実物投影機でノートを映す(その1)

実物投影機の活用で、子どものノートを映すというのがあります。子どもに板書させると結構な時間がかかってしまいます。全員が問題を解き終わってから指名して板書させると、その間、授業がだれてしまいます。では、途中で指名して板書させるのはどうでしょう。当然指名されるのは早くできた子どもです。一部の子どもしか活躍できないということになります。実物投影機を利用すれば、こういう問題も簡単に解決できます。しかし、気になることもあります。

実物投影機を使うときは、ノートを映してすぐに子どもが説明し始めることがほとんどです。ところが、どうも子どもの考えをつかみにくいのです。ノートを使って子どもがうまく説明できるようになっていればまた違うのかもしれませんが、全体をつかみにくいのです。子どもが板書する場合にはそのようなことを感じたことはありません。その違いは何でしょうか。それは、子どもが説明を始める前に、書かれた内容を理解する時間があるかないかです。子どもに板書させる場合、その間に内容をじっくり読むことができます。説明を聞かなくても考えは大体わかります。逆に、わからない部分が事前に明確になりますから、説明もその部分に集中して聞くことができます。一方、実物投影機を使う場合、読みやすくしようと大きく映すと、記述の一部しか見えないこともよくあります。その部分の説明が終わるまで続きは読めません。先読みできないことはストレスになります。リアルタイムに説明を聞きながらノートの記述を理解するというのは意外と負荷のかかることなのです。

言語活動の充実が言われるようになったこともあり、プレゼンテーション能力を意識して子どもにノートを使って説明させることが増えてきているように思います。私たちがおこなうスライドを使ってのプレゼンテーションは、1回に見せる情報量や話す内容を意識して組み立てています。しかし、通常の授業場面では子どもたちにはそのようなことを意識させているわけではありませんし、また、させる必要もありません(総合的な学習の時間などを利用すればいいでしょう)。伝えることは大切ですが、必要以上に子どもに負荷をかけることはないのです。伝わりやすいように教師がうまく働きかけて助けることも必要なのです。

ノートを映したら、子どもたちが読んで理解する時間を少しとってください。そして、「どう、○○さんの考えわかった」と確認するのです。わかった人が多ければ、「説明しなくても読むだけでわかった人がたくさんいるね。すごいね。○○さんのノートもわかりやすくかけていたんだね」、少なければ、「じゃあ、説明をしっかり聞こうか」というようにつなぎます。その上で、本人に説明をさせるのです。説明後、わかった人が増えれば、「説明がよかった」とほめ、少なければ「○○さんの考えがわかった人、もう一度説明してくれるかな」と他の子どもにつなぐなどします。こうすることで、説明することだけでなく、伝わるノート、記述という意識も育ちます。言語活動というと話すことを意識される方が多いようですが、わかりやすく書くことも大切なことです。

実物投影機を使うことで、ムダな時間が削られ授業のテンポアップが可能になります。しかし、時間をかけることにも意味があります。必要な時間までも削りすぎないように注意してほしいと思います。

子どもの作業が終わっていないときにどうするか

課題に取り組ませているとき、いつ作業を終わらせて次の場面に移るか悩むことがあります。与えた時間が過ぎてほとんどの子どもが終わっているのに、一部の子どもがまだ作業中のときに、中断させるのか時間を延長するのか迷っている教師の姿をよく目にします。このとき、途中の子どもに「時間ほしい?」とたずねることが多いように思います。当然のように子どもは「ほしい」と言いますので、「あと○分あげます」と延長することになります。
しかし、問題を解くといった課題の場合、まだ途中の子どもは時間を与えたからといって、解けたり考えがまとまったりすることはあまりありません。解けていないので時間がほしいとは言いますが、見通しが持てていないので結局延長しても解けないままです。一方すでに課題が終わっている子どもたちは、もうすぐ次の場面に移れると思ってじっと待っていたのに、また待たされることになってしまいます。こうなると、多くの子どもは集中力が切れてしまい、ざわつき始めます。作業を続けている子どもの集中力も乱されます。延長しても状況は悪くなるだけで、時間のムダです。では、どうすればいいのでしょうか。

まず、作業が終わっていない子どもの状況を把握することが必要です。単に作業が遅く時間があれば終わることができそうなのであれば、あと○分と明確に時間を区切って延長します。その際に、作業が終わっている子どもたちに次の課題を与えることが大切です。他の問題を解く、まわりの子どもと答の確認をするといった指示を出すのです。
見通しが持てていないため、時間を延長してもすぐにできそうもないときは、工夫が必要です。単に時間を延長するのではなく、まわりの子どもに相談するというように活動の質を変えることも考えなくてはいけません。こうすることで、すでに終わっている子どもに活躍の場も与えることができます。とはいえ、全員を活動させるのはなかなか難しいことです。

発想を変えて作業が終わっていない子どもを中心にして進めるという方法もあります。作業を時間通りに一旦終わらせます。ここで、作業を終わっていない子どもを指名するのです。答ではなく「困ったことはない」と聞くのです。「同じところを困っている人いる」とつなぎ、困っていることを学級全体で共有し一緒に解決していきます。「みんなで、困っていることを解決しよう。こうすればうまくいくというヒントを言ってくれる人いる」「どうやったか教えてくれる」「最初に何をやろうと思った」というように、答ではなくヒントを言わせるようにします。「今のヒントを聞いて、どうできそう」と困っている子どもにつなぎます。まわりの子どもに助けてもらいながら、全体の場で困っている子どもに解かせます。こうすることで、作業の途中の子どもがいても時間を延長せずに次の場面に進むことができます。
また、予定の時間では多くの子どもが終われそうもないと判断した時は、早目に作業を切り上げて困っていることを聞き、見通しが立ったところで、もう一度自力で取り組ませるという方法もあります。

