小学校でICT活用研究の打ち合わせ

昨日は、ICTを活用の研究発表を来年度予定している小学校で打合せをおこなってきました。
ICTが前面に出るのではなく、積極的に学ぶ子の育成をねらいとして、その上でICTを効果的な場面で利用するという方向で考えたい。そのためには、授業の流し、指名の仕方、ことばかけといった授業の基本的な考え方をまずはしっかり押さえたいということでした。この研究を機会に先生方の授業力の底上げをはかりたいという思いがよく伝わりました。

来年4月からよいスタートを切るためにも3学期中に動き始めることが必要です。先生方が学びあえる環境をつくること、特に研究を通じて一人ひとりが成長できる実感をもてるような仕組みをつくることが大切です。実はこの学校は今年の2月の愛される学校づくりフォーラムで国語の提案授業をおこなった授業者の学校です。事前の模擬授業での先生方の熱心な姿を思い出しました(授業づくりへの思いにあふれた模擬授業参照)。この先生方なら、研究授業をただおこなうのではなく、事前の指導案検討や模擬授業を通じてみんなで授業をつくることができるはずです。先生方が学び合う姿を想像して、わくわくしてきました。
この学校が目指す子どもの姿を抽象的な言葉で終わらせずに、具体的な姿で共有するためにどのような方法があるかについてもお話しました。授業で見られた目指す子どもたちの姿を写真に撮って、それをホームページや印刷物で共有する。授業研究では、互いに見つけた目指す子どもの姿を伝え合う。いろいろと工夫をして挑戦してほしいと思います。
どれほどのお手伝いができるかわかりませんが、この学校の先生方の持つよい資質を活かせればと思っています。

今年度異動になったあの提案授業の授業者が、この日の午後にこの学校で開かれる研究会の発表者になっていました。提案授業を通じて学んだことを参加者に伝えるということです。フォーラムでの取り組みをきっかけにこのように活躍してくれていることは、かかわった私にとっても誇らしいことです。
うれしいことに、私がこの日訪問することを聞いてその先生が早目にやってきてくれました。校長と3人で昼食をいただきました。あれからもたゆまずよい授業をしようと頑張っていることが言葉の端々から伝わります。授業で課題としていることが自然と会話の中にでてくるのです。私のちょっとしたアドバイスに対して、すぐに「やってみます」と前向きに受け止めてくれます。この先生がめきめき力をつけている理由がよくわかります。
とても楽しい時間を過ごすことができました。ぜひまたどこかで授業を見せていただきたいとお願いをしました。

お二人の先生から、たくさんの元気をいただけた1日でした。ありがとうございました。

教師力アップセミナーの講師選定会議

先日、来年度の教師力アップセミナーの講師選定会議をおこないました。先生方に多くを学んでいただけるような講師陣を目指して、現在講演依頼を進めています。2月には詳細をお知らせできる予定です。

講師選定に当たって話題となったのが、教材研究において先生方が教科書をしっかり理解していないということでした。極端に言うと教科で子どもたちに学ばせることは何かわかっていないのです。具体的な授業場面で、教科書の意図や単元のポイントを伝えれば理解してはもらえるのですが、新たな単元になればまた同じことの繰り返しとなってしまいます。根本的な解決が難しいのです。このことを意識して、今年度鈴木明裕先生に「算数・数学での教科書の使い方と役割」についてお話をいただきました(鈴木明裕先生から学ぶ参照)。お話の中の具体例はよくわかっていただけたようですが、では他の単元・教材ではどうかというと、これがなかなか広がってはいかないようです。教科の基本となる力をつけるということは、講演を聞いてすぐにとはいかないということです。とはいえ、何とかしていかなければならないことには違いありません。日々教師としてどのように教科書や教材と向かい合うか、どのような視点で授業を組み立てるか。こういったことも重要になってきます。授業づくりで大切にすべき視点を意識していくと、教科書の内容や教科の目指すところも意識せざるを得ないからです。

