私立小学校から学ぶ

昨日は私立の小学校でお話しをうかがってきました。幼稚園から高校・大学まで併設している総合学園です。

子どもたちの目に見える学力だけではなく、目に見えない学力、学ぶための基本となる力をつけることを大切にされている学校です。そのために、子ども同士の学びあいを進め、教師の聞く姿勢を大事にされています。また、年に1度全教員が授業公開するなど先生同士の学び合いにも積極的です。
ICTの活用にも積極的ですが、いかにもICTを使っていますという利用の仕方ではなく、教科書を黒板に拡大して写すといった、そのよさが生きるところで気軽に使うものとなっています。
お話ししていて感じたのは、こういった試みが無理なく自然におこなわれていることです。急激に変化するのではなく、日々の活動の中で着実にレベルアップしているということです。教員の異動を考えると、ある程度限られた時間で結果を出していかなければいけない公立校と違い、じっくりと取り組める私立のよさをそこに感じました。

また、幼小連携、小中連携にしっかり取り組むことで、小1プロブレム、中1プロブレムにも積極的に対応されています。
また、各校種ごとにそれぞれの教育活動をおこなっていたのを学園全体としてより一貫性のあるものにしようというプロジェクトも進んでいるようです。

私が考えているこれからの学校経営に大切なことの多くを実践されている学校でした。大変多くのことを学べました。感謝です。

子どもとの人間関係がベース

昨日は中学校で授業アドバイスを行ってきました。久しぶりの訪問でしたが、若手の授業が本当に進化していました。

特によくなったなと感じる先生に共通していることは、教科の力がついてきたということです。教材研究がしっかりとできていて、発問や進め方に工夫がされていました。しかし、同じ指導案で授業をすれば誰しもうまくいくわけではありません。ちょっとした子どものつぶやきをきちんと拾う。子どもの発言をきちんと受け止め、他の子どもにつないでいく。こういったことがきちんとできているからこそ、教材研究も活きてくるのです。

もう一つ共通して感じたのは、子どもを受容する言葉や表情がとても自然になっていたことです。以前は、受容的な言葉を言わなくちゃ、笑顔をつくらなければ、というぎこちなさがあったのですが、それがまったくと言っていいほど感じられなくなっていました。いつも意識して授業をしているので、すっかり自然になったのでしょう。その結果、子どもたちとの人間関係が非常によくなっていました。教師が子どもをしっかり受け止めれば、子どもたちも真剣に授業に参加してくれます。こういう状態であれば、授業の成否は、発問や展開をどうするかという教材研究にかかってきます。教科の力が自然についてくるようになるのです。

若い先生は、教科力、授業スキル等たくさんのことを一から身につけなければいけません。あれもできない、これもダメだと毎日失敗の連続で苦しむことと思います。まずは子どもとの人間関係をつくることから始めてほしいと思います。これができれば、自然に授業はうまくなっていきます。このことを再確認させていただきました。若い先生の成長を見ることで、とても楽しい時間を過ごすことができました。

生徒の授業アンケートから考える

昨日は中学校の現職教育全体会に参加しました。

メインとなったのは、生徒からとった授業アンケートの結果をもとしたグループでの話し合いでした。
アンケート結果で印象的だったのは、「仲間と一緒に活動すると、楽しく学習できる」に肯定的な生徒が80%を超えているのに、「仲間の考えを聞くのが楽しい」が70%程度、「自分の考えを仲間に聞いてもらうことが楽しい」が60%程度と相対的に低いことです。
このことについて話し合われたグループが多かったのですが、その視点が非常に多様であったことを大変面白く思いました。

・子ども同士が本音で話せないといった、「人間関係」の問題
・子どもがうまく話せない、聞く姿勢ができていないといった、「コミュニケーションスキル」の問題
・話し合うテーマ、問題のレベルといった、「教材・課題」の問題
・自分の考えを持てていないので、人の話も聞けない。自分の考えを持たせる時間を与える必要があるといった、「授業技術」の問題

