【第8回】不登校生徒のこころの変化を追う(7)
Aは、6月1日の遠足を最後に連続で欠席している。A本人の言葉によると、学校へ行けなくなった理由を次のように言っている。1つは、学習することへの疑問、つまり「どうして勉強しなくてはいけないのか」という思いが不登校の理由だという。そして、もう1つの理由として、昨年度、勤務されていた心の相談員が交代され、話ができる人が学校にいなくなった、ということをあげている。
家を出ることもままならず、犬の散歩にも人目を気にして出られないこともあった。テスト範囲を家へ届けてもよろしいかとの担任の申し出に対しては、「先生が家に来ると、本人を追い詰め、逃げ場がなくなってしまうので、家庭訪問は控えてほしい」という母親の返事があった。以後担任も、電話連絡にとどめている。
カウンセラーとも相談し、Aの心にアプローチできるのは現状では昨年度の相談員さんしかいないので、アプローチを依頼した。
母親とは終業式後に懇談し、通知表やプリント、夏休み関係の配布物を手渡した。登校はできていないが、家での生活はだいぶ落ち着いてきた。布団にもぐって泣きじゃくることもなくなったという。しかし、勉強したり、何かをしたりする意欲はまだない。また、外出することも拒みがちで、近所では誰かにあったらという心配もあるので、母親と遠くへ出かけて、気晴らしをしている。
級友が家庭訪問しても、本人はどう対応していいか戸惑い、つい迷惑そうな態度で接してしまったという。
正直、なかなかこの局面を打開する手が見つからない。そこで、勢い、カウンセラーの方と相談したり、文献にあたることになる。
ある本によれば、ひきこもりには2つの種類があるという。第一は物理的に家に何年間も閉じこもっている人。第二のひきこもりは、潜在的ひきこもり。これは社会に出ているひきこもりのことで、本音を隠しながら、やっとのことで生活している人たちだ。ある意味、ほとんどの人が、潜在的ひきこもりだということになる。潜在的ひきこもりが、なんらかの原因で発病すると、ひきこもりになるという。ひきこもりには次のような6つの共通する特徴がある。
(2)自分を殺して相手に合わせる
(3)人に要求するとか、質問できない。
(4)感情がない、感情が麻痺している。
(5)自分で決められない。
(6)人間関係で緊張する
こうしたひきこもりの原因の一つに、親子関係が関係すると、心理学者の服部雄一氏は言う。
ちゃんと聞いていない。聞いているふりをしている。親自身、子どものとき、親から話しを聞いてもらっていない。親が子どもの話を聞くという文化がなかった。
(2)親が子どもの本音をきらう
「生意気言うな」「だれのお陰で飯くっているんだ」と言う。そうすると子どもは本音をいえない。本音を言えば怒られる。だから、本音をひっこめる。
(3)親が子どもの話を聞かない。
(4)一方的な関係
したがって、こういう家庭では、一方的な関係です。親と話し合う、つまり、子どもが主張して、親が聞くという関係がない。親は「こうしなければいけない」と、一方的な指示を出して、子どもを動かそうとする。
(5)親子のコミュニケーションがない。
こうした文献を読めば、読むほど、不登校生徒の心を追うことの難しさを感じる。もちろん、「難しい」で終わっていてはいけないことを承知しつつ、悩む毎日である。
(2008年2月18日)