愛される学校づくり研究会

★授業における「ICT活用」とは縁のなかった小学校が、1年後にはすべてのクラスに実物投影機が入り、毎日使うようになりました。1年間に起こった事実をお伝えします。1年間で学校も、子どもも、保護者も、職員も、そして地域も変わるのです。

【第1回】保護者に安心を届けた「2泊3日の宿泊体験学習」

リーフレット1リーフレット2

A3の両面を使ったカラーリーフレットの編集が終わりました。タイトルは「夢のような2泊3日の答志島」です。
 今年の7月上旬に太郎生小学校の1年から6年までの全校児童が、答志島で2泊3日の宿泊体験をしたときのカラー印刷の記録です。公立の小学校が、1年生を含む全校児童を連れて2泊もの宿泊体験をすることは決して簡単なことではありません。しかし、保護者は太郎生小学校の職員を信頼して、3日間子どもを預けてくれました。また、職員も自分の家庭を留守にしてまで、子どもたちのお母さん代わり・お父さん代わりを努めました。
 どうしてこのような「奇跡」と思えるような学校行事が可能となったのでしょうか。その秘密の一つは学校からの情報発信にある と私は考えています。

 この答志島での3日間、私はほぼリアルタイムに近い形で、学校のホームページを更新し、また「学校連絡メール」を送り続けました。メールは16回、ホームページの写真はなんと150枚も掲載しました。
 メールの実例を2つ紹介します。

メールアイコン

全員元気です。今、船の上。ホームページで速報中。雨は降っていません。(8日 10:34)

メールアイコン

浮島、海水浴、魚のつかみどりが無事終わり、旅館に戻りました。みんな元気ですが、疲れました。日焼けもしました。6時から夕食です 。(9日 16:22)

このような臨場感のあるメールを送り続けました。保護者へ安心を届けるという意味がありました。保護者は私が想像していた以上にメールやホームページで安心されたようです。そのためか、ホームページへのアクセス数は通常の5倍にもなり、まさに打てば響く状態でした。

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宿泊体験という、極めて人間くさい行事を、デジタルで発信することで保護者が安心するという、まさに「アナログとデジタルの融合」を積極的に活用したことが可能にした行事といえます。

 一人残らずすべての保護者が学校や職員を信頼して3日間子どもを預けてくれるという決断をするに至ったことには、これまでの1年あまりの学校の取り組みがあったからだと思っています。
 その取り組みとは毎日、家庭訪問をするわけでも、懇親会を何度も行うということでもありません。毎日10分間を使ってホームページを更新しつづけたことや、毎日30分から60分を費やして学校便り「たろうっこ」を発行したことが、学校の今を保護者に知っていただくことになり、学校を応援してくれていたからにほかならないと私は考えています。
 それほど、学校からの情報発信は大事だと思うのです。これまで学校は情報を保護者にあまり伝えてこなかったと反省しています。せいぜい「学級便り」で学級のことや担任の思いを伝える程度でした。校長の顔が見える発信は日常的には行われなかったように思うのです。
 今後、何回かに渡って、太郎生小学校の「すべて」をおしげなく書かせていただくつもりです。見ていただけると幸いです。

 主な内容は次の通りです。

  1. 保護者を味方にするための「デジタルとアナログをフルに活かした情報発信」とは?
  2. PTA総会では職員の模擬授業を通して、学校のPRを
  3. 公立の学校が全校児童の2泊3日の宿泊体験を成功させるノウハウ
  4. 閉校まぢかの学校が、研究発表会を行う秘密
  5. 「泣いたら退場、怒っても退場」というルールで球技を行うと・・・
  6. 太郎生小学校のキーワードは、「子どもを鍛える」と「子どもの集中力」
  7. 百人一首の全校大会で、学年のハンディなしで対戦する1年生
  8. 「三重県で一番素晴らしい学校にしたい」と保護者に公言
  9. 全校児童が38人の学校に、プロジェクタが5台も!
  10. 形式を極力排除した、校内研修会。研究授業の指導案はA4に1枚限定。しかし、模擬授業を何度も行う研修会

これらはすべて今後の予定ではありません。すでに1年間で達成したことです。学校は1年で十分に変わるのです。

(2009年10月5日)

中林校長

●中林則孝
(なかばやし・のりたか)

1951年生まれ。津市立太郎生(たろう)小学校校長。一輪車が小学校に普及し始めた頃、練習を継続すれば大半の児童が一輪車に乗れるようになることを知り、「練習量が、ある時、質に転化する」ことを実感する。その後、「デジタルとアナログの両面で子どもを鍛える」実践を進める。校長となった今も、担任時代のスタイルを踏襲し、補欠の授業に入れば子どもに作文を書かせ、それをほぼ毎日発行の「学校便り」に載せている。講演を聞きながらタイピングできるという特技を持つ。
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