★このコラムは、日本初(?)の教育コンサルタントとして10年前からご活躍中の大西貞憲さんから、授業を見るための眼力が高まるノウハウをインタビュー形式で学ぶものです。
【第20回】大西流・道徳の授業の見方
大西貞憲(授業を見るプロ) 玉置崇(インタビュー)
道徳の授業で大切になるのは、まずは、子どもが自分に引き付けて問題を考えることだと思います。冷めた目で他人事のように、こういう行動をすべきだと話し合っても実際の場面で正しい判断をできるようにはなりません。道徳の授業を見る時は、子どもが「自分の問題」としてとらえることができているか、そのためにどのような工夫がされているかに注目します。
例えば、題材の提示では、できるだけ早く主人公の気持ちを理解させ、自分ならどうすると考えさせる時間を多く取れるようにすることが大切です。教師が題材の文章を読みながら、「主人公は、・・・しようか、それとも・・・しようかとすごく悩んだんね」といった説明をつけ加えたりすることも道徳では有効になります。また発問も「主人公はどうすべきだった」と客観的な正解を求めるのではなく、「あなたならどうする」と自分の判断を求めることが大切になります。
もう一つ大切になってくるのが一人ひとりの考えがどれだけ深まったかです。そのためには、子ども同士がかかわり合い、いろいろな意見に出会い、考えを揺さぶられることが必要になります。ここでキーワードとなるのが「想像力」です。互いに「どのような気持ちで取った行動なのだろうか」「この行動の結果何が起こるのだろうか」と想像させるのです。こうすることで、自然に相手の気持ちを思いやることができるようになります。また、「・・・はルールです」「こういうことはしてはいけません」と教え込まなくても、その必要性や理由を気づかせることもできます。
道徳的な実践力が身についたかどうかは、授業中にすぐにわかることではありません。しかし、子どもたちが与えられた題材を自分の問題として、いろいろな立場や視点から想像力を働かせて考えている姿が見られれば、道徳的な実践力がついてきていると判断してよいと思います。
(2010年4月26日)