愛される学校づくり研究会

★このコラムは、日本初(?)の教育コンサルタントとして10年前からご活躍中の大西貞憲さんから、授業を見るための眼力が高まるノウハウをインタビュー形式で学ぶものです。

【第4回】大西流・小学校外国語活動の見方

onishi_small.gif大西貞憲(授業を見るプロ) tamaoki_small.gif玉置崇(インタビュー)
 

tamaoki_small.gif新学習指導要領では小学5・6年で外国語活動が必修となりました。移行期間の本年度から年間35時間の活動を実施する学校が多くあります。大西さんに外国語活動を見てもらい、助言を求める学校も多いのではないかと思います。  そこで、今回は、小学校外国語活動の正しい見方、やはり大西流の見方を期待しているのですが、活動(授業)を見るポイントを教えていただけませんか。
 外国語活動は学級担任が行うことが基本となっていることから、5・6年生の担任希望者が随分減ったという声も聞きます。それ以上に、校内の現職教育で最後に意見を求められる(これはあまりにも形式的だと思いますが)校長や教頭にとっては、自分の経験を話すこともできず、適確なコメントができないという悩みをお持ちの方もあるのではないでしょうか。
 


onishi_small.gif私は子どもたちが英語を話している姿ではなく、聞いている姿を見ることを大切にしています。小学校の外国語活動はコミュニケーションがポイントだからです。
 授業では、コミュニケーションの基本は会話ととらえて、"Good Morning. How are you?" "I'm fine, thank you.And you?"といった文章を、相手を変えてひたすら繰り返し練習させるシーンが見られることがあります。このような練習は、あらかじめ話す言葉が決まっているので、子どもたちは自分が話すパートのことばかりを考えています。自分が発話することにエネルギーを集中できるので、必要以上に大きな声で話しがちです。子どもたちが元気に会話している活発な活動に見えますが、会話をすることより、自分が英語を発話することが目的になっているのです。決して子どもたちはコミュニケーションをとっているわけではありません。決まりきった言葉をオウム返しに発話練習することと、会話とは違います。一方的にしゃべっているだけで、相手の言葉は聞いていないのです。

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コミュニケーションの基本は、伝えたいことを相手に理解してもらう、逆に相手のことを理解しようとすることです。ですから、子どもたちの活動自体に相手の言葉を聞こうとさせる仕組みが必要です。相手の言葉によって次の自分の発する言葉や行動が決まってくるような活動が大切です。
 例えば、"What do you like?" "I like baseball." といった会話でも、これで終わるのでなく、友だちの言ったもの(例えば野球のカード)を取ってこさせるとか、"What dose Yamada_san like?" といった質問を他の子どもにして、"He likes baseball."と答えさせるというような、子どもたちのレベルに合わせた工夫をすることが大切なのです。このような工夫がある授業では、子どもたちは真剣に他者の言葉を聞いています。子どもたちの聞く姿を見ることで、コミュニケーションが成立しているかがわかります。
 もっとも聞くということが大切なのは、何も外国語活動の授業に限ったことではありません。授業という視点で見れば、外国語活動だからといって決して特別に考えることはないと思います。
 

tamaoki_small.gifなるほど、小学校外国語活動では、子どもたちが発話している姿より、聞いている姿を重要視せよということですね。そして、聞いたあとでどのようなことを発話しているか、これがポイントだというわけですね。
 文部科学省教科調査官であった菅正隆先生は「先生の問いかけに、熱があって体調が優れない時も、I'm fine, thank youと答えさせるようなことばかりしていたのでは、コミュニケーション力は育ちません」とおっしゃっていました。状況を踏まえて会話が出来るようにする授業の工夫が必要だということですね。これは中学校英語にも十分関連することです。大西さんからは、英語教育全てに通じる観点を示していただきました。
 

(2009年8月24日)

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●大西 貞憲
(おおにし・さだのり)

愛知県で公立中学・高校教諭を経て、民間企業で学校向けソフト開発に携わる。2000年教育コンサルタントとして独立。現場に出掛けての学校経営や授業へのアドバイスには「明日からの元気が出る」との定評があり、愛知県を中心として、全国の小中学校や自治体から応援を求められている。また、NPO法人「元気な学校を支援し創る会」理事として「教師力アップセミナー」「フォーラムin東京」を通して実践に役立つ情報の共有化・見える化に注力している。

●玉置 崇
(たまおき・たかし)

1979年、教員生活スタート。小学校教諭3年、中学校教諭16年、教頭6年、校長3年、2007年度より愛知県教育委員会義務教育課へ。ICTを活用した授業や学校経営で実績があり、文部科学省発行「教育の情報化に関する手引」作成委員の一人。大学時代には落語研究会に所属。今でも高座に上がりご機嫌をうかがっている。「やってみなきゃ分から ない」をモットーに、「思いついたら、すぐ動き出す」ところもあって、失敗は数知れず。そのくせ、ちょっとしたミスで、いつまでもくよくよ悩むタイプ。眠れぬ夜も多い。