同じ生徒を見ていて、同じデータを見てもこのようにいろいろなとらえ方が出てくるのです。どれが正しい、正しくないということはありません。今の時点でそれを判断する材料もなければ意味もありません。先生方がアンケートという子どもからのメッセージを受けて、その原因や対策を考えたことが大切なのです。
互いの考えを共有化し、自分たちの立てた仮設のもとに授業を改善していく。その結果、子どもたちにどのような変化が起きるかをしっかりと見て、また次の改善を考える。こうして学校全体の授業がレベルアップしていきます。今回のアンケートがこの学校の授業のさらなる進化のきっかけになると思いました。

誰かが子どもとつながる

昨日は、私立の中高一貫校のお話しを伺ってきました。生徒と教師のコミュニケーションを大切にしている学校です。

面接の充実はもちろんのこと、行事等いろいろな機会をとらえて子どもたちとコンタクトをとるように努めています。いわゆる能力別学級編成をしているので、横のつながりが薄くなりがちなので行事も大切にしています。また、学年で生徒の様子について話し合う機会をたくさん持っています。気になる生徒に関しては、担任にこだわらず、教科担任、養護教諭、部活動の顧問…、誰かがつながっている体制をつくろうとしています。

実は先日授業の様子を外から見せていただいた時に、うまく授業に参加できていない生徒が少し気なったのですが、そういう生徒に対しても、個別にフォローしているので大きな問題になっていなかったようです。学校の中で誰かが受け皿になることは、学校の中に居場所があるということです。このことの大切さを改めて考えさせられました。

送辞・答辞の読み方指導

先週末は、中学校で送辞・答辞の指導に参加しました。プロのアナウンサーにお願いして読み方を具体的に指導していただくのです。

アナウンサーの指導というと、発音や抑揚などの技術的な指導が中心になると思いがちですが、もっと根本的なところから指導されます。
文章全体を通じて一番伝えたいところはどこであるか。何を伝えたいのかを生徒に意識させます。その上でどう読むのかを考えさせます。
生徒たちは事前にしっかり指導されてきたのでしょう。一つひとつの文の読み方も声の調子に変化をつけるなどの工夫がされていました。このまま本番を迎えても恥ずかしくないほどでした。しかし、前半から変化をつけてしっかり思い出を伝えているため、後半の伝えたい気持ちのところで相対的に盛り上がってくれないのです。だからこそ、よりよくするためには、今までの読み方をリセットしてもう一度全体を見る必要があったのです。

生徒たちは、指摘されたことを素晴らしい早さで吸収していきます。読むたびに確実に1ランク上に上がっていきました。指摘の内容も、語尾の発音、どの単語を強調するか、間の取り方など、ピンポイントなものに変わっていきます。何がいけないのか、どうすればよいのか、非常に具体的で説得力のあるものです。さすがにプロと感心させられました。

また、休みの日にもかかわらず、担当の先生だけでなく国語科の先生全員がこの指導に参加されていました。プロの指導から学んで自分たちの日ごろの指導に活かそうとしているのです。先生方の熱心さに頭が下がります。

プロのアナウンサーにうまくなったとほめられた生徒たちは、自信を持って本番に臨んでくれることだと思います。わずかな時間でこれだけうまくなった2人です。残された時間でもっとうまくなっていることでしょう。「できることなら卒業式に参加して聞きたいですね」と話をしながら学校を後にしました。

若い先生のやる気に元気をもらう

先日の中学校訪問時(授業アンケートが生きる参照)に、とてもうれしことがありました。生徒指導を担当している2人の先生から相談されたのです。

その内容は、次のようなものでした。

子どもたちは授業がわからなくなると学校から離れていく。そのことが問題行動につながっていく。中学校に入学する時点で子どもたちの学力にはかなり差がついている。なんとか下位の生徒が中学校の授業についていけるような工夫をしたい。理科の授業でも簡単な計算ができないためにつまずく子がいる。そこで、数学と理科を連続授業としたり同時展開したりすることで、習熟度別等の学級編成を可能にし、下位生徒が授業についていけるような方策をとりたいと思うがどうだろうか。

