★授業における「ICT活用」とは縁のなかった小学校が、1年後にはすべてのクラスに実物投影機が入り、毎日使うようになりました。1年間に起こった事実をお伝えします。1年間で学校も、子どもも、保護者も、職員も、そして地域も変わるのです。
【第6回】ICTが苦手な教員が多い学校ほど、本来のICT活用が進む
太郎生小学校におけるICT活用について話題にします。前回、話題にしたように「ICT活用をサブテーマにした公開研究会」を(平成21年)11月に行いました。すべてのクラスではプロジェクタを使ったパワーアップタイム(モジュール学習)を公開し、全体会ではICTを使った模擬授業を全職員が行いました。
このことから太郎生小はICT活用をメインにした学校と思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。ほぼ1年前まではプロジェクタを使った授業は皆無でしたし、今年度にしてもICT活用を義務づけられた指定を受けたわけではありません。そもそもICTを得意とする職員はほとんどいません。
しかし、結果としてはこの半年ほどの間に一気にプロジェクタを使った授業がごく普通となりました。その太郎生小なりの「ノウハウ」を紹介させていただきます。
▲校内研修の様子(雑誌の取材を受けている) |
▲3人のクラスでも、プロジェクタの授業は有効 |
ICT活用は目的ではなく、何らかの目的を達成するための「手段」でしかありません。そのことは総論としては分かっていても、ついついICT活用そのものが目的化しがちです。経費がかかることやスキルが必要となるためです。
しかし、太郎生小では「基礎学力の向上」というテーマからずれることは一度もありませんでした。その理由は、ICTが得意な教員がほとんどいなかったからです。ICTやネットワークに詳しい教員が多いと、実践がマニアックになりやすいし、「手段か目的か」があいまいになりやすいと思います。
ところが、ICTが好きでもないし、得意でもない教員だと、常に「なぜわざわざICTを使わないといけないのか」と自問しています。そして、そのことに納得できる時のみICTを使うのです。実際、プロジェクタを使って算数の授業をすると、リズムとテンポのある反復学習が簡単にできるのです。また、漢字の読みも、マグネットスクリーンに映る熟語を、子どもたちはまるでゲームをするかのように、大きな声で読み、覚えていくのです。ICTが苦手な教員がとびつくのも当然といえます。こんな事実が簡単に作れるのですから。
そして、結果としてICTを使う前よりも、ICTを導入した今の方が教科書をしっかりと使うようになったというのです(このことは別の項で、後日、詳しく書きます)。
この事実から得ることが出来る大きなヒントは、「ICTが苦手な教員が多い学校ほど、本来のICT活用が進む」ということです。このサイトをご覧いただいた管理職の先生方、「うちの学校はICT苦手な教員が多いからなあ……」とぼやく前に、それこそがチャンスだと受け止めていただきたいですね。
しかし、ICT苦手職員の集まりが、なにもしないでおいてICT活用を始めるわけはありません。そのための「仕掛け」が必要です。次の項目に書きます。
(2)「ICT活用のためには基礎学力研修と一体化させること」
校内研修とICT活用の一体化ではありません。「基礎学力向上とICT活用の一体化」が必要です。「電子黒板を使った授業」というテーマにすると、失敗します。失敗とはICT活用そのものが目的になり、子どもたちの学力アップにつながりにくいということです。
ただ、問題があります。「基礎学力の向上」という寺子屋以来の学校教育のオーソドックスな課題が、校内研修のテーマにしにくい雰囲気の学校があるかもしれないということです。学校独自の課題があることが多いからです。その場合は、私は二本立てでいいと思います。基礎学力の定着は新しい学習指導要領に強調されています。これは学校の存在に関わることです。さらに社会や保護者の関心も強い分野です。
この項目、続きます。次回は(3)「ICTは本当に基礎学力の向上に貢献するのか」ということです。
(2009年12月21日)