来年度はここにスポットを当て、授業づくり、教材研究のポイント、授業への心構えについてお話しいただける講師をお呼びする予定です。どなたかは詳細発表までお待ちください。決して期待を裏切らないはずです。
2月には充実した講師陣を発表できることと思います。ご期待ください。

教師が育つ環境づくりについて講演

先日、校長会の研修会で「教師が育つ環境づくり」について講演をおこないました。今年の1月に続いてこの地区では2回目となります。リピートしていただけることはとてもうれしいことです。

学校において校長の発信はとても大切です。外向きと見えるような学校ホームページなどの発信も、内向きを意識することで先生方に対して大きな影響を与えることができます。授業の具体的な場面を取り上げて、よかったところをコメントする。目指す姿が具体的に現れている場面を取り上げてその意図を説明する。このようにすることで、先生方にも目指すところがよくわかりますし、外部の方も学校でこのような場面を目にすることを期待するようになります。外部の目が先生方にとってよいプレッシャーとなります。
そのためには、校長が目指す姿を具体的にしていなければなりません。漫然と授業を見て、その光景を発信していても何も伝わりません。学校の風景から目指す姿、目指す姿につながる場面を切り取る力が求められます。また、時間があれば校内のようすを観察し、校長が授業をのぞいても誰も気にしない。そういう雰囲気をつくる必要もあります。常によいところを見つけて発信することで、先生方の見られることへの抵抗感を減らすことも大切です。

教師が育つには、当たり前のことですが、指導と評価が大切になります。子どもと同じです。若手教師は積極的な指導がなければなかなか育ちません。ここで大切になるのは、目指す授業の姿や学級像がどのようなものかがしっかりと共有されていなければならないことです。ここがずれていれば話の根本が崩れてしまいます。まずはどのような子どもの姿を目指しているのか問いかけることから始める必要があります。その上で具体的な子どもの姿をもとに、何をすればよいのかをしっかり伝えることが必要です。指導した後に変化したかどうかの評価も大切です。変化することで結果出ればもちろんですが、すぐによい結果が出るとは限りません。意欲をなくさせないためにも、変化したということ、時には変化しようと意識をしただけでもほめることが必要です。ほめる方法も、直接ほめるだけでなく、教務主任等を通じて間接的にほめる、ホームページ等を使って発信するなどの使い分けが重要です。間接的にほめることは間に入った方との人間関係をつくることにもつながります。発信することは他から認められることにつながります。また、授業者との人間関係ができてくることで、校長が直接介入して授業を修正することができるようになった例もお話しました。

互いに学びあう風土づくりも大切になります。授業を見ない、見せないという相互不可侵の関係をつくっている学校を数多く見ます。その壁を打壊すことが大切になります。授業検討会を一部の人の意見や形式的な賛辞で終わるものから、全員が参加できる、何よりも授業者がやってよかったと思えるものに変え、学び合うことのよさを実感させる必要があります。
そのために教務主任が果たす役割はとても大きいものです。共に考え、時には自らがやって見せ、うまくできれば一緒になって喜ぶ、同じ仲間として寄りそう同僚性。つねによいところを見つけようとし、ポジティブに評価する機会をつくる姿勢。よいところをみんなに伝え、一緒に考える仲間をつくるという教師同士をつなぐ姿勢。教務主任の姿勢が先生同士の関係をよくすることにつながり、学びあう風土をつくりあげていきます。
このような教務主任を育てることも校長の仕事です。校長が指導する姿を見せて背中で教えたり、活躍させてみんなに認められる場面をつくったりすることが大切です。教務主任にも成功体験が必要です。機会を与え指導し、そしてほめる。この当たり前のことがやはり大切なのです。

この他にも、最近の若い教師の傾向やベテランが変わるきっかけについて具体例をもとに話させていただきました。

皆さん非常に熱心で、うなずいたりメモを取ったりととてもよく反応していただけました。先生方のようすから、どの学校もそれぞれの課題を持っておられることが伝わってきます。私の話が学校経営に少しでもお役に立てば幸いです。