全員が作業を終わることにこだわると、どうしても時間を延長しがちですが、対応する方法はいろいろとあります。子どもの状況を把握して、適切な対応を選んでほしいと思います。

表を読み取る力をどうつける

資料として数値の入った表を利用することがあると思います。表をもとに考えさせる、気づいたことを発表させるといった活動もよくあります。しかし、子どもが育っていなければ、「表を見て気づいたことない?」といった問いかけではなかなか気づくことはできません。表を読み取る力はつけるためにはどのようなことを意識すればよいのでしょうか。

表は数字がいくつも並んでいます。多くの場合、表を見るようにいっても、漠然と眺めるだけで一つひとつの値の違いを比較したりはしません。まず数字をきちんと意識させることから始める必要があります。
その方法の一つに表の数字を読み上げさせることがあります。全員で一斉に読み上げることで五感に訴えることができます。
表の一部を空欄にして書き込ませるという方法もあります。このとき、値を板書するなどして目で見て写させるのではなく、教師が値を読み上げて書き込ませるとよいでしょう。ただ写すだけだと漫然と数字の羅列としか意識しませんが、耳で聞いて書き込もうとすれば、数を数字に変換する過程で値を意識することになるからです。子どもたちが育ってくるまでは、値の変化を意識させるために「あっ、ずいぶん増えたね」「同じような値が続くね」といったコメントをはさんでもよいでしょう。
表を見る視点を明確にするために、「1番大きいのはどこ?」「小さいところは?」「1番大きく値が変化しているところは?」と問いかけたり、印をつけさせたりといったことも必要です。時間があれば、表を値の大きい順に並べ替える、グラフにするといった作業をさせることも有効です。

子どもたちが育ってくれば、意識して表を読み取ろうとするようになります。気づいたことをただ発表させるのではなく、「どこに目をつけた?」「何に注意した?」「どうやって気づいた?」といった、表を見る視点や読み取る方法を問いかけるようにするとよいでしょう。また、表の読み取りに入る前に、「表を見るとき、どんなところを見るとよかった?」と意識させてもよいでしょう。表から読み取ったことだけでなく、読み取り方を共有していくことで読み取る力を定着させるのです。

表を読み取る力をつけるためには、数値に注目し比較をする、変化を見るといった活動や作業を経験させることが大切です。子どもたちに視点が育って、はじめて「気づいたことは?」という発問で子どもたちが気づけるようになるのです。

子どもの発言をつなぐタイミングを考える

子どもの発言をつなぐことが大切(「子どもの発言つなぐことを考える」参照)ですが、自分の意見を発言したくてなかなか待てない子どもがいます。友だちの発言についてどう思うか問いかけてもうわの空で、自分が発言するチャンスが早く来ないかとイライラして待っている。そんな子どもの姿を見ることがあります。小学校の低学年に多いように思います。一人ひとりの考えをその場でつなごうとしても、子どもの聞く姿勢が育っていなければなかなか難しいものです。その場でつなぐことが難しいときはどのタイミングでつなげばいいのでしょうか。

発言したいという気持ちをまず満足させるために、テンポよく次々に指名していく方法があります。子どもたちに一通り発言させて、発言したい気持ちを落ち着かせるのです。子どもの意見が一通りでると、教師は出てきた子どもの意見を自分でまとめたくなります。そうではなく、このタイミングでつなぐことを考えるのです。そのためには、一人ひとりの発言を「なるほど」と受け止めると同時に、誰がどのような発言をしたか教師がしっかりと覚えておくことが必要です。子どもたちの発言の中から、深めたい考えや同じような意見など取り上げるべきものを選び、「みんな、○○さんの意見覚えている?」と問いかけます。ここで、「・・・という意見があったけど覚えている」と内容を教師が説明するのではなく、固有名詞で取り上げることが大切です。友だちの発言をちゃんと聞いていなければ、思い出せないので聞くことを意識させることができます。覚えている子どもがいれば、発言させてから本人に確認します。もしいなければ、「○○さん、もう一度聞かせてくれる。みんなしっかり聞こうね」と本人に再度発言させます。ここからつなぐことを始めればよいのです。他の発言とつなげるのであれば、「今の○○さんの意見と似た意見があったけれど、誰の意見だったか覚えている?」「似た意見を言った人はいた?」と問い返すことで、聞くことを意識させます。
このようにして、発言することから聞くことに価値の比重を移していくのです。

子どもたちは発言したい気持ちが強いため、初めはなかなか友だちの発言を落ち着いて聞くことができません。そのような場合は、とりあえず発言させることで、発言したい気持ちを満足させましょう。その上で子ども同士の発言をつないで、友だちの発言を聞き、かかわりながら考えを深めることを経験させます。しっかり聞くことが活躍のチャンスを増やすと知ることで聞く姿勢が育ち、一つひとつの発言をその場でつないでも、発言したい気持ちを抑えてきちんとかかわれるようになるのです。
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