★このコラムは、日本初(?)の教育コンサルタントとして10年前からご活躍中の大西貞憲さんから、授業を見るための眼力が高まるノウハウをインタビュー形式で学ぶものです。
【第4回】大西流・小学校外国語活動の見方
大西貞憲(授業を見るプロ) 玉置崇(インタビュー)
外国語活動は学級担任が行うことが基本となっていることから、5・6年生の担任希望者が随分減ったという声も聞きます。それ以上に、校内の現職教育で最後に意見を求められる(これはあまりにも形式的だと思いますが)校長や教頭にとっては、自分の経験を話すこともできず、適確なコメントができないという悩みをお持ちの方もあるのではないでしょうか。
私は子どもたちが英語を話している姿ではなく、聞いている姿を見ることを大切にしています。小学校の外国語活動はコミュニケーションがポイントだからです。
授業では、コミュニケーションの基本は会話ととらえて、"Good Morning. How are you?" "I'm fine, thank you.And you?"といった文章を、相手を変えてひたすら繰り返し練習させるシーンが見られることがあります。このような練習は、あらかじめ話す言葉が決まっているので、子どもたちは自分が話すパートのことばかりを考えています。自分が発話することにエネルギーを集中できるので、必要以上に大きな声で話しがちです。子どもたちが元気に会話している活発な活動に見えますが、会話をすることより、自分が英語を発話することが目的になっているのです。決して子どもたちはコミュニケーションをとっているわけではありません。決まりきった言葉をオウム返しに発話練習することと、会話とは違います。一方的にしゃべっているだけで、相手の言葉は聞いていないのです。
コミュニケーションの基本は、伝えたいことを相手に理解してもらう、逆に相手のことを理解しようとすることです。ですから、子どもたちの活動自体に相手の言葉を聞こうとさせる仕組みが必要です。相手の言葉によって次の自分の発する言葉や行動が決まってくるような活動が大切です。
例えば、"What do you like?" "I like baseball." といった会話でも、これで終わるのでなく、友だちの言ったもの(例えば野球のカード)を取ってこさせるとか、"What dose Yamada_san like?" といった質問を他の子どもにして、"He likes baseball."と答えさせるというような、子どもたちのレベルに合わせた工夫をすることが大切なのです。このような工夫がある授業では、子どもたちは真剣に他者の言葉を聞いています。子どもたちの聞く姿を見ることで、コミュニケーションが成立しているかがわかります。
もっとも聞くということが大切なのは、何も外国語活動の授業に限ったことではありません。授業という視点で見れば、外国語活動だからといって決して特別に考えることはないと思います。
文部科学省教科調査官であった菅正隆先生は「先生の問いかけに、熱があって体調が優れない時も、I'm fine, thank youと答えさせるようなことばかりしていたのでは、コミュニケーション力は育ちません」とおっしゃっていました。状況を踏まえて会話が出来るようにする授業の工夫が必要だということですね。これは中学校英語にも十分関連することです。大西さんからは、英語教育全てに通じる観点を示していただきました。
(2009年8月24日)