学校評議員会で考える

昨日は中学校の学校評議員会に参加しました。

今年度の状況と次年度への取り組みについて、学校公開時の保護者アンケート、学習状況調査結果についての報告を学校から受け、それをもとに話し合いました。学校が劇的に変わっているわけではありませんが、いろいろなデータや皆さんの感想から少しずつですが学校の取り組みが前へ進んでいることがよくわかります。毎年取り組みがコロコロ変わるのではなく、目指すところをぶれささずに時間をかけて達成へ向かって努力することは大切です。しかし、毎年うかがう課題が大きく変わっていないことは少し気になります。今までの取り組みの延長線上では課題を解決することが簡単ではないということです。コツコツ続けて成果を出していることは評価できますが、新しい仕掛け、仕組みを考えなければいけない時が来ているようにも思います。

保護者へのアンケートは2回の学校公開日にとったものを提示していただきました。子どものようすや教師の授業への取り組みが質問項目となっていましたが、このデータの変化だけではコメントがしづらいものでした。同じ項目を子どもから見たアンケートと比較しないと、子どものようすや教師の取り組みが変化したのか、保護者の見方が変化したのかといったことがよくわからないからです。この点については検討をお願いしました。

また豊かな心を育てる教育の一環として外部の講演やいろいろな行事が検討されています。日々の実践の充実も示されていました。ただ、学校全体、学年、学級担任、教科担任、それぞれの取り組みをどうつなげていくのかがあまり明確ではありませんでした。もちろん個々に意識はされているのでしょうが、全体計画の中でしっかり明文化して位置づけて置くことが必要だと思います。時間をかけ、いろいろな視点や立場から子どもの心を耕し続けてほしいと思います。

全国学習状況調査の質問は、経年変化を見るためにほぼ固定されています。しかし、学校独自の課題や時代の変化に対応して調査内容を追加することも考える必要が出てきていると思います。携帯電話に関する項目も今後子どもたちへのスマホの普及に伴いLINEのような新しいツールに対応する必要があります。
また、読書について面白い結果が出ていました。読書の好きな生徒は70%ですが、60%近くの生徒が全く読書しないというのです。これは矛盾しています。読書より楽しいものに時間を奪われているのか、そもそも子どもたちは時間がないのか。きちんと調べずに読書指導の在り方を考えてもあまり意味がありません。
何を知るのか、次の取り組みにどう活かすのか学校としてのねらいを意識して、独自の調査を追加することを考えてほしいと思います。
校長が変わり、学校の目標もよりシャープになってきたと感じます。であれば、その目標がどう達成されているかを知る指標もより明確にできるはずです。目標達成の指標を具体的にして共有していくことが、個々の先生方の取り組みをよりよいものに変えていくきっかけになると思います。

最後に不登校について、ひとしきり話題になりました。この学校でもそうですが、一度不登校になると再び学校に出てこられるようになることは難しい傾向にあります。そのため、不登校の初期に学校に出てこられるように強く働きかける傾向にあります。しかし、根本的な原因を見つけ解決するための動きも合わせておこなわなければ、結局いつかは破たんしてしまいます。その原因は多様で、学校で解決できることは稀です。だからこそ、子どもたちを支える多様な人、場所、機関が必要だと思います。孤立して苦しんでいる保護者の実態が評議委員からも報告されました。地域の施設が保護者の悩みの受け皿になっていることも聞かせていただきました。不登校といった切り出しにくい問題も学校がオープンにしてくれることで、互いに実態を共有し考えを深めることができたように思います。すぐに解決できる問題ではありませんが、子どもたちを支えるよりよい環境づくりにつながることだと思います。

この日も学校からのごまかしのない情報提供のおかげで、多くのことを考えるきっかけをいただけました。いつものように学校をよくしたい、子どもたちによりよい成長の場を提供したいという地域の方々の思いが伝わってくる会でした。このような学校にかかわらせていただけることに感謝するとともに、少しでもお役に立てればと思いをあらたにしました。

