数学(統計)で大切にしたい活動

新しい指導要領では、資料の活用の領域で統計に関することが増えています。大切にしてほしいのが、できるだけ具体的な例で、統計の持つ意味を考えるような活動です。

離散量のデータから度数分布を作る活動を考えてみましょう。階級の幅を変えるだけで見え方が変わります。意図的に幅を操作することで、資料から受ける印象を変えることができます。もちろん度数分布表やグラフにすることで気づくこともたくさんあります。表・グラフを作る作業や計算だけでなく、その結果から何を読み取るかという活動を大切にしてほしいと思います。

代表値では、一般的に平均が重要視されています。しかし、平均はデータの一面しか表しません。平均の近くにはデータが存在しなかったり、ほとんどのデータが平均以下だったりすることはよくあります。同じ値を平均に持つ資料でも、その分布の様子が驚くほど異なることも珍しくありません。最頻値(モード)や中央値(メディアン)といった他の代表値でも同様です。それぞれが持つ意味や特徴を理解するような活動が必要になります。いくつかの代表値から他の代表値(たとえば平均と中央値から最頻値)を予想する。代表値がどの度数分布のものか考える。度数分布をもとに代表値を予想する。代表値を使って資料の特徴を説明する。このような活動が求められます。

標本調査で大切なことは、母集団の傾向を知るためには、母集団の数に対してそれほど多くの標本数が必要ないこと、無作為抽出であることです。前者の論理的な裏付けは中学では難しいので、疑似的に標本調査をすることで実感してもらうしかありません。そこで威力を発揮するのがコンピュータです。膨大な数のデータを扱うことができるので、標本数をいろいろ変えて疑似的に調査をすることができます。その結果から、標本数とその精度の関係に気づくことができるはずです。
無作為抽出に関していえば、無作為であることの大切さを実感させる必要があるでしょう。最近ではインターネットでの標本調査が増えています。その場合、インターネットを使った調査であることを明記するのが常識化しています。インターネットの利用は世代差が大きいからです。選挙や政治関する調査は電話を利用したものが多いのですが、これも「電話を利用した」無作為抽出であることをことわっています。調査の電話に出ることのできる人は、ある傾向を持っている可能性があるからです。身近なところでは、子どもの言う「みんな」です。「みんな○○している」といっても、「だれが」と聞けば自分に都合のいい友だちの名前しかあがりません。これなどは無作為でない典型ですね。標本調査では、その調査方法を必ず明確にする必要性があることを実感させてほしいと思います。

統計は数学の中でも特に身近に感じることできる領域です。できるだけ、現実感のある、実生活と結びつくような活動を意識してほしいと思います。
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