★新任の先生のためのコラムです。3人のベテラン教師が、同じテーマについて語ります。
こんなことを聞いてもいいのかしら。聞いてみたいけれど、職員室では聞きにくい。面と向かっては、どうも恥ずかしい。・・・こうした新任の先生方の気持ちを察したテーマが並びます。
【第6回】初めての家庭訪問
和田裕枝先生からの助言
家庭でのよいところを教えてもらうつもりで4月当初、一人ひとりの子どもの名前や個性がやっと分かるころに家庭訪問が始まります。
まずは、その子のよいところ、家庭でのよいところを教えてもらうつもりで行きましょう。玄関先ですが、その子が家庭での様子がわかるものを見つけましょう。野球のバッド、サッカーボール、竹刀、一輪車などその子の趣味などが見えるはずです。そこから話題にすると得意なことなので話がはずみます。犬を飼っている、お花がたくさん咲いているなど学校へ帰ってからも話題にできることを見つけるつもりで行きましょう。
絶対にメモをとりながら聞かないこと。保護者の顔を見てにこやかに。先生がメモをとるといい加減なことは言えないとかまえてしまうことが多いです。ここまではまずは初級編。
せっかくですから、中級編も示しておきましょう。
また、家庭では見られない、学校でしか見られないその子のよいところを話しましょう。
「へえ そんなことをしているんだ。そんな特技があったんだ」と思ってもらえるといろいろな面で役立ちます。できれば、その子が苦手としていることで。体育が得意な子はいつも体育ばかりで褒められることが多く、保護者も聞き飽きていることがあります。算数が苦手なのに、算数でいいところを聞くことができるととても印象に残ります。そのためには保護者と会う前から意図的にその子のよいところを見つけておかなくてはいけないのです。だからこそ中級編。
●和田 裕枝(わだ・ひろえ)先生/愛知県豊田加茂教育事務所指導主事。愛知教育大学の志水廣教授に800人見た中で一番授業がうまい人!と言わせた高い授業力の持ち主。特に、子ども把握力に優れ、授業では、その子のよさを活かす様々な授業技術を駆使する。和田さんの授業力を盗みたいという全国の教師は多数。
藤岡幹根先生からの助言
子どもたちの頑張りエピソードを語りたい家庭訪問は学校によって時期がいろいろなようです。例えば、5月の連休明けに家庭訪問があり7月初めに個人懇談会がある学校。両者を相乗りする形で6月に家庭訪問をする学校。7月の個人懇談会だけの学校などがあります。
いずれの場合も一方的に教師が話すだけではなく話を伺う部分をつくりたいですね。前年度とかわったことはないか。子どものことでうれしかったことはないか。家での生活ぶりなどが聴けるといいですね。子どもは内と外では全く性格を異にする場合があります。そんなことにも留意したいものです。
また、当日を迎えるまでに、子どもたちのがんばりぶりを2つや3つエピソードで語れるよう日頃からメモしておくことです。時期的に、5月連休明けの家庭訪問は少々つらいものがあります。なかなか思い出せない子がいるときは、家庭訪問直前の1週間を意図的にその子たちと関わってみましょう。自分の子をしっかり見ていてくれるという安心感・信頼感を保護者がもってくれれば子どもたちはさらに飛躍します。がんばりましょう。
●藤岡幹根(ふじおか・みきね)先生/「ディベートの藤岡先生」と紹介したら、一気にご存じの方が増えるでしょう。小牧市立光ヶ丘中学校勤務時代は、連続して全国ディベート選手権に選手を送り込み、全国制覇を果たしました。ディベート指導者として各地からお呼びがかかる中、この4月から小木小学校の教頭として奮闘中。
佐藤正寿先生からの助言
「お子さんのよい所を3つ教えてください」家庭訪問で悩むのは「何を話そうか…」ということだと思います。話す内容をリストアップしても、「これなら訪問時間の半分で話題が尽きてしまいそう」と不安に思う人もいることでしょう。
でも、家庭訪問といっても「話し手」だけになる必要はありません。半分は「聞き手」になればいいのです。
事前に、学級通信で「家庭訪問の時にはお子さんのよい所を3つお聞きします。よろしくお願いします」と伝えます。そうすると、「家の子はいいところがなかなかなくて…」と苦笑いしつつも、「家のお手伝いをよくしてくれます」「おばあさん思いで優しいです」といった答えが返ってきます。さらに「どんなお手伝いですか」と突っ込んで聞くことによって、その子のよさをよく理解できます。談笑になることもしばしばです。
その後、学級での様子、担任の願いや質問事項等を聞きます。いい雰囲気の中で話せます。
●佐藤正寿(さとう・まさとし)先生/1985年より岩手県公立小学校に勤務。現在、岩手県軽米町笹渡小学校教頭。社会の教材開発が大好きで、家族旅行でもつい地元の話に夢中になり、家族から冷たい視線を浴びることも・・・。最近はICTを活用した授業づくりに力を入れている。学級通信は担任であった22年間で累計で3400号に達した。そのノウハウを「手軽に発行 学級通信のアイデア40」(ひまわり社)にまとめ、2007年6月に発刊。
*佐藤先生のホームページへはこちらからどうぞ。
(2008年5月12日)