者の一人。現在、「学校教育の情報化に関する懇談会」委員。
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