愛される学校づくり研究会に参加

先週末は愛される学校づくり研究会に参加してきました。
前半は、先月研究発表をした小学校(研究発表会で学校の変化から学ぶ参照)の教頭から、研究を通じて学んだことをお話しいただきました。
後半は、「愛される学校づくりフォーラム2013 in東京」での「劇で伝える校務の情報化」のシナリオの打ち合わせでした。

前半のお話は、苦しんだ研究の前半とそこからどのようにして学校が変わった(変えていった)のかについて、本音のところを聞くことができました。著名な外部指導者を招いても、日々の実践の中で自分たちがなすべきことを意識して行動しなければよい方向には変わっていきません。自身の学びとして3つのことを挙げられました。

・継続は力なり(愚直な取り組み)
・まわりがいきて自分もいきる
・「責任と覚悟」、そのためにすべきこと

その中でも、最後の1つが特に私には印象的でした。この1年間たくさんのことを愚直に積み重ねてきたこと思います。いくつかのことは発表会での学校のようすから想像できましたが、その時には気づけなかった教頭の地道な取り組みを今回知ることができました。それは、研究の手立て、授業改善のようすを見える化し共有化することでした。具体的には毎日のように教室をまわり、視点を絞ってよさと課題をコメントし、その場面の写真と合わせて紙面化して全員に配布したことです。他の会員が現場にいたときにおこなっていた「授業拝見」という取り組みを参考にされたとのことでした。参加していたその会員は、今回の話を聞いて「自分の取り組みはまだまだ甘かった」とコメントされていました。互いに刺激し合い学び合うこの会のよさをあらためて感じました。
この学校のように、著名な外部指導者がかかわった場合、どうしてもその方の指導力や影響力に目がいきますが、学校のトップやリーダー、関係者がどう動いたかに注目することも大切です。日々何を実践してきたかが問われるのです。この研究を陰で支えてきた指導主事からも別の視点でこの学校に起こったことを伝えていただきました。今回あらためていろいろな視点で話を聞くことで、この学校が大きく変化したその原動力を知ることができました。会終了後もメーリングリストでこの学校の取り組みについての情報が行きかっています。それだけ学べることが多かったということです。
研究の発表が終わったあとがその真価を問われるところです。この学校の今後を研究会の仲間とともに注目し続けたいと思います。

後半は、グループごとに座長の作ったシナリオをもとに、細かい打ち合わせをおこないました。1時間余りの打合せの後、とりあえずの発表をグループごとにおこないました。どのグループもかなりの完成度です。シナリオもそうですが、役者のレベルの高さに圧倒されます。本番までにどのように仕上がってくるかとても楽しみです。当日は、面白い寸劇を見ながら、校務の情報化のポイントについてしっかりと考える場になると思います。

ありがたいことに、フォーラムの申込みは昨年度以上に順調のようです。参加を予定されている方はお早目の申込みをお願いします。

この日も、多くの仲間からたくさんのことを学ぶことができました。充実した時間を過ごせたことに感謝です。

子どもたちの集中力に感動

昨日は中学校で授業参観をおこなってきました。各学年の先生とそれぞれの学年の子どものようすを観察しました。

1年生は、前回訪問時と比べると集中力が戻ってきていました。子ども同士の人間関係もよくなってきたように感じます。合唱大会がよい方向に作用したようです。しかし、授業者によって見せる姿は異なっています。子どもたちの反応を待つ、子どもたちの言葉をつなぐようにすればしっかりと集中して参加する子どもたちですが、すぐに教師が説明をする、子どもたちへの確認をせずに一方的に話をすると、すぐに集中力が切れてしまいます。とはいえ、子どもたちは授業を乱すような行動はとりません。授業者は子どもたちの集中力が切れていることに気づかないようです。指示をしたときも、少し待てば全員きちんとできるのですが、それを待たずに進んでしまいます。このようなことが続けば、授業者と子どもたちの信頼関係が崩れていきます。教師によって子どもたちが見せる姿の差が広がっていくことが心配です。

