★このコラムは、ベテランの先生方によるリレー方式のコラムです。先輩教師として若い先生方に、「こんなことをしたらうまくいかなかった」といった失敗談を語っていただきます。
【第30回】服部 英生 先生
「意欲向上のつもりが逆効果に」
新任で小学校5年生を担任し、学級がそのまま持ち上がった教員2年目の出来事です。
その職場の多くの先生方が学級通信を出したり、作文や日記に力を入れたりしていました。自分もさっそく日記を書かせることにしました。提出されると次の日までに読んだ感想や意見を私が書くというものです。一人の子どもが2冊の日記帳を交互に提出するので、すべての子が毎日日記を書いていました。
5年生の最初は、ほんの数行しか書くことのできない子どもたちでしたが、6年生に入ってから文字数も多くなり内容にも深まりが出てきました。そんな折、もっと書く意欲を高めようと思っていたときに、ある女子児童から言われた一言が今でも耳に残っています。
少しでも頑張って書いてもらうために、しっかり書いてくる子への返事は、こちらも何行かにわたって書きました。それを紹介することで「自分も返事をたくさん書いてもらいたい。」と子どもたちも一生懸命書くようになりました。しかし、ある日、○○さんから「先生は△△さんや◇◇君をひいきしている。△△さんや◇◇君の返事ばかりたくさん書いている。」と日記に書かれてしまいました。
自分では、そのようなつもりではなかったのに…。○○さんといろいろ話をする中で、確かに教師の返事の量で子どもたちの意欲を高めることもできるけど、あの子たちばかりという気持ちをもってしまう場合もあることを初めて知りました。同じような気持ちになった子どもが他にいるかどうかは分かりませんが、女子児童の気持ちをとらえることの難しさを感じたのを思い出します。
子どもたちにすべて平等にということは難しいことですが、少なくとも子どもに疑念をもたせないようにすることは大切であると反省しました。
2年間で多い子は10冊以上になった日記帳。20歳になったら返すからとあずかったのですが、なかなか機会がなく、やっと20数年後の同窓会で返却することができました。「あの毎日書き続けた日記のおかげで、中学、高校とずっと書くことに抵抗がありませんでした。」という声が多く聞かれホッとしました。
教師になりたての頃、多くの研修よりも子どもたちとの生活の中から学ぶことの方が多かったように思います。
(2010年9月27日)