★このコラムは、ベテランの先生方によるリレー方式のコラムです。先輩教師として若い先生方に、「こんなことをしたらうまくいかなかった」といった失敗談を語っていただきます。
【第7回】鈴木 照美 先生
「新卒1年目の冷や汗タラリン研究発表会」
第1回のコラムで華麗なる???スタートを切った玉置先生の隣で、不向きなデスクワークと闘っています。2、3時間ごとに2人で「はぁあああ〜〜〜電池が切れた、頑張らなくっちゃね!」と励まし合っている毎日です。
私には数々の失敗談がありますが、今日はほんの1コマだけ告白します。
新任のとき、園内では他に誰も担任経験がない1学年1学級の3歳児クラス担任として着任しました。(なんと、ノウハウを教えてくれる先輩の先生が一人もいないのです。しかも1学級ですが、一応学年主任。ひぇええ〜)。夏休みには研究書籍の執筆や研究紀要の作成など書き物の宿題の山。10月には3人の教育実習生がクラスに配当。そして11月には今日告白する“冷や汗ものの研究発表会”・・・と、どなたも同じでしょうが、何が何だかわからないまま突っ走るしかないという“いばらの道”を私もよろよろと歩き始めました。
研究発表会では、『音の出るものに興味をもちリズミカルな音を楽しむことができるように』、というテーマをもって当日を迎えました。子どもが自分で好きな素材を選んで使い、鳴り物を作ることができるように願い(祈りかも・・・)を込めて、プラ容器、空き缶、どんぐりや数珠玉などの木の実、小石、スポンジを巻きつけた竹箸棒などをいっぱい用意しました。太鼓やマラカス風の手作り楽器をイメージして、いつもとは違う、お客様を迎えるのにふさわしい完璧なつもりの環境構成をしてしまいました。
保育室は「さあ、どうぞ、遊んでくださいな」といわんばかりの押し付けがましい設定です。大勢の参観者の合間をぬって保育室に入ってきた3歳の子どもたちは、「先生おはようございます」とあどけないしぐさであいさつをして、身支度を終えると、あっという間に元気よく外へ遊びに行ってしまいました。
(えっ、こんなにいろいろ準備してあるのに・・・ここで遊ばないの・・・・)と、追いすがるようなまなざしの私にはお構いなしです。 |
ただ一人、人見知りをするAちゃんが、保育室に入るなり帽子もカバンもおろさずに個人ロッカー(ちょうどぽっこりと小さな子が入ることができる大きさ)に入り込んで、つぶらな瞳でキョロキョロ大勢の人を見ていました。何も始めそうにないので、私がクッキーの空き缶を竹箸棒でトントンとたたいて「Aちゃん♪お・は・よ♪」と近くへ行くと、「貸して」と、手を出して空き缶を受け取り、リズミカルな言葉唄のやりとりをして私に付き合ってくれました。1日中ロッカーから出ることはなくその日を終えたAちゃん。午後の分科会では話題の中心となりましたが、そのときは私の救世主でした・・・。
計画とは大きく違う保育展開なのに、「子どもにしてみれば、当たり前かも・・・」と、半ば開き直っていた私に、先輩方も「ま、3歳児はあんなもんよね」と、おおらかに評価していただきました。今から思うと超冷や汗物の公開保育でした。
今日、この仕事を続けていられるのも、私の数々の失敗を一緒に笑い、忙しい中を遊びに付き合って気分転換をはかりながら見守ってくださった心の広い先輩たちのおかげだと感謝しています。
(2007年12月24日)