★このコラムは、「小牧市教育委員だより」での副島孝先生(前小牧市教育長)の発信を楽しみにしておられた皆さんからの要望で実現しました。「これまでのように学校教育や現場への思いを語り続けてください」という願いをこめて「黙さず語らん」というタイトルにしました。
【 第25回 】この時期は何かと忙しい
子どもたちにとって、春休みは最も気楽な時期かもしれませんが、学校の先生方にとっては何かと忙しい時期です。特に、転勤された先生は大変です。
ところで、この時期いくつかのところから研修会等の講師を頼まれて、けっこう忙しい思いをしました。2月の「愛される学校づくりセミナー」は、パネリストの一員という形でしたから、個人的には負担よりも楽しみが多いものでした。3月に入ると、とたんに多くなりました。それも、余りこれまで自分自身が中心にはやってこなかったテーマで、しかもひとりで講師を務めるという形のものです。メインは4月から教壇に立つ方への事前研修でした。
小学校を対象とするものから、中学校・高等学校をひとまとめにするというものまで(実は大学対象も)ありました。準備は大変でしたが、プレゼン資料の作成の過程で、ずいぶん勉強になりました。この分野では最も信頼している野中信行先生のブログや著作には、お世話になりました。
スタートは、中学校と高等学校の講師希望者の研修会でした。新たに講師をするか、せいぜい2,3年の経験者を、主催者は想定していたようですが、実際には40代の方まで幅広い受講者になった(しかも、2日間の日程の、2日目の昼食直後という時間)と連絡を受けました。当然教科もさまざまです。これはなまじの内容では全員に満足していただけるものにはならないと、いろいろ趣向を凝らしました。
いつも思うのですが、最も有効なのは、受講者に子ども(学習者)を体験してもらうことです。その上で、「こうした授業の進め方には、こういう方法と考えがあるからですね」と説明すると、理解していただきやすいようです。そのうえで授業のビデオを見てもらうと、納得してもらいやすいようです。
小学校だけを対象とした講習は、ずっと気持ちが楽でした(簡単だというつもりはありません)。主として、卒業する学生を対象としましたが、この大学では協同学習を積極的に教えていますし、実際の授業にも取り入れています。しかし、ここは野中先生に習って、あえて現実を直視する方法をとりました。つまり、年度始めの学級づくりがこれからの1年間の鍵となるということです。
他人事ではありません。私自身も今月から大学での授業が、ほんの僅かですが始まります。先生がひとりで長々としゃべっているような授業ではなどと、学校現場では言いながら、自分自身がそんな授業をしているとしたら笑い話ではすみません。しかもどんな学生が授業を受けるのかも分からない状況で始まるのですから、準備も大変です。当分は、学生たちの反応を見ながらの試行錯誤が続きそうです。
学校の先生方が4月当初、新しく学級担任や教科担任として受け持つクラスで、自分のめざす方向を頭に目の前の子どもたちの様子を見ながら微調整していくのと同じです。それに、お互いにその時間だけのメンバーである学生同士の学びの交流がどの程度可能なのか、未知なだけにやりがいも感じています。
ところで、3月に現場の先生方や教育行政の人たち、それに教員養成系の大学の関係者から、考えさせられる話を聞きました。それは、定年退職後に再任用の形で現場に残る先生が多くて、新規採用の先生や講師をめざす若者が教職につけないという事態が例年以上に起きているということです。
退職者が若者の就業機会を奪うというような世代間の問題にならないように、むしろ退職者が非常勤のような形で若い人をサポートできる仕組みが必要だと思います。例えば、現在のように世代交代が急速な時期には、定年退職者も非常勤講師を務められる時限的な措置を考えるなどです。この時期に講師になれない未経験者が、年度途中に産休や育休などの代替講師として務めなければならないとしたら、現場は(もちろん子どもたちも)ずいぶん困るのではないでしょうか。
ところで、このコラムも早いもので2年目を迎えます。私自身も大学院を一応修了し、少し生活に変化が訪れました。その変化については、おいおいお伝えしたいと考えています。
(2011年4月4日)