2年生も似た傾向にあります。子どもの反応を待つ、反応を受け止めることをしている授業では子どもはしっかりと集中できています。しかし、教師が一方的に説明する授業では子どもの集中力が続きません。子どもたちが静かにしていることができるので、つい教師がしゃべりすぎているように感じます。そういう授業では、子どもが理解したかどうかの確認をしないまま先に進む傾向が見られます。子どもの発言、子どもとのやり取りが圧倒的に少ないのです。

両学年とも、一言でいえば「もったいない」でした。子どもたちは教師が求めればそれに応える力を十分に持っています。しかし、教師が求めなければ、そのよい姿を子どもは見せてはくれません。目指す子どもの姿が明確でなかったり、教師によってずれてしまったりしているのかもしれません。
同行した先生方は、この傾向に気づいておられました。この問題を個人の力量の問題ではなく、学年の問題としてどうとらえて対処していただけるのか、今後を見守りたいと思います。

3年生のようすはとても素晴らしいものでした。どの教室も子どもたちの集中力は半端ありません。わかりたいという意欲が廊下にいてもひしひしと感じます。受験が近づいていることもあるでしょうが、それにしても並大抵ではありません。しかもその集中は決してピリピリしたものではありません。柔らかい雰囲気で、表情も穏やかです。笑顔も3学年で一番たくさん見ることができました。
興味深い場面もたくさんありました。一つは教師が説明しているときに子どもが鉛筆を持って板書を写したりメモを取ったりしている場面です。これは授業の原則からいって好ましいことでありません。書くことに意識が行って、聞くことがおろそかになるからです。しかし、子どもたちは聞くこともきちんとできています。それは、書くリズムからわかります。一定リズムではなく、教師の話の合間を縫って素早く書いているのです。本当に集中していることがよくわかります。同行した先生方の授業でも、子どもたちが集中するので、通常よりも多くの内容を1時限でこなすことができるとのことでした。
また、教師がプリントを見ながら淡々と解説をしている場面がありました。子どもが理解できたか確認をしていくことが必要な場面ですが、それをしていません。○をつけたり、間違いを訂正したりするだけの作業になってしまうところです。ところが、子どもたちは隣同士で聞きあったりして、自分たちで確認し合っているのです。これをわかっていて、子どもを見ずに確認もしないで進めているのならその教師の力はすごいものです。そうであるかどうかは別にして、子どもたちは、私の想像を軽々と超えた姿を見せてくれました。高校生や大学生でもなかなか見ることのできない姿だと思います。互いに支え合えながら中学生活の最後を乗り切っていくことと思います。
とはいえ、このようなよい雰囲気に支えられて何とか頑張れている子どもも少なからずいるはずです。彼らは、ちょっとしたつまずきでバランスを崩し、ついていけなくなります。学校では友だちに支えられて頑張れても、家では不安につぶされそうなってしまう子どももいます。学級の雰囲気がよい状態だからこそ、そういう細かいところにも気をつけてほしいことを老婆心ながら伝えました。

授業参観後、教務主任、研修担当の先生とお話をさせていただきました。
3年生の素晴らしい姿はどのようにしてつくられたのか、そのことをきちんと分析して再現性のあるものしていく必要があることが話題となりました。今年の4月、5月は授業者や学級間の差があったのが、今はまったくと言っていいほど感じられません。この間のことをきちんと振り返ってみることが必要でしょう。今の時点で言えそうなことに、3年間かけて育ててきたことと、目指す姿を意識して子どもたちをしっかりと見る、受け止める先生が3年生の担当に多いことがあります。私の感覚ですが、中学校では、子どもを育てる力のある先生が学年で3割を超すと子どもたちがとてもよい状態になります。5割を超すと、どの授業でも子どもの姿は乱れません。育てた時間とこの割合の差が1、2年生と3年生の違いなのかもしれません。