たまたま、2人が数学と理科の担当でもあったことがこのようなアイデアにつながったようです。
学習指導と生徒指導の関係を意識して、教科の枠を超えて子どもたちに対してできることを考えようという姿勢はとても素晴らしいものです。
彼らの想い、考えを聞き、私もできる限りのアドバイスをしました。特に、彼らが何とかしたい下位生徒に対してどのような授業、どのような取り組みが効果的であるかの具体的な仮説を持つことが大切であることを強調しました。これが明確になれば、今の枠組みの中でも改善できることがたくさん見つかりますし、また、必要な対策がよりはっきりするはずです。
実際にカリキュラム的に実現可能かどうかはわかりませんが、何とか実現できるよう願っています。

まだ若い2人の先生から、このような相談を受け、私も大きな刺激と元気をもらいました。

授業アンケートが生きる

昨日は、終日中学校で授業アドバイスをおこないました。2年生の2つの学級を中心に見ましたが、授業者に影響されない学級の特徴がよくわかりました。

作業や課題に対する指示に対してあまり積極的に取り組まず、答えなどの結果が示されると、それはノートに写す学級。
作業や課題に対しては取り組むのだが、教師や友だちとはあまり積極的にかかわろうとしない学級。

作業や課題に取り組む度合いの差はありますが、基本的に教師と子どものコミュニケーションがうまくいっていないことが問題です。子どもは試験で点をとるために必要な知識、結果のみを求めていて、その過程、教師や友だちとのかかわり合いを求めていないようです。
この日見た授業に共通していたことは、先生が子どもたちをポジティブに評価している場面がほとんどなかったことです。

こんな場面がありました。
ある生徒に友だちの発言を確認したところ、声が小さいから聞こえないと答えたので、発表者に再度みんなに向かって大きな声で発表するように指示しました。
指示された生徒は、嫌がっていましたが、何とか再度発表してくれました。
ところが、それでもよく聞こえないと言うので、その生徒にはちゃんと聞くように注意をした上で、もう一度、もっと大きな声で、みんなの方を向いて発表するように指示しました。
今回はかなり抵抗しましたが、なんとか発表してくれて、確認もできました。

このやり取りの間、確認された生徒も、発表した生徒も注意されるばかりで、発言の内容や聞いていたことを評価されていません。このようなことが続くと、子どもたちは発表することを嫌がりますし、友だちとの関係も悪くなってしまいます。コミュニケーションがとれなくなってしまいます。
子どもが何らかの外化をおこなったときに、きちんと評価することはとても大切なことです。このことを先生方に意識してもらうことが改善への第一歩です。

授業後このことをアドバイスしましが、「先日おこなった授業アンケートで、『先生はよくほめてくれたり、励ましてくれたりする』の評価が低かったのですが、そのことがよくわかりました」と、驚くほど素直に納得していただけました。ほかにも授業アンケートの結果を受け止めて、子どもたちの接し方をどうしようかと考えている先生がいらっしゃいました。
それまであまり意識していなかったことが、授業評価をきっかけに意識され始めていたのです。授業アンケートに項目として入れることが意識してもらうことにつながるのです。また、このアンケートを受けて先生の授業に変化が見られれば、子どもたちも先生方を信頼してくれるようになります。授業アンケートにはこのような利点もあるのです。

先生方が、子どもたちからの評価を素直に受け止めていただいていることをとてもうれしく思いました。この授業アンケートをきっかけに先生方の授業が進化し、先生と子どもたちの関係も改善していくと確信しました。

