PLANEXUSの「学校力アップシリーズ(2)」
「学び合う学び」と学校づくり―発信し続けた教育の本質
小牧市教育長・副島孝先生がご退任されることを聞いて、さまざまな思いが過ぎりました。そのひとつに、「教育委員だより」はどうなるのだろうかということがありました。 任を退かれれば、当然、副島教育長としての発信はなくなるわけです。これまでのように「教育委員だより」を通して副島先生から学ぶことができなくなると思うと、とても寂しい気持ちになりました。特に平成19年度から県教育委員会へ異動したこともあり、「教育委員だより」は、「小牧の教育の今とこれから」を知る貴重な情報源でした。それがなくなってし まうことで、自分は小牧からますます離れてしまうのではないかという、なんと表したらよいかわからない気持ちになりました。
(中略) すっかり習慣化してしまった「教育委員だより」の過去読みなどをしているうちに、このことは過去のことではない、社会がどのような状況となっても変わらない教育の本質が語られている、だからこそ、自分は何度も訪れて学んでいるのだと自覚しました。また小牧市が「学び合う学び」を重点に進めることに至った教育長の思い、その後の小牧市内小中学校の変容の記録は、どこの地域にとっても学校づくりのための良質な教育書となると確信しました。
そこで副島先生に「私のほうで編集しますのでぜひ書籍にしてください」とお願いをしました。こうしてでき上がったのがこの本です。260号にも及んだ膨大な教育委員だよりを熟読・精選し、私なりの視点で章立て、項目立てをさせていただきました。林文通先生から素晴らしい写真の提供も受けました。編集者としての自信作です。この本が教育関係者の皆さんばかりではなく、広く多くの皆様に手にとっていただけますことを願っています。 (編者 はじめにより)
もくじ
- 第1章 「学び合う学び」までの道
- 1.教師力をアップするとは
- 2.専門職の処遇 〜田中さんのノーベル賞受賞から〜
- 3.学校訪問で感じること
- 4.教育研究所研究員を募集します
- 5.OJTこそ基本
- 6.Web小牧市教育センターHPの公開
- 7.授業力向上研修会に参加して
- 8.研修のイメージを変えたい
- 9.教員研修会に参加して
- 10.『ドラゴン桜』にはまる
- 11.国語重視と言うだけでは
- 12.子どもに視点をおいた授業を
- 13.還暦を迎えて
- 14.コーチングと学校
- 15.学びの実感
- 16.体罰と『<教育力>をみがく』
- 17.2007年問題の年に
- 第2章 「学び合う学び」の姿を求めて
- 1.岳陽中学校を訪問して
- 2.アクションリサーチ研究会に初めて参加
- 3.幼児教育でも協同的な学び
- 4.12歳の可能性
- 5.スーパーティーチャー考
- 6.前期の学校訪問終了
- 7.発達障がいの研修会から
- 8.公開保育の新展開へ
- 9.三中学校の公開発表会
- 10.学校訪問を終えて
- 11.市初任者研修を終えて
- 12.高等学校での学び
- 13.高校の先生の書いた本
- 14.授業方法と学力・意欲
- 15.教職員研修と現職教育
- 16.2年ぶりのアクションリサーチ研究会
- 17.佐藤暁先生の新著
- 第3章 書籍を通して伝える「教育の本質」
- 1.大崎博澄著『子どもという希望』を読む
- 2.『文章読本さん江』を読む
- 3.『りんごは赤じゃない』を読む
- 4.『学校って何だろう』を読む
- 5.文集『12mの通学路』を読んで
- 6.子ども読書の日に寄せて
- 7.『教育を経済学で考える』を読む
- 8.ブックスタートの現場を見る
- 9.『カウンセラーは学校を救えるか』を読む
- 10.『公立校の逆襲』を読む
- 11.哲学の授業
- 12.『いい学校の選び方』を読む
- 13.『一斉授業の復権』を読む
- 14.『学力の社会学』を読んで
- 15.ずっと心に残っている本
- 16.職人的価値観
- 17.本当に久し振りに斎藤喜博
- 第4章 語り続けた「教育の本質」
- 1.スクール・カウンセラーの役割
- 2.子どもへの愛情
- 3.教職員着任式にて
- 4.教職員表彰に想う
- 5.教育委員の役割
- 6.人事担当者の眠れない夜
- 7.ビジネス書の勧め
- 8.幼年期教育推進会議での議論
- 9.学校への無理難題の記事に
- 10.応時中研究協議会を終えて
- 11.効果のある授業研究
- 12.新しい学校づくりのめざすもの
- 13.安易な国際比較への警鐘
- 14.「市民」や「子ども」という言葉
- 15.日本の教育を論じる前提
- 16.私を支えた2つの言葉
- 17.今年になって感じたこと
- 18.「90%主義」で
著者紹介
- 副島 孝(そえじま たかし)
- 1946年生まれ。 愛知教育大学教育学部卒業。愛知県小牧市内公立小中学校教諭として勤務。 小牧市教育委員会指導主事、教頭、校長、愛知県教育委員会尾張教育事務所教育主事、管理主事、指導課長を経て、2001年小牧市教育長に就任。以来、8年9か月の間、教育長として「学び合う学び」による学校づくりをはじめとする教育行政に取り組む。その間、小牧市教育委員会のホームページに「教育委員だより」を連載。現在はスクール55のサイトに、「黙さず語らん」を連載している。 現在、名古屋大学教育学部大学院博士課程前期2年、愛知文教大学客員教授。
- ●主な著作 共著に『響け心に 小牧の学校教育(フォー・ネクスト)』(2003年)、『学べともに 小牧の学校教育(フォー・ネクスト)』(2005年)、『情報化時代の学校変革力(高陵社書店)』(2008年)など。
編者紹介
- 玉置 崇(たまおき たかし)
- 1956年愛知にて生まれる。 愛知教育大学卒業後、愛知県公立小中校教諭、愛知教育大学附属名古屋中学校教官、小牧市立小牧中学校教頭、小牧市立光ヶ丘中学校長、愛知県教育委員会指導主事、主査を経て、現在、愛知県教育委員会海部教育事務所長。 ICTを活用した授業や学校経営において実績があり、文部科学省発行の「教育の情報化に関する手引」(2009年3月)の執筆を行った。また2010年4月より、文部科学省「学校教育の情報化に関する懇談会」委員に就任している。
- ●主な著作 『大西流・授業の見方(プラネクサス)』『情報化時代の学校変革力(高陵社書店)』『できる教師のデジタル仕事術(時事通信社)』『数学大好き(明治図書)』『数学の授業を感動の連続に(明治図書)』『正門からどうぞー学校をひらく(フォー・ネクスト)』(いずれも共著)など、多数あり。