1年の最後に素晴らしい子どもの姿を見ることができて、本当に楽しい時間を過ごすことができました。この子どもたちを育てた先生方に称賛の拍手を送りたいと思います。このような学校にかかわらせていただいていることにあらためて感謝です。

授業参観と打ち合わせ

昨日は、中学校で授業参観と研修の進め方についての打ち合わせをおこなってきました。学び合いを中心とした学校づくりを進めていて、2年間の研究指定も受けている学校です。教え込みの一斉授業からの脱却を目指しているとのことでした。

この日は、午前中3時間を使って授業での全学年の子どもたちのようすを見せていただきました。
4人グループでの活動や、子ども同士の教え合いを意識して取り入れていますが、気になったのがそういう子ども同士のかかわり合いと、教師と子どものかかわり合いのギャップでした。教師が学級全体に対して指導している場面は、教師が一方的に話す時間が多い、従来型の授業との差が見えにくいものでした。子どもの言葉がつながらない1問1答のやり取りが目立ちます。子どもから期待する言葉が出てくると、すかさず教師がそれを拾い説明を始めてしまう場面を多く見ました。子どもたちの発言に対して、教師の発言が圧倒的に多いのです。
子どもが教師や友だちの話を聞く姿勢もあまりよくありません。教師が子どもの言葉をしっかり受け止めて、ポジティブに評価する場面にもほとんど出会いませんでした。教師の聞く姿勢が子どもの聞く姿勢にも表れているように感じました。
指示も多く、子どもが受け身になる時間が多いことも気になります。生活指導的な問題が多かったのでしょうか、先生方が子どもたちを緩めることを怖がっているようにも見えます。

グループ活動での課題も気になります。調べて書き出す、教科書の問題を解くといったものが多く、考える過程を重視するような学び合いを活かすものになってはいません。課題の質の影響もあるのですが、グループ活動での子どもたちのテンションはすぐに上がっていきます。聞き合うというより、わかった子どもが中心となって教えているように見えます。
グループ活動の後の発表場面でも、教師が自分にとって都合のよい部分だけを取り上げるので、子どもたちは自分たちが話し合ったことに対して価値を見出せていないように感じます。教師の説明を聞いてワークシートの穴が埋まればそれで困らないのです。グループ活動は受け身の時間の代償としての、息抜きの時間になっているのかもしれません。
また、先生方は試験に出るような知識を押さえておかなければいけないというプレッシャーを感じているようにも見えます。グループ活動で時間を使う分効率的に教えなければと、子どもとやり取りする時間も取らずに何かに急き立てられるようにどんどん進める場面も目にしました。

子どもたちは決して悪い状態だとは思いません。子どもたちに笑顔で接する先生、子どもをポジティブに評価する先生の授業ではとてもよい表情を見せてくれます。教師の姿勢をよく反映する、ある意味とても素直な子どもたちです。
先生方は、学び合いで目指すものと従来の授業観のギャップを埋めきれないまま、取り敢えず形だけを追っているように思いました。
この市では、学び合いを教育委員会のトップダウンでおこなってきました。先生方はその目指すものを自分のものとして消化する時間のないまま、指示されてきたことをやってきたのかもしれません。トップも変わり、自分たちの目指す子どもの姿は何かをもう一度振り返る時期が来ているのだと思います。そういう意味では、この学校の今後の変化はこの市の次のステップを示してくれるのかもしれません。

午後は、校長、教頭、主幹、教務主任、校務主任それに現職教育の担当者を交え、この日私が感じたことを率直に伝えました。私の厳しい言葉にも真摯に耳を傾けていただけ、先生方の授業改善に対する強い意志を感じました。形を追っているという私の言葉に対して、何を目指して取り組もうとしたのか、その思いをしっかりと語ってくださいました。このような思いを聞くことができれば、私もお役に立てることが出てきます。この学校にかかわる意欲がわいてきました。