採用2年目の先生の授業を見る

昨日は中学校で、採用2年目の先生3人の授業アドバイスを行いました。

3人とも新任から見ている先生ですが、当時を思うと驚くほど進歩していました。どの授業も、若い人にありがちなテンションが高くなるような場面も全くなく、子どもたちの活動を大切にしている、参観して心地よいものでした。
彼らに共通していると感じたのは、素直であるということです。私からの直接のアドバイスだけでなく、研修主任が発信している学校で取り組もうとしていることなど、実に誠実に取り組もうとしていました。
午前にアドバイスした先生は、指摘されたことを午後の授業ですぐに改善していました。この素直さが伸びる条件だとあらためて思いました。

また、共通していたのは自分の授業の課題が意識できていたことです。

・どの子もきちんと授業に参加しているが、どうしても発表等はできる子ばかりが活躍してしまう。
・体育で子どもたちの活動場面をたくさん作ろうとしているが、道具の制約で活動できない待ち時間が多くなり、だれてしまう。
・子どもたちで解答の確認をしたり、意見交換をしたりする場面をつくっているが、答えだけを見せ合って終わってしまう。

こういう課題が意識できることが伸びるためには大切な要素です。それぞれの課題について次のようなアドバイスをしました。

1番目の課題については、「正解」と言わない授業をしているので、できる子が正解を言ったあとで、手が挙がっていなかった子に答えを言わせる。表現を動作化するといった、質問に対する解答以外で子どもたち活躍できる場面を用意する。

2番目の課題については、道具を使わない練習を組み合わせることを話しました。待つ間にできることをする。1グループを半分の数にして、道具を使う活動と使わない活動に振り分け、時間で交代する。こんな発想を持つとよい事を伝えました。

3番目の課題については、子どもたちが考えや意見を交換するやり方を知らないことが問題でした。先生の板書や説明が式や結果に偏っていて、どこで気づいた、なぜこの公式を使おうと思ったといたことを子どもたちに問いかけていなかったことが原因です。まず子どもたちの意見交換のモデルを全体の場で見せるようにすることを話しました。

しかし、このようなアドバイスを受ける機会が、この先いつもあるわけではありません。自分で本読んで考えたり、同僚の先生に相談するというアクションも必要です。授業について学ぶ方法を自分の中に確立することが次の課題になっていくのでしょう。
若い先生の成長の場に立ち会えていることは、大変楽しいものです。このような機会を得ていることをありがたく思いました。

愛される学校づくりフォーラム

私もメンバーの一員である愛される学校づくり研究会主催の「愛される学校づくりフォーラム」に参加しました。
会は発足してから約3年になりますが、その間メンバーがおこなった学校評価と愛される学校づくりの実践を発表させていただきました。

私はプログラムの中の2つのパネルディスカッションに参加しました。一つは司会者として、もう一つはパネラーとしてです。

緊張するのは何といっても司会者です。パネラーの発表は聞く立場によっては、「そうはいってもねぇ」とすんなり入って行かないこともよくあります。そこで、観客の表情からこんなことを疑問に思っているのではないかということをパネラーに突っ込むのですが、あまりきれいな答えが返ってくると、嘘くさくなります。とはいえ、しどろもどろになってしまっては台無しです。このあたりの質問のさじ加減が、おもしろいパネルディスカッションになるかならないかを決める要素です。司会者の腕の見せ所です。幸いにも、私の担当したセッションのパネラーは皆さん研究会のメンバーです。よく知っている人たちですから思い切って突っ込むことができます。その場で発表順を変えるなど当初の予定と違うことをしたり、あらかじめ質問事項を決めておかなかったりすることで緊張感とライブ感を演出してみました。さすが研究会の精鋭メンバーです、私の無茶な突っ込みにもみなさん堂々と答えていただき、とても楽しく終えることができました。パネラーの答えの中に、愛される学校をつくるための思いと実現のためヒントがたくさんあったように思います。私自身としては、ちょっとテンションを上げすぎてついていけなかった方もいたのではないかと反省しているのですが、パネラーの内容のあるお話しはきっとみなさんに伝わったことと信じています。

