愛される学校づくり研究会

★このコラムは、日本初(?)の教育コンサルタントとして10年前からご活躍中の大西貞憲さんから、授業を見るための眼力が高まるノウハウをインタビュー形式で学ぶものです。

【第9回】教師の動きを見るべきとき

onishi_small.gif大西貞憲(授業を見るプロ) tamaoki_small.gif玉置崇(インタビュー)
 

tamaoki_small.gif一般的には「授業を見るときは、教師より子どもを見るべきだ」と言われます。野口芳宏先生の言葉を借りれば、子どもたちの向上的変容を意図して授業をするわけですから、子どもを見るべきだという主張は、理解できます。しかし、そうとはいえ、子どもばかりを見ていては、授業全体をしっかりとらえることはできないと思うのです。教師の動きを見るべきときもあると思うのです。
 そこで、こういうときは、教師の一挙手一投足を見るべきときだと、ずばり教えていただけませんか。
 


onishi_small.gif授業を見るときに、子どもの活動や変化を見ることが大切なのはもちろんですが、それに対応して教師がどのように動くかを見ることも同様に大切だと思います。実際に授業が大きく動くのは、子どもの動きに対して教師が何らかの反応をしたり、問いかけたりしたときに多いからです。子どもたちに気になる動きや反応があったときには、次に教師がどう行動するか、どのような手立てを講じるかを特に真剣に見ます。そして、その結果、子どもの様子がどう変化するか、眼を皿のようにして見ます。教師の動きと子どもの反応との関係を確認することにより、その後の授業の流れが理解できたり、子どもへの対応のポイントがわかったり、多くのことが学べます。
 例えば、グループ活動の場面で活動できていない子どもを見つけたときなどは、教師の動きを見るべきときだと思います。この場合、まず、教師が子どもたちの様子に気づいているかどうかを視線などから判断します。気づいているようであれば、教師がその子どもたちに何か言葉をかけるのか、全体の活動を一旦止めるのか、しばらく様子を見るのか等、次にどのような行動をとるのかをしっかり見ます。それと同時に子どもの様子がどのように変化するかを見ることで、教師の意図とその意図がうまく達成できたかを知ることができます。また、もし気づいていないようなら、そのときの教師の行動からなぜ気づかなかったのかを考え、そしてどんなタイミングで気づくのかをしばらく見続けます。こうすることで、子どもの状況を教師が把握するために気をつけるべきことが見えてきます。

子どもが首を傾けたようなとき、何かをつぶやいたとき、一人だけ手の挙がらない子がいたとき、数人しか手の挙がらないとき、発問に誰も反応しなかったとき、手遊びが増えてきたときなど、子どもたちを見ていて、「おやっ」と思ったときが教師の一挙手一投足を見るべきときだと思います。
 

onishi09-1.gif
tamaoki_small.gif大西さんが言われたことと同様なことを「学び合う学び」に取り組んでいる小牧市内の研究授業で教えてもらったことがあります。
 4人1組で学び合いをしていたときの教師の立ち位置について助言者が指摘しました。
「教師は話し合いの状況をつかみたいために、それぞれのグループの間に入り込んでいく行為をよく見るが、それは間違い。グループの話し合いが始まったら、教師は全グループの様子が概観できる位置に立ち、話し合いが進んでいないグループ、教師の指導が必要だと思われるグループを見つけることが大切だ。グループを順に回って話し合いの内容をつかむことは必要ない」
 この指摘は、自分が仕掛けた教育活動に対して、まずは子どもの反応をしっかり見なさい。その上で動くことを強調しています。
 指導案には主に教師の働きかけが中心に書いてありますので、ともすると、子どもの様子に注目することなく、教師はこの指導案のように動いているかどうかに注目してしまう教師がいます。それでは授業は見えてこないということですね。授業を見るときには、その指導者になったつもりで、 
  1. 子どもたちを見る。
  2. その子どもたちの様子を見ながら自分はどう動くか考える。
  3. 実際の指導者はどう動いたかを観察する。

このように授業観察すると、大西さんのように深く授業を見ることができますね。
 

(2009年11月9日)

person6.gif

●大西 貞憲
(おおにし・さだのり)

愛知県で公立中学・高校教諭を経て、民間企業で学校向けソフト開発に携わる。2000年教育コンサルタントとして独立。現場に出掛けての学校経営や授業へのアドバイスには「明日からの元気が出る」との定評があり、愛知県を中心として、全国の小中学校や自治体から応援を求められている。また、NPO法人「元気な学校を支援し創る会」理事として「教師力アップセミナー」「フォーラムin東京」を通して実践に役立つ情報の共有化・見える化に注力している。

●玉置 崇
(たまおき・たかし)

1979年、教員生活スタート。小学校教諭3年、中学校教諭16年、教頭6年、校長3年、2007年度より愛知県教育委員会義務教育課へ。ICTを活用した授業や学校経営で実績があり、文部科学省発行「教育の情報化に関する手引」作成委員の一人。大学時代には落語研究会に所属。今でも高座に上がりご機嫌をうかがっている。「やってみなきゃ分から ない」をモットーに、「思いついたら、すぐ動き出す」ところもあって、失敗は数知れず。そのくせ、ちょっとしたミスで、いつまでもくよくよ悩むタイプ。眠れぬ夜も多い。
>>>個人ホームページはこちら