・自分たちの目指す子どもの姿を具体的にしてほしい。
・そのためには、互いに授業を見合い、具体的な子どもの姿を共有して話し合う機会をつくってほしい。
・授業において、子ども同士の関係をつくる以前に、まず教師と子どもの関係をしっかりつくることが必要である。
・そのためにも、教師が子どもに外化を求め、笑顔で受け止め、ポジティブに評価してほしい。
・子どもも教師も聞く力をつけてほしい。
・そのためには、まず教師が子どもの言葉をしっかり聞き、受け止めることが必要である。これは、人間関係をつくることにもつながる。
・従来型の知識伝授に縛られないこと、知識を押さえなければというプレッシャーから解放されることが必要である。教えなければできるようにならないという思い込みを捨て、肩の力を少し抜いて、子どもたちの力を信じてほしい。
・そのためには、何を課題とすればこの時間の目標が達成できるかをしっかり教材研究することが必要である。考える過程で必要な知識を身につけるような課題を目指してほしい。
・グループ活動での教師の動き方、子どもの発言のつなぎ方といった、基本的な授業技術を身につけてほしい。
・そのためにも、具体的な授業場面をもとにどうすればよいのか考える機会をつくってほしい。

このようなことを話させていただきました。

年明けに2回訪問させていただく予定です。先生方とどのようにかかわっていけばよいのか、まだまだ自分の中で明確になっていません。しかし、前向きな管理職やリーダーの方と協力することで、きっとよい方向に進んでいくと信じています。私にとっても大きな学びにつながる出会いだと思います。このような機会を得たことを感謝します。

「愛される学校づくりフォーラム2013 in 東京」会場下見

先週末に、「愛される学校づくりフォーラム2013 in 東京」の会場の下見に参加しました。今回は東京ビッグサイトの会議場で行います。300人以上の観客を見込んでのフォーラムです。会場の決定や折衝を始め、パンフレット作成や申込みの受付、当日の運営など、中心となる愛される学校づくり研究会の事務局の仕事は大変なものです。事務局がしっかりしているからこそ、私たち出演者は安心して自分の役割に専念できるのです。

今回は、午前には劇仕立ての校務の情報化の紹介、午後には有田和正先生と佐藤正寿先生の模擬授業と、新しい試みがたくさんあります。事務局にとっては会場との打ち合わせはいつも以上に入念に行う必要があります。打ち合わせに立ち会わせていただいて、事務局の仕事の大変さをあらためて実感しました。この事務局があるからこそ、参加者の皆さんに満足いただけるフォーラムを毎年開催できるのです。

今年も昨年以上に面白くかつ学びの多いフォーラムを目指して、愛される学校づくり研究会の会員一同、張り切って準備をしています。フォーラムの詳細発表と参加申込みは間もなく開始の予定です。開始しだい、愛される学校づくり研究会のホームページで(もちろんこの日記でも)お知らせします。今回もすぐに定員に達する見込みです。早めの申し込みをお勧めします。