一方パネラーとして参加したパネルディスカッションは、反省しきりです。質問に対して簡潔に答えることができず、ずれた答えをしてしまったように思います。司会者のうまさと他のパネラーのおかげで、パネルディスカッション自体はおもしろいものになっていたとは思いますが・・・

フォーラム終了後、たくさんの方におもしろかったと言っていただけたことで、救われました。素晴らしい観客とメンバー支えられて、楽しい時間を過ごすことができました。

フォーラムの様子については、来月中には愛される学校づくり研究会のホームページで公開される予定です。

研究会の会長はすでに来年に向かって何やら準備を始めているようです。またおもしろい企画で皆さんとお目にかかれたらと思っています。

子育てに関する講演

児童センターで子育てに関するお話しをさせていただく機会がありました。就学前の小さなお子さんをお持ちのお母さんを対象にしたものです。20人以上の参加者があったのですが、当然のことながら皆さんお子さんとご一緒です。講演の間お子さんをどうするのかというと、別室で預かってくれるのです。面倒を見てくださるのは他の児童施設の職員やボランティアで、子どもの数と変わらないくらいの方がこのために集まっていました。地域全体で子育てを応援していることがよくわかります。今回参加されたお母さん方も、子育ての手が離れたら、今度は応援する側にきっと回ってくれることと思います。こうして次の世代へと助け合いがつながっていくのだとあらためて感じました。

さて、講演の内容ですが、次のようなことを話させていただきました。

・子育てに正解を求めない
・ほめ方叱り方
・親が子どものよいところを見つける
・言葉をかける、聞くことを大切にする

「明るく楽しく前向きな気持ちなっていただけるようなもの」という主催者からの、リクエストだったのですが、ちょっと硬くなってしまったかもしれません。終了後、反省させられたといった言葉が聞かれたり、今まで間違えた叱り方をしていたが、これから直せば大丈夫ですかといった相談を受けたりしました。
育て方が悪い、親のせいだという言葉が安易に使われすぎるような気がします。そのために、子育てにプレッシャーがかかるのです。同じように育てても子どもの成長は、一人ひとりのもつ個性や環境によって大きく変わります。うまく育ったかどうかは、大人になるまで、いや大人になっても言えることではないと思います。
私がお願いしたのは、子どもが安心して居ることのできる場所をつくってほしいということです。「あなたを大切に思っているよ。愛しているよ」ということ子どもに伝えることです。居場所のある子どもは決して崩れないからです。
日々大変な子育てですが、だからこそ子どもの成長を楽しめる余裕を持ってほしいと思います。私の思いが参加者にうまく伝わっていれば幸いです。

食の授業づくりの講演

昨日は栄養教諭・学校栄養教職員対象を対象に、食の授業づくりの講演をしました。

食の授業を何度か見せていただいたことがありますが、共通しているのは資料やワークシートなど、事前の準備を驚くほどていねいにされていることです。年に何回も授業のチャンスがないのでその分、しっかりと準備をされるようです。どなたも、食の授業に対して本当に熱い思いを持って臨まれています。それ故に自分の授業に対して、どうすれば子どもたちが興味を持ってくれるのか、子どもたちの行動を変えるには何が足りないのかと、真剣に悩んでもおられます。
参加された方は、みなさん真剣なまなざしで私の話を聞いてくださいました。少ない授業経験を補うために、しっかりと勉強しようという気迫のようなものを感じました。
また、栄養教諭・学校栄養職員の皆さんの横のつながりの強さも印象に残りました。情報交換し助け合おうとする雰囲気が会場にあふれていました。

食の授業は、やっと学校現場に認知され始めたところです。しかし、参加された皆さんの姿を見て、間違いなく学校現場によい形で定着するという確信を持つことができました。ぜひ、実際の食の授業を見せていただいて一緒に勉強する機会をいただきたいとお願いをして会場を後にしました。

