★このコラムは、日本初(?)の教育コンサルタントとして10年前からご活躍中の大西貞憲さんから、授業を見るための眼力が高まるノウハウをインタビュー形式で学ぶものです。
【第24回】授業力を高める学校経営見聞録1
大西貞憲(授業を見るプロ) 玉置崇(インタビュー)
学校全体の授業力を高めるためには、子どもたちの学校生活の中心は授業であることをどの教師も明確に意識することが大切になります。生活指導面で苦しんでいる学校でも、学校改革の取り組みが成功するかどうかは、子どもにとって魅力のある授業を実現できることが最後の鍵になります。
実際に学校全体の授業力が高まっていると感じる学校の管理職は、学校が抱えている問題はいろいろあっても、例外なく基本は授業であることを明確に宣言しています。その上で、次のような動きをされています。
- 目指す授業像を設定するために、普段の授業をできるだけたくさん見るような工夫をし、現在の学校の授業と子どもの姿をしっかりと把握する。
- 子どもたちのよいところ、先生方の授業のよいところをきちんと整理し、ホームページなどを使って、学校の内外に発信し共有化を図る。
- 課題を整理して、どこから手をつけるべきかを整理し、ゴールとなる子どもたちや授業の姿をできるだけ具体的、明確にして、発信する。
- 課題解決のための具体的な手立ては分かっていても、管理職自ら発信しない。教師たちが自身の問題と考え、互いに学びあう仕掛けを行う。
さらに具体的に示しましょう。子どもたちが落ち着いて、指示されたことをきちんとこなす規律ある授業が成り立っている学校の校長の話です。子どもたちの課題として、受け身で、かかわり合いながら学ぶ力が足りないことを感じられていました。荒れた学校と違って教師に危機感はありません。「子どもたちにはこういう課題があります」と伝えても、今のままでも十分でしょうと、なかなか動きだしそうにありません。 |
そこで、子どもたちの今の長所を明確にした上で、「この子たちなら、先生方ならここまでいける」と「自分の考えを積極的に発表する」「自分で課題に取り組む」・・・と目指す姿を具体的に語られました。目標達成の具体的な方法は主任やベテランの先生に発信してもらうようにして、自分はよい取り組みをほめることに終始徹しておられました。そして、授業を互いに見合い、ベテランも若手も自由に話ができるような場をたくさん設けました。先生方が自ら気づき、共有し、学び合わなければ形だけのものになってしまうからです。その結果、確実に先生方の授業に対する意識が変わり、それに伴い子どもたちにもよい変化が表れてきました。
目指す子どもの姿を、到達へのステップをきちんと意識した上で具体的に発信する。その一方で、具体的な授業への取り組みについては管理職が細かく指示するのではなく、教師同士のかかわり合いの中で互いに気づきあい、学び合うような場をつくることに力をそそぐ。学校全体の授業力アップに成功されている管理職は、目標設定に強いリーダーシップを発揮すると同時に、実行面では場づくりとポジティブな評価をすることに徹しています。これは、学級経営と非常に似ています。教師として身に付けた学級経営のノウハウを学校経営に生かしていると言っていいでしょう。
(2010年6月28日)