★このコラムは、ベテランの先生方によるリレー方式のコラムです。先輩教師として若い先生方に、「こんなことをしたらうまくいかなかった」といった失敗談を語っていただきます。
【第51回】大西貞憲 先生
「失敗から学ぶために」
このリレーコラムも今回が最終回ということです。今まで多くの先生方の失敗が語られました。私自身、学生時代も、教師時代もそれから後も失敗だらけの人生です。数少ない成功もその陰には数えきれないほどの失敗があります。授業でいえば、うまくいったと思えることは100回に1回もなかったように思います。だから私は、とりあえず「100発1中」を目指せばいいと思っています。問題は、外れた99発です。漫然と99回失敗して、たまたま1回成功してもあまり意味はありません。逆にその成功にこだわり続ければ、その後延々と失敗し続けることにもなりかねません。
このコラムに登場された先生の多くと知り合いですが、皆さんとても素晴らしい、他のお手本になるような方ばかりです。しかし、どなたもコラムに書かれているようにいろいろな失敗をされています。その失敗と正面から向き合い、それを糧としてきたからこそ教師として成長してこられたのです。
皆さんに共通しているのは、次のようなことです。
- 毎日の仕事に真剣に取り組むこと
- 先輩や保護者などのまわりの大人だけでなく、子どもからの指摘でも素直に聞く耳を持つこと
- 失敗を失敗として素直に認めること
- 失敗と正面から向き合い、次に活かそうとすること
「熱心」・「素直」・「謙虚」・「前向き」と言ってもいいでしょう。
失敗は決して悪いことではありません。よく言われることですが、合衆国では1度事業で失敗した人に積極的に投資するそうです。この話の真偽のほどはわかりませんが、「失敗を経験して、そこから学んだはずだから成功する可能性が高い」という説明には説得力があります。
失敗おそれずに真剣に挑戦するからこそ、多くのことが学べるのです。失敗に裏打ちされた成功体験は応用が効きます。以前と状況が変わっていても、過去の経験から失敗の予兆を感じてすばやく対応ができます。
逆に過去の成功体験に縛られすぎてダメになっていく場合もあります。
「最近の子どもたちはダメだ。以前と同じワークシートや課題で進めているのにちっともできない」
「どうも、今年の学級とは相性が悪い。以前と同じようにやっているのに学級経営がうまくいかない」
このやり方は今までうまくいった、正しいやり方だ。うまくいかないのは自分のせいではなく、子どもやまわりの環境が悪いのだ。教師がこう考えるようになってしまっては、子どもに、「学べ」「成長しろ」と言っても説得力はありません。残念ながらこのような先生に出会うこともあります。
若い先生方は、このコラムに登場された先生方のような素晴らしい先生になることを目指して、失敗を恐れず、一生懸命仕事に取り組んでください。まわりの言葉に謙虚に耳を傾け、失敗を認める素直さを持ち、失敗を次に活かそうと前向きな姿勢で日々過ごしてほしいと思います。
(2011年12月26日)