終日特定の学級を見る

先週末に、中学校の授業アドバイスをおこないました。今回は、終日2つの学級を中心に授業を見学し、その学級にかかわっている先生方に対してまとめてアドバイスをさせていただきました。

今回の子どもたちの様子を見て感じたことは、授業の雰囲気をつくっているのは授業者の個性や進め方よりも、学級集団の特性のようでした。
1つの学級は、子どもたちと教師との信頼関係がうまくできていないようでした。過去に友だちの発言をからかうようなことがあったようです。子どもたちが安心して発言できる状況を教師が保証できなかったので、信頼関係も崩れてしまったのです。先生方に次のようなことをお願いしました。

・「わかった人」と正解を求めるような問いかけをしないこと
・どんな発言も「なるほど」とまず教師がきちんと受容すること
・その発言をポジティブに評価すること
・「同じ考えの人」「説明に納得した人」と問いかけることで、他の子どもとつなぐこと

残された時間はあまりありませんが、教師が子どもを認める、子ども同士が互いを認め合う雰囲気をつくることからやり直すのです。

もう1つの学級は、明るく元気な子どもが多いのですが、ちょっと落ち着きがありませんでした。どの時間でも共通していたのは、やるべきことが明確に指示されると取り組む姿勢を見せるのですが、集中力がすぐになくなり、同性間ですぐにおしゃべりを始めてしまうことです。学力的には2極化が進んでいるようです。できる子は終わってしまうとすることがない、できない子は途中で手が止まって集中力をなくす。そのために、ざわついてしまうようです。

・課題に対して答えだけではなく理由の説明をきちんと求めること
・わからなければ友だちと相談できるようにすること
・課題をスモールステップに分けて、わからない子がつまずいたままになる時間を減らすこと
・座席を男女市松模様にすること

このようなことをお願いしました。
できる子には説明などの高度な課題を与える。できない子どもには、わからない状態、手つかずの状態でいる時間を減らすことで、集中力を切らさないようにするわけです。また、同性間で相談すると無駄話になりやすいので、座席の工夫もします。

今回のような授業アドバイスのやり方は初めてでしたが、1つの学級にかかわる先生方が一緒に話をすることで、自分の抱えている問題が個人の問題ではないことに気づき、気持ちも楽になったようです。互いの授業の様子を共有化することで、注意すべき点も明確になり、共通の対応をとれるためにその効果もより期待できます。学級づくりを担任だけの問題ととらえるのではなく、かかわる先生方全員の問題ととらえることが大切だとあらためて思いました。

ICT活用研究校訪問

先週、来年度ICT活用研究のお手伝いをする学校と打合せを行いました。私の方から無理を言って、授業の様子も見せていただきました。この子どもたちの様子であれば、ICTを工夫して使うことで、授業での関わり合いや集中度を高めることができると思いました。

ICTの活用研究というと、まず利用することが第一歩ととらえがちなのですが、この学校ではICTの活用以前にどのような授業を目指すかを明確にすることから始めていました。その上で、どのような場面でICTの出番があるかを考えるのです。そして、ただ使ってみるのではなく、きちんと従来の方法と比較して、どちらがより効果的かを検証しようとしています。このような視点を意識することで、ICTを使う、使わないにかかわらない、基本となる授業力の底上げを図ろうとしていることをしっかり感じました。
目指す授業像も「伝え合う、学び合う」ことをベースとしたしっかりものでした

目指す授業像、子どもの姿を明確にし、それに向かってどのような工夫をするかが、授業をよくしていくための基本です。ICTは黒板やプリントなどと同様に、ツールの一つにしか過ぎません。そのことをわかった上でそのよさを活かす場面を工夫することが大切です。このポイントしっかり押さえている学校です。足が地に着いた研究になることと、今後が楽しみになりました。

