【第2回】学級の団結力はレクリと行事で磨く
6月は、2学期に体育大会や合唱コンクールなどがあるので、それに備えて学級の団結力をつけたい時期である。そのためには、遠足やキャンプ・修学旅行などの行事が絶好の場である。また、その下地を学級レクリで養っておくことが重要である。
学級レクリは、1学期にソフトボール、2学期はバレーボ−ル、3学期はサッカーなどと球技を行うことが多い。ねらいは、男女の仲を良くすること。したがって、2コートを使い、男女混合で4チームを実力がほぼ均等になるよう、係や部活動経験者に考えさせる。もちろん担任も入り、学年所属の先生にも声をかけて、一緒に楽しむ。レクリ中は、準備や片付けに努める生徒、ホームラン・アタック・シュートを決める生徒、ファインプレーをする生徒などを見て、賞賛する。女子がシュートを決めたら3点など、特別ルールを採用する時もある。まず、このような布石をうち、担任として個性や学級の人間関係・エネルギーをつかんでおく。
次は、遠足やキャンプ・修学旅行などのバスレクを大切に使う。安易にビデオや音楽の鑑賞にはしない。必ず入れるのは、「歌合戦」という出し物の時間とビンゴである。以下、その流れを説明する。
歌合戦の手順 | ビンゴの手順 | ||
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(1) | 1人または2〜3人のグループで歌(クイズ)を歌おうと提案 | (1) | 景品はそれぞれが1品ずつ拠出する ベスト5は、担任が景品を用意する |
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(2) | くじで順番を決め、どんな曲を歌うか確認する | (2) | ビンゴの運営はレクリ係に任せる 必要な物品はないか確認する |
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(3) | 当日、バスのカラオケがないような新曲は自分で用意させる | (3) | 当日は、ガイドや運転手さんにも参加をお願いする |
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(4) | 互いの良い所を認め合う | (4) | あがった人から景品を回す |
これらを通して、学級のリーダーやサポーター、ムードメーカーをじっくりと見極めるとともに、何より楽しいひとときをみんなで共有できたことをたたえたい。
ただし、1点配慮すべきことがある。
それは人間関係の変化である。6月ともなると、昨年度の友人関係から新しいものに変わる。そこで、孤立したり、友達の取り合いでいじめが起きたりする。このとき、しっかりとした手だてを打たないと不登校を生んだりすることすらある。だから、生活記録や放課の様子に気を配る。と、同時に学級役員には「最近、授業どうだあ?」「合唱曲は何にしよう」と積極的に声をかけて、情報をつかみ、行事への意識を高めることも忘れない。
学級では、「いじめの連鎖」の話をする。すなわち、「グループで1人孤立した者(ターゲット)をつくると、妙な結束力が生まれ、いじめを楽しむが、それがスリリングでなくなると、次の人に順々移り変わっていく。最後には、それを指示していた中心者が仲間から反発を買い、苦しむ」という流れだ。
また、道徳では「3頭の象」の話をする。ふだん、野生の象は地面に横になって寝ない。本能として、横になったら巨大な象とはいえ、死を意味するからだろう。多摩動物園では、かつて3頭の象が飼われ、うち1頭がフラフラになったとき、あり得ない光景が起きた。それは、他の2頭が左右双方から支えて、約1週間水や食べ物を中央の1頭に与え続けて、回復できたという美談である。
放課は図書館に行ったり、保健室や相談室に行ったりする。図書館は校内における第2の駆け込み寺的存在であると認識している。また、保健室は体調不良で、心の悩みを静かに訴えている生徒もいる。その他、短級や授業では、時々教室の後ろの扉から入っていきながら、生徒の視点で教室を見渡してみると、案外気がつくことがある。教卓につくまでのわずかな時間も、日によって列をかえて意図的に座っている生徒に声をかけながら進む。帰りの短級後は、机の整頓や教室環境の整備をしながら、最後の生徒が教室を出るまでいるようにし、何気なく生徒が話しかけられる空間をつくるように心がけている。
先輩の教師からは、次のように言われたことを覚えている。
「若さや情熱は何より生徒を引きつける。でも、生徒の中にぐっと入っていくと、かえって見えない部分が出てくる。むしろ、担任が適度な距離を生徒と保つことにより、生徒たちは自分のよりよい居場所を作っていく」と。
以上、第2話のまとめとして、私は「担任が教室で爽やかな風を吹かせようとしても、それを受けとめる生徒の側が心地よく思えない状況では学級経営は成り立たない」と考える。学級のグループ・ダイナミックスを円滑に操縦できることが、担任の問われている力量なのであろう。
さて、明日は誰にどんなことを話そうかなあ…と、帰宅途中の車の中で思いを巡らす。
(2005年6月27日)