愛される学校づくり研究会

★授業における「ICT活用」とは縁のなかった小学校が、1年後にはすべてのクラスに実物投影機が入り、毎日使うようになりました。1年間に起こった事実をお伝えします。1年間で学校も、子どもも、保護者も、職員も、そして地域も変わるのです。

【第3回】学校経営の柱としての「学校便り」

学級担任は日々の授業や子どもとの関わりの中で、学級経営を具現化することができます。では、管理職は学校経営をどのようにして具現化すればいいのでしょうか。管理職任用試験の時は「○○においてリーダーシップを発揮」などということを言ったり、書いたりしているはずです。
 4月当初に作る1枚の「学校経営方針」はまさに方針だけであり、具体化する手立てが必要です。その有力な手立ての一つが「学校便り」であり、もう一つは学校のホームページだと私は考えています。

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学校便りは保護者にあてたものではありますが、同時に職員も読みますから、共通認識を持つ上でもたいへん意味があると思っています。
 管理職はいくら地域を大切にするとはいっても、日常的に保護者と対話することはできません。話をする機会があっても、それは個別のケースが多くなります。学校が目指している教育について語る場はPTA総会など、限られています。
 ところが、「学校便り」は児童を通して家庭に直接配布しますから、保護者の手に確実に渡ります。学校と保護者が直接つながるホットラインといえます。こんな有効な手段を活用しない手はありません。また日々忙しい学級担任を煩わすことはありませんから、気兼ねなく発行できます。
 学級担任の中には学級便りを効果的に活用して、保護者の信頼を得ている人がたくさんいます。同じように、管理職としては学校便りを活用するべきだと考えています。
 では、その学校便りでは何のことを話題にしたらいいのでしょうか。私は「行事予定」は載せません。カットやイラストも皆無です。「訓話的なありがたい話」も書きません。ただひたすら「学校の今」を書き続けています。
 以下、私の考えている学校便りの特徴を列挙してみます。

(1)学校でのエピソードや授業のことを書く
 ニュースを探すつもりで各教室を回っていると話題にしたいようなことがあるものです。学校便りの発行回数が多ければ、ちょっとしたことでも気楽に載せることが出来ます(校内研修のことは何度か話題にしたことがあります。校内研修で議論になったことを通して、学校が大切にしていることをストレートに保護者に伝えることが出来ると思っています)。いわば、何でもありの学校便りです。1カ月に1枚や2枚だと、「載せることを厳選」しなければならないのでかえって何を載せるか考えてしまうはずです。

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(2)自画自賛的な記事が多いが、学校の耳の痛いことも載せる
 子どものことをほめることが多いので、手前味噌の学校便りとなりがちです。それでもいいと思っています。しかし、時には保護者からの学校への質問や疑問についても載せます。耳の痛い話であっても、それを載せることで「学校便りは学校の今をオープンにしようと努力している」と保護者が受け止めるはずです(※PDFを添付しました)。

(3)学校ホームページと連携させる
 学校便りで話題にしたことを、ホームページにカラー写真を多く載せてさらに詳しい情報を伝えることも多いです。逆に、先にホームページに書いた内容を、「学校便り」に転載することもあります。全く同じ内容であってもかまいません。アナログ情報とデジタル情報は競合しません。

(4)保護者の声を学校便りに載せる
 行事の後など、保護者の声を学校便りに載せることが頻繁にあります(了解を取った上で)。これも好評です。他の保護者がどんな感想を持ったのか、学校便りで知ることができるからです。保護者からの感想の半分はメールで届きます。これだと、入力の手間がかからないので楽です。

(5)子どもの作文を載せる
 保護者は自分の子どもが在籍する学年の子の作文を読む機会はあっても、他の学年の作文に目を通すことはありません。学校便りに出ている作文はとても新鮮なようで、保護者からは好評です。さらに子どもにとっても、学級便りに出るのと学校便りで全校の保護者に読んでもらうのではうれしさの度合いも違うはずです。

(6)レイアウトは「朝刊太郎」で
 私は担任として学級通信を出していたときからレイアウトには凝りませんでした。保護者はレイアウトを見るのではなく、中身を読むものだと決めつけていたのです。しかし、文字ばかりでは読む気にはなりません。読みやすいに越したことはないのです。そこで、1年ほど前から「朝刊太郎」という新聞に特化したフリーソフトを使っています。使い方は数回使うと慣れるでしょう。ヘルプも感動的なほど温かい。レイアウトに凝らない私が、使い続けているDTPソフトです。すこしのバグはあるし、写真を印刷するときれいではありません。それでも使い続けています。ネットで「朝刊太郎」と検索すると見つかります。

 この連載のタイトルは「ICT活用最前線」です。ICTが出てこないと思われている方にはもうしわけありません。これまでの3回は学校からの情報発信で、保護者に学校を応援してもらうということでした。次回からはいよいよ「太郎生小学校ICT事始め」です。

(2009年11月2日)

中林校長

●中林則孝
(なかばやし・のりたか)

1951年生まれ。津市立太郎生(たろう)小学校校長。一輪車が小学校に普及し始めた頃、練習を継続すれば大半の児童が一輪車に乗れるようになることを知り、「練習量が、ある時、質に転化する」ことを実感する。その後、「デジタルとアナログの両面で子どもを鍛える」実践を進める。校長となった今も、担任時代のスタイルを踏襲し、補欠の授業に入れば子どもに作文を書かせ、それをほぼ毎日発行の「学校便り」に載せている。講演を聞きながらタイピングできるという特技を持つ。
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