導入場面のつくり方を考える

授業の構成を考える時に導入場面に悩むことがよくあります。どうのようにすればそのようなことが思いつくのだろうと感心するような、子どもたちを引きつけ本時のねらいにつながる見事な導入をされる先生がいらっしゃいます。そんな素晴らしいものでなくも、手軽に本時のねらいにつながるような導入がつくれればと思います。導入場面のつくり方について少し考えてみたいと思います。

本時のねらいに子どもたちの判断を必要とするような具体的な目的や目標を組み込むことで、導入を考えやすくなります。歴史の授業を例にして考えてみましょう。
「徳川綱吉の政治について調べよう」というねらいは、活動はあっても何のために調べるか、目的や目標がはっきりしません。そこで、ねらいを少し変えてみるのです。「徳川綱吉の政治はよい政治だったか」と、調べることを手段として、よいか悪いかを判断するという目的を組み込むのです。「よいか悪いか判断させる」のであれば、導入で「よいか悪いか疑問を持たせる」活動をすればいいのです。
「みんな動物好き?」「ペット飼っている人いる?」と動物について子どもに話させます。こういう無責任に答えられる質問は子どもたちのテンションが上がりやすくなります。あまり上がりすぎない内に、次の質問、話題に移ることが大切です。「じゃあ、動物をいじめちゃいけないという法律があってもおかしくないね」「それじゃあ、動物に襲われても、逃げるだけで絶対抵抗しちゃいけない。殺すなんてダメだという法律はどうだろうか」と子どもに問いかけ、自由に発言させたうえで、「実はそんな法律がつくられたことがあるんだ。徳川綱吉という将軍の時なんだ」といって、本時のめあてを提示します。

この導入が素晴らしい、理想的だという気は毛頭ありません。しかし、このパターンであれば短い時間で本時のめあてにつなげることができますし、他にも応用がききます。例えば理科で、「雲のでき方を知ること」がめあてであれば、「雲をつくることができるか」に変えて、導入で子どもたちに「雲を人工的につくることができると思う?」と問いかけるのです。「雲をつくることができるか?」に対して、それを考えるために「雲のでき方知ろう」と本来のめあてにつなげるのです。

授業の導入部分は、子どもたちの判断を必要とするような具体的な目的や目標をめあてに組み込むというように、めあてと連動させて考えるとつくりやすくなると思います。導入部分に悩んだ時に試してみてください。

つまずきを予想できるようになる

教材研究では、課題や発問、授業の流れなどを考えるだけでなく、子どものつまずきを予想することが大切になります。何がわからないか、どのような間違いをするかといったことを考えるのです。実は教師にとってこのことは意外と難しいことです。例えば小学校の低学年の内容は、教師(大人)にとって当たり前のことばかりです。また、自分の専門教科は得意だったこともあり、わからない経験があまりせん。子どもたちのつまずきが想定外であることがよくあるのです。ある初任者が、「子どもがわからないと言った時にどうしていいかわからない」と悩んでいたことがありました。自分が思いもよらないところでつまずかれると、とっさにどう対応していいかわからないのです。経験の差がでるところです。しかし、経験だと言われてしまえば経験の少ない若い教師は何ともできなくなります。その差を埋めるために、日ごろから子どものつまずきを意識して想像することが大切になります。

予想しないつまずきに対応するためには、机間指導が有効です。つまずきを見つけた時にわずかかもしれませんが、対応を考える時間があるからです。ただ漫然と子どもたちの手元をみるのではなく、子どもたちのつまずきとその原因を見つけようとする姿勢が大切です。確認のための小テストなども行うといいでしょう。○×をつけるのではなく、どこで間違えているのか、何につまずいているのかを見つけるのです。小テストを回収すれば、時間をかけてつまずきの原因と対応を考えることができます。こういう経験を積み重ねていくことで、子どものつまずきを予想できるようになるのです。事前に予想できるようになれば、どんな声かけをするか、どんなヒントを与えるかといった対応を合わせて考えておくこともできます。とはいえ、経験の少ない教師にとっては手間と時間がかかることです。
この経験の差を簡単に埋める方法があります。それは先輩に聞くことです。課題や進め方をたずねる方は多いのですが、意外に「子どもたちはどこでつまずきますか?どんな誤答がありますか?」と聞いているのを目にすることは少ないのです。先ほどのわからない子どもの対応に悩んでいた教師の先輩は、授業のことを聞かれたら「子どもからこんな答えがでたよ」と子どものつまずきや、誤答を教えていました。この情報があれば、対応を考えておくことができます。その教師は子どものつまずきに対応する準備ができるようになり、自信を持って子どもたちに向かうことができるようになりました。

授業アドバイスをしている私にとって、実は一番厳しい質問が「子どもはどこでつまずきますか?」です。自分の専門教科であれば自信を持って答えられますが、教えた経験のない校種や教科であれば想像するしかありません。それでも何とかお答えできるのは、たくさんの授業を見せていただいているからです。授業中の子どもの様子を見ながら、どこでつまずいているのか、その原因は何だろうと考える経験をたくさん積ませていただいているので、教える経験の足りないところを埋めることができているのです。そうです、経験の差を埋めるもう一つの方法が授業を見ることです。余裕を持って見ることで、客観的につまずきを見つけたり対応を考えたりできます。もちろん授業者の対応からも学ぶことができます。忙しい毎日ですが、何とか同僚の授業を見る時間をつくってほしいと思います。

教材研究は、子どものつまずきを予想しその対応を考えることが大切です。若い先生は自分一人で悩まずに、先輩に教えてもらい、同僚の授業を見ることで経験の差を埋めてほしいと思います。
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