愛される学校づくり研究会

★このコラムは、ベテランの先生方によるリレー方式のコラムです。先輩教師として若い先生方に、「こんなことをしたらうまくいかなかった」といった失敗談を語っていただきます。

【第26回】加木屋 直規 先生
「私の誓い−教師として大切にしたいと思うこと−」

失敗談には事欠きませんが、今でも自らの戒めとして、忘れないようにしているというか、忘れたくても忘れられない出来事ともいうべき失敗について紹介させていただくことで、少しでも若い先生方の参考になればと思います。

 私がまだ20代の頃、中学校3年生の担任をしていた時のことです。勤務していた中学校の体育祭では、グループ別に分かれて応援合戦が行われていました。どのグループも応援団の生徒が、何日も前から時間をかけて趣向を凝らした応援を考え、本番当日を迎えます。私が担当したグループの応援は、昔ながらの硬派路線で、最後の最後にエールで締めくくるという構成をとっていました。内容を欲張りすぎたために、いよいよエールというところで、制限時間いっぱいとなってしまいました。
 私は、このまま続けさせるか、ルールに従って応援を止めさせるか迷いました。横目で見ると、エールを切る生徒は、やる気満々で待機しています。本部からは、「時間です。応援を止めてください」と、何度も放送で催促してきます。このまま応援を続けると、5分以上延長してしまいます。迷いに迷ったあげく、私はエール担当の生徒を呼びました。
 「今日まで一所懸命練習してきたことはよく分かっている。でも、時間をオーバーしている。ルールなので仕方がない。エールを省略するので、こらえてくれ」というようなことを告げました。生徒は私の指示に従ってくれましたが、その時の悔しそうな顔が今でも目に浮かびます。一旦決めたこととはいえ、後で思い返すと、ひどいことをしたという自責の念でいっぱいでした。
 後日、生徒本人から「せっかく練習してきたのだから、やりたかった。」と、その時の思いを聞きましたし、保護者からも「家でも練習して楽しみにしたので、晴れ姿が見られなくて残念でした」とも言われました。私は頭を下げて謝るしかありませんでした。

 私はこの失敗から2つのことを学びました。
 1つは、何か物事を行うときには、事前に時間を計りながら、綿密なリハーサルを行うことの大切さです。私の計画がしっかりしておれば、生徒に悲しい思いをさせなくて済んだはずです。そして、もう1つは、今後、万一同じような場面に遭遇したら、たとえルール違反となっても、後で私が謝ることにして、絶対に最後まで行わせるということです。
 これについては、賛否両論あろうかと思いますが、迷ったときは、子どもの気持ちと、それまでの努力を無にしないことを第一に考えて、敢えて横車を押そうと心に決めました。(勿論、横車を押さなくてはならないような事態を招かないように十分気をつけるようになりましたが。)

 教師の仕事は、子どもに力を発揮させ、子どもの力をさらに伸ばすことだと思います。その芽を摘んでしまったことを深く反省するとともに、二度と、自分のミスを子どもに負わせるようなことをしないと心に誓った出来事でした。

(2008年12月15日)

失敗から学ぶ

●加木屋直規
(かぎや・なおき)

昭和63年、教員生活スタート。小学校教諭9年、中学校教諭9年、教頭2年、平成20年度から大口町教育委員会主幹兼指導主事。三河・名古屋・尾張と三地区を渡り歩く。故芦原英幸先生に憧れ、小学校から大学まで空手のことばかり考えて生活を送る。最近、次女が空手に興味を持ち始めてちょっとうれしい親ばか。「局面的危機管理研究」をライフワークとしている。