教材の広がりを実感する

昨日は幾何ツールを使った授業研究会に参加しました。

1人の授業者が同じ教材で2度授業をします。1回目の授業後に検討会を行い、その内容を受けて修正した授業をもう1度行います。内容の修正はあくまでも授業者の意思で決定するので、言い訳はできません。とても、厳しい研究会です。
まな板にのる授業者へのプレッシャーは想像に難くありません。

1つの教材をつかって2つの課題に取り組んだことから、今回の話題は広がりました。
等積変形を、三角形の等積変形を使って考える、その上で三角形の合同を使って別の形をつくるという課題です。

・教科書で扱っている三角形の等積変形を押さえることを優先するのか。
・三角形の等積変形にはこだわらず、子どもたちが集中して取り組んでいた後半の課題に絞って時間をつかうのか。

・三角形の等積変形、三角形の合同などの学習内容を扱うことを大切にするのか。
・数学的な思考や根拠を持って課題を解決することをより大切にするのか。

・1時間完了にこだわらず、2時間完了にするのか。
・2時間でやるのなら、どちらの課題を先にするのか。

それぞれの先生の授業に対する考えや思いがたくさん語られました。1日議論をしても結論がでる問題だとは思いません。1つの教材でも、本当に様々な授業が生まれてくることを実感しました。教科書の例題であっても、教師の工夫でいろいろな広がりを見せると思います。教師の持つ授業観の多様性と、教材研究の大切さをあらためて学ばせていただきました。プレッシャーのかかる授業に挑戦された授業者と同僚の先生方、忌憚のない意見をたくさん発表して内容の濃い会にしていただいた参加者の皆さんに感謝です。

課題意識を持って授業に臨む

昨日は中学校で授業研究と授業アドバイスをおこないました。

今回は授業アドバイスを9人に行いましたが、最後の1人が終わった時は10時近くになっていました。勤務時間を過ぎてまでアドバイスを受けてくださった先生方の熱心さには本当に頭が下がります。
遅くなった原因の一つに、どの先生も子どもとの関係がよいことがあげられます。子どもたちがしっかりと授業に参加しようとしているのです。その結果、教師の働きかけと子どもの活動の関係が明確になり、授業の改善点が具体的にはっきりとします。改善のポイントがたくさん見つかり、どうしても話が長くなってしまったのです。

ある先生は、すべての子どもたちにできたという実感を持たせたいと、全員に○をつけるようにしていました。その結果、以前と比べて子どもたちが授業に積極的になってきたという手ごたえを感じています。しかし、解説の場面等で集中していない子がまだいます。この子たちは、どちらかというとできる子たちでした。このことに気づいていましたが、どうすればよいのか、悩みながら授業に向かっていたそうです。

そこで、できる子たちが参加しない理由を一緒に考えました。
彼らは○をもらっているので、解説を聞かなくてもよいと思っているようです。結果がわかっているので参加しないのです。とはいえ、彼らが興味を示す課題だと、せっかく積極的に参加するようになった学力低位の子どもが離れていってしまいます。扱う問題は変えずに、友だちのやり方を本人に代わって説明するなどの、より高度な課題を工夫をすることにしました。自己完結するのではなく、他の子どもたちとのかかわりをもたせる課題とすることで、できる子も低位の子も参加できる授業に進化させるのです。

他の先生方ともこのような話をたくさんすることができました。
どなたも、それぞれの課題を持って授業に臨まれていました。課題を持っていると、クリアできたかどうか、子どもたちの状況を意識することになります。子どもたちをしっかり見ることで、うまいかない原因も見えてきますし、あらたな課題も見つかります。こうして授業力がついてきているのです。

この学校におじゃまするようになって1年近くがたちました。確実に力をつけてきた先生が何人もいらっしゃいます。授業改善に前向きな先生が増えてきました。
「2月には、4月からの学級経営について相談させてください」という、うれしい一言をくださった先生もいらっしゃいました。
先生方の学ぼうという気持ちに私もたくさんの元気をいただきました。

