愛される学校づくり研究会

★授業における「ICT活用」とは縁のなかった小学校が、1年後にはすべてのクラスに実物投影機が入り、毎日使うようになりました。1年間に起こった事実をお伝えします。1年間で学校も、子どもも、保護者も、職員も、そして地域も変わるのです。

【第4回】1台の実物投影機から始まったICT活用

ICTは今日、決して珍しいわけではない。パソコンの価格も下がってきた。目にする文書も、ほとんどワープロで書かれている。
 今年度の国の予算でICT機器の普及が相当進んだ。学習指導要領でも、教育の情報が強調されている。
 しかし、学校現場ではICTを使った授業はまだまだ一般的とはいえない。プロジェクタや大型デジタルテレビを使った授業は一部で見られるだけである。
 太郎生小学校も、まさに1年前まではそんな状況だった。その太郎生小学校が1年で激変した。この(平成21年)11月に「ICTを活用した基礎学力向上」というテーマの公開研究会を開くまでになった。特別な指定などの「外圧」があったわけではない。公開研も、自主的に行った。

 昨年(平成20年)11月6日の太郎生小学校のホームページには次のコンテンツがある。

昨日(11月4日)の放課後、実物投影機を梱包から解き、テストしてみました。場所は校長室です。校長室には「専用のプロジェクタ」があります。映すと、かなり鮮明です。拡大率も大きい。
 で、職員室にいる若い先生を呼び、算数の模擬授業をしてもらいました。教科書の3ケタの引き算の図を拡大表示します。それをつかっての授業を考えました。「マーカーでスクリーンに書くとわかりやすいね」「とにかく位をつねに意識させないといけないから、数字と図を対応させないと」などと話しながら、実物投影機の有効性を確認しました。
 「これは使えるなあ」と言って放課後のミニ研修会が終わりました。時間にして15分ぐらいでしょうか。
 今日(11月5日)の3限目の始まる前に、4年の理科を担当している先生が「実物投影機、使えますか」と言ってきました。

翌日のホームページにはこんなコンテンツが見られました。

 「秋の自然」の学習をしています。かまきりを捕まえてきて虫かごに入れました。しかし、なんと共食い発生。
 「先生、かまきり一匹食べられて腹だけになってる。」「それで、その腹の中に卵があるみたいやねん。」「で、食べたかまきりは腹がまた大きくなってる!」・・というわけで早速、実物投影機で観察しました。
 何かを見せる時、数人の子どもですから「先生の机の周りに集まりなさい」でいいようなものですが、この実物投影機にはいろいろな利点があります。それは、見せたいものを子どもが自席で見ることができること、そして画像を見ながら落ち着いて話し合い活動ができることです。画像の大きさを調節してそれを指差したりしながら、子どもが自分の考えを説明することもできます。
 実物投影機、なかなかいいです。

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 1年前のこと。太郎生小学校がICTを授業や研修に使い始めたのはこれがスタートとなった。
 実物投影機を前にして、職員は必ずしも喜んだわけではない。カメラの向きの調整に手間取ったり、プロジェクタが必要なことにおじけづいたりしていた。
 しかし、私は実物投影機は必ず職員が使い出すと確信した。それはICT機器でありながら、アナログ的な使いやすさがあったからである。なにしろパソコンがいらない。また拡大率も大きく、細かい文字やグラフが鮮明に写る。
 太郎生小学校にとってのICT活用の第一歩は、「1台の実物投影機から」といえる。

 次回は今年度の研修にどのようにICTを位置づけたのかについて、話題にしたい。

(2009年11月16日)

中林校長

●中林則孝
(なかばやし・のりたか)

1951年生まれ。津市立太郎生(たろう)小学校校長。一輪車が小学校に普及し始めた頃、練習を継続すれば大半の児童が一輪車に乗れるようになることを知り、「練習量が、ある時、質に転化する」ことを実感する。その後、「デジタルとアナログの両面で子どもを鍛える」実践を進める。校長となった今も、担任時代のスタイルを踏襲し、補欠の授業に入れば子どもに作文を書かせ、それをほぼ毎日発行の「学校便り」に載せている。講演を聞きながらタイピングできるという特技を持つ。
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