愛される学校づくり研究会

★このコラムは、日本初(?)の教育コンサルタントとして10年前からご活躍中の大西貞憲さんから、授業を見るための眼力が高まるノウハウをインタビュー形式で学ぶものです。

【第15回】グループ活動の見極め方

onishi_small.gif大西貞憲(授業を見るプロ) tamaoki_small.gif玉置崇(インタビュー)
 

tamaoki_small.gif従来から多様な学びの形態の一つとして、グループ活動は認知され、様々な授業で取り入れられています。また、最近は全国各地に「4人組での学び合いが基本となっている学びの共同体づくり」を目指す学校が生まれてきていますから、グループ活動を当たり前のように行っている学校も増えてきていると思います。もっとも、「学びの共同体」提唱者の佐藤学さんからは、あれはグループ活動ではないと指摘を受けるかも知れません。いずれにしても、大西さんもグループによる活動を取り入れた授業をご覧になられる機会が増えてきているのではないでしょうか。
 私もかつてグループ活動を取り入れたことはありますが、グループ内での学びを成立させるのは大変で、長続きはしませんでした。グループ活動の考え方そのものに誤りがあったようにも思います。
 そこで、大西さんにお聞きします。大西さんがグループ活動をご覧になるときには、どこに注目していらっしゃるのでしょうか。大西さんの「グループ活動の在り方」をお聞きしたいと思い、質問させていただきました。
 


onishi_small.gif子ども同士のかかわりあいを大切にする、コミュニケーション活動を重視するということで、グループ活動を授業に取り入れる学校は確実に増えてきています。しかし、ただ単純にグループにすれば、子どもたちがかかわりだし、学び合うようになるわけではありません。そこには教師側からの何らかの働きかけが必要になります。そこで私は、子どものグループ活動での様子と教師の働きかけの関係に注目して見るようにしています。

例えば、子ども同士のかかわり合いがうまくいっているかどうかは、子どもたちの聞く姿勢に現れます。「話し」合えているかではなく、「聞き」合えているかどうかです。一見活発に見えるグループの話し合いでも、自分の意見を言うことに一生懸命で、友だちの発言をきちんと聞いていないことがよくあります。これではかかわり合えているとはいえません。逆に活発には見えないけれど、うなずいたり、相槌を入れたりしながらじっくりと聞き、友だちの発言の内容を理解しようとして、しっかりかかわれていることもあります。

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こうした子ども同士のかかわり合う姿勢は、日頃の教師の指示や課題が「友だちの話を聴く必然性」や「かかわり合う必然性」を生み出しているかどうかで違ってくると思うのです。「グループで意見を出し合いましょう」というような指示ではどうしても自分の意見を発表することに子どもの意識が向いてしまいます。「友だちの意見を聞いて、なるほどと思ったら自分の意見につけ足して」というように、聞くことに必然性を持たせたり、集団追究の場面で「なるほどと思った意見を発表して」と、子どもたちの考えをつなぐような問いかけをしたりすることが大切になります。こういった教師の働きかけのもとでグループ活動を続けていくと、かかわり合う姿勢が育っていきます。
 グループ活動については、まだまだ注目すべきことがたくさんありますが、グループ活動という形ではなく、グループ活動を通じてどのような子どもを育てたいのか、そのためには教師がどうかかわればよいかを明確にして授業をしてほしいと思います。
 

tamaoki_small.gif授業中、展開に困ったらグループ形態にする教師がいますね。見た目に子どもが活動をしているようにみえますからね。確かな目を持った方なら、その活動が生産的なものかどうかをすぐに見破ります。もっともその前に子どもが自己表現を始めるでしょう。子どもは正直です。すぐによそ事や雑談をしますから。
 グループ活動についてはまだまだ注目すべきことがあるとのことですが、今回は、グループ活動を開始前の教師の働きかけについて示していただきましたが、活動中や活動後の教師の働きかけも大切だと思います。これについては、第16回でお聞きすることにしたいと思います。
 

(2010年2月8日)

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●大西 貞憲
(おおにし・さだのり)

愛知県で公立中学・高校教諭を経て、民間企業で学校向けソフト開発に携わる。2000年教育コンサルタントとして独立。現場に出掛けての学校経営や授業へのアドバイスには「明日からの元気が出る」との定評があり、愛知県を中心として、全国の小中学校や自治体から応援を求められている。また、NPO法人「元気な学校を支援し創る会」理事として「教師力アップセミナー」「フォーラムin東京」を通して実践に役立つ情報の共有化・見える化に注力している。

●玉置 崇
(たまおき・たかし)

1979年、教員生活スタート。小学校教諭3年、中学校教諭16年、教頭6年、校長3年、2007年度より愛知県教育委員会義務教育課へ。ICTを活用した授業や学校経営で実績があり、文部科学省発行「教育の情報化に関する手引」作成委員の一人。大学時代には落語研究会に所属。今でも高座に上がりご機嫌をうかがっている。「やってみなきゃ分から ない」をモットーに、「思いついたら、すぐ動き出す」ところもあって、失敗は数知れず。そのくせ、ちょっとしたミスで、いつまでもくよくよ悩むタイプ。眠れぬ夜も多い。
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