愛される学校づくり研究会

★授業における「ICT活用」とは縁のなかった小学校が、1年後にはすべてのクラスに実物投影機が入り、毎日使うようになりました。1年間に起こった事実をお伝えします。1年間で学校も、子どもも、保護者も、職員も、そして地域も変わるのです。

【第12回】当たり前のことができる学校

スクール55での私の12回連載の12回目です。最終回の予定です。平成21年度の太郎生(たろう)小学校の教育活動を同時進行的にレポートさせていただきました。アクセスしていただいた方には感謝するばかりです。ありがとうございます。

 あと1週間ほどで平成21年度が終わります。そして、津市立太郎生小学校は閉校することになります。明治8年に創立した太郎生小学校は135年の歴史を閉じるのです。少子化による児童数の減少がさらに続くからです。
 太郎生小学校は私の母校でもあります。しかし、そんな個人的な感慨を消し去るほど、この1年間の太郎生小学校の教育活動は充実していました。それは私だけが思っているのではありません。職員も、「こんな学校はない」と口をそろえて言います。職員だけではありません。野中信行先生はこのように書いてくださいました。
 玉置崇先生は何度か太郎生小のことをご自分のブログで取り上げてくれました。堀田龍也先生も2度にわたり話題にしていただきました。
 紀伊半島の中央部に近いところに位置する太郎生小学校は児童数が38人。複式学級があり、カリキュラム編成も独自に行っているほどです。そんな小規模の、田舎の、指定を受けた研究校でもない学校なのに、実践を注目していただくことになりました。ありがたいことです。太郎生小学校最後の校長の責務として、太郎生小学校の「秘密」を語らせていただきます。

 太郎生小学校の良さは「ルールを守るという当たり前のことができること」だと私は思っています。「話をしっかりと聞く、あいさつをする、大きな声で発表する」ことができる子どもたちです。保護者も、「学校を信頼し、学校に任せるところと親が育てるところをはっきりと区別している」のです。職員も「子どもたちの学力を授業を通して向上させる」という明確な目的のための研修を重ねています。プロとして当たり前のことをしているだけです。
 そんな学校として当たり前のことが、「子どもたち・保護者・職員」が意識できると、教育活動は飛躍的に進みます。
 分かりやすい授業をするために、実物投影機やプロジェクタを毎日使うようになりました。フラッシュ型教材も、すべての教室で使い、楽しく反復学習を行っています。ICT活用が3カ月ほどで一気に進んだことは、このサイトに書かせていただきました。全校児童が2泊3日で離島での宿泊体験をするという夢のようなことも可能となりました。また、子どもたちの歌声は聞く人の心をゆさぶります。学力も全国平均を上回っています。

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▲卒業式の練習中の子どもたち<1〜3年生と4・5年生>

今、学校現場では「当たり前のことができない」という現実があることを十分に私は承知しているつもりです。しかし、だからといって避けることなく、「当たり前のことをする」という原点を常に意識し、指導し続けることしかないと思っています。それが学校の改革であり、信頼回復につながると思うのです。職員のその地道な努力を管理職が保護者に情報発信し、サポートすることも必要だと思います。
 今日、ICT機器が全国で一気に導入されようとしています。電子黒板を使って子どもたちの知的関心を呼び起こす授業は必要です。しかし、日々子どもたちが当たり前の行動をするための指導を欠かすことはできません。
 このサイトはICT活用を促進するためのものですが、当たり前のことを指導することが、遠回りのようでいて、実はICTに利用にもつながると私は考えています。

* * *特別号「太郎生小学校閉校の記録」を後日更新予定です * * *

(2010年3月15日)

中林校長

●中林則孝
(なかばやし・のりたか)

1951年生まれ。津市立太郎生(たろう)小学校校長。一輪車が小学校に普及し始めた頃、練習を継続すれば大半の児童が一輪車に乗れるようになることを知り、「練習量が、ある時、質に転化する」ことを実感する。その後、「デジタルとアナログの両面で子どもを鍛える」実践を進める。校長となった今も、担任時代のスタイルを踏襲し、補欠の授業に入れば子どもに作文を書かせ、それをほぼ毎日発行の「学校便り」に載せている。講演を聞きながらタイピングできるという特技を持つ。
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