中学校で授業アドバイス

昨日は中学校で数学の授業アドバイスをおこなってきました。2年生の外角の和です。

授業者は子どもをつなごうとはしていますが、つながったかどうかは意識していませんでした。子どもに説明させた後、正解かどうかを言わずに「これでいい?」「納得した人?」と問い返します。よい対応ですが、「いい」という声や子どもたちの挙手が有れば、それで次に進めてしまいます。これでは1問1答と同じことです。問い返すだけでは子どもがつながってはいきません。他の子どもを何人か指名して確認する。手が挙がらなかった子どもに納得できないことや困っていることをたずね、困っていることを共有して解決する。つながっているかを確認し、つなげるための次の手立てが必要になります。
友だちの説明に納得した子どもを指名して、もう一度説明させる場面がありました。指名された子どもは怪訝な表情で「同じことだけど・・・」ともう一度説明することに納得できないようすでした。「自分はわかったからいい」「わからないからダメだ」。そんな価値観が教室の中にあるように感じます。自分の説明で友だちに納得してもらう。友だちの発言を聞いてわかる。授業の中でこういう経験を積み重ね、一人ひとりが自己有用感を持つことが大切です。何を評価するかを意識して、子どもたちの価値観を変えていくことが求められます。「○○さんの説明でわかった人がこんなに増えたね」と正解したことではなく、友だちにわかってもらえたことを評価する。「○○さんの説明で納得したんだ。いいね。じゃあ、あなたの言葉でもういちど説明してくれるかな」と友だちの説明を聞いてわかったことを評価し活躍の場面を与える。こういう働きかけが必要になるのです。

三角形の外角の和が180°になることの説明を少し考えさせた後、「ひらめいた人いる?」とたずねました。パラパラと手が挙がりました。そこで授業者は「ひらめかなった人にはヒントをあげる」と説明を始めました。どうでしょう。数学はひらめかなければ解けない教科なのでしょうか。中学や高校の数学でひらめかなければ解けないような問題はまずありません。解くための考え方をきちんと身につければ、解けるようになるはずです。この場面であれば、「外角ってなんだっけ?」「今、外角についてわかっていることは何?」「三角形ついてどんなことを知っている?」「何が言えればいいんだっけ?」と子どもたち問いかけることで、既習の知識を整理し、それをもとに演繹的に考え、結論にたどりつくような活動が求められます。この他にも、帰納的に考えることや今までに使った考え方をもとに解いていくなど場面に応じた経験を積んでいくことが必要になります。解くための方法、アプローチを意識して課題に取り組ませることで数学的な思考力を身につけさせることが大切です。子どもたちに、「ひらめかなければ解けない」と感じさせるのではなく、「考え方を身につければ解けるのだ」と実感させるようにしてほしいと思います。
そのためには、ノートや板書に思考の過程が残るようにすることも大切です。なぜ最初にこのような式が出てきたのか、なぜ内角の和をここで考えるのかといったことが書かれていなければ、後から思考をたどることができません。残念ながら板書にも子どもたちのノートにも結論・結果だけで思考の過程は残っていませんでした。これも課題です。

ほとんどの子どもがわかったと手を挙げた後、「だいたい大丈夫そうだね」と練習問題に取り組む場面がありました。授業者は手の挙がらなかった子どもは机間指導でフォローするつもりだったそうですが、そのことを子どもには伝えていません。これでは、手の挙がらなかった子どもは、自分は見捨てられたと思ってしまいます。
最後の確認場面で、低位の子どもを指名しました。何人か同じような問題を答えた後なのできっと大丈夫と思ってのことです。ところが、答えることができません。そこで、「助けてくれる」と他の子どもとつなごうとしました。ところが、代わりの子どもが答えを言って終わってしまったのです。これでは助けたことになりません。肝心の応えられなかった子どもの状況は何も変わっていないのです。本人が自分で答えることが大切です。そうすることで初めて助けてもらったといえるのです。「ちゃんと聞いて答えてくれたね。ありがとう。助けてもらってよかったね」「助けてくれてありがとう」と2人をほめることもできるのです。
次の手立てがなかったり、おかしかったりしたため、結果として授業者の意図は達成できなかったのです。

子ども同士をつなごう、多くの子どもを活躍させたい。目指すところは決して間違っていません。しかし、そのための技術を断片的にしか理解していないために、結果はおかしなことになってしまっています。
授業後、一つひとつの場面を例に、できるだけ具体的に説明しました。真剣にかつ素直に聞いてくれました。とてもよい姿勢でした。一度に大きく変わることは難しいことです。時間はかかるかもしれませんが、どこか一つの場面でも変えることができれば、それをきっかけに変化していくことと思います。この日の授業がきっかけとなってよい方向へ変化してくれることを期待します。
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