ペア活動でのアドバイス

先週末は中学校の授業研究に参加しました。

体育の柔道の授業でのことです。ペアでアドバイスしながら、受け身の練習をしていました。先生が一人ひとりにアドバイスするのには限界があります。活動量を確保しながら修正をするにはペア活動はよい方法です。
柔道経験がなくてもよいアドバイスができているペアもいるのですが、どこがよかったか、何をアドバイスしていいか、うまく伝えあえないペアも目につきます。練習を繰り返しているうちに子どもたちの集中力が落ちてきました。
きちんとかかわり合わないので、漫然とした練習になってしまったのです。

柔道経験の少ない子どもたちなので、先生のお手本を数回見て説明をうけただけではポイントがわかりません。互いにアドバイスをし合うにもそのためのベースがなかったのです。

授業の最後に全体で、自分が受けたよいアドバイスを発表させました。とても意味のある活動です。最後ではなく、途中で練習を一旦止めてからこの活動をおこなうことで、アドバイスのポイントが明確になり、その後のペア活動が変わったと思います。

子どもたちがアドバイスし合うには、そのためのベースになる知識や経験が必要なことをあらためて学ぶことができました。

子どもの集中力が続く授業

昨日は中学校で英語の授業研究に参加しました。

子どもが積極的になるにはで紹介した、GDMの授業です。この時間は新たに、"into"と"out of"の使い方を学ぶ場面でした。代表の子どもが、「教室の外に移動して廊下の窓に貼ってあった絵をはずして教室に戻ってくる」というシチュエーションを英語で表現します。
子どもたちは自信がないのかなかなか全員がしっかりと大きな声で言えません。先生は正しく言えている子どもにうなずきながら、何度も挑戦させます。通常このような状態が続くとあきらめる子どもが出てきて、集中力が落ちてきます。ところが、なかなか理解できない子どもも、真剣に友だちの声を聞きながら理解しようとしています。結局この時間の最後まで子どもたちの集中はきれませんでした。

子どもたちの集中が続いた理由の一つは、同じことを何度も繰り返しているということです。この場面で言えば、何度も表現させた後、代表で演じる子どもを変え、内容の変化は絵の種類を変えるなどわずかにとどめ、また挑戦させています。何回も繰り返すうちに、どこかで理解できる瞬間があるのです。子どもたちはそのことを経験的に知っているので頑張り続けることができるのです。わかりたいという気持ちが満たされる瞬間を知っているから集中力が続くのです。

1回やってすぐに先生が正解を言って、それをただ繰り返す。これでは、子どもは答えがわかっただけできちんと理解できたわけではありません。わからない子はわからないまま授業は進んでいきます。すぐに集中力は切れてしまいます。

このことは英語に限ったことではありません。子どもたちがわかる瞬間を保証することが、子どもたちのやる気と集中力を生み出すのです。安直に答えを教え込むのではなく、子どもたちの中から「わかった」が生まれてくるような工夫が大切だということをあらためて確認できました。

子どもが真剣に考える授業

昨日は中学校の国語の授業研究に参加しました。

私も含め参加された先生方は心地よい疲れを感じたと思います。それは、子どもと一緒になって課題を考えたからだと思います。
授業の課題は本文のクライマックスとなる一文を見つけるというものでした。4つの文が候補にあがり、子どもたちがそれぞれ理由を発表し合います。発表に対して、すぐに次の意見を聞くのではなく、賛成する者、同じ考えの者を確認したうえで、再度同じ考えの意見を発表させる。このことをどの意見に対しても丁寧に行っていました。自分と違う考えを一度聞いただけですぐに理解することは難しいことです。このように、何人かに同じ考えを発表してもらうことで、違う意見の子にも友だちの意見がしっかり理解できます。
最後にキーとなる言葉について意見が出されました。その意見について数人が意見を言うのですが、なかなかうまく言葉になりません。それでも授業者は子どもの代わりに言葉を足したりせずに笑顔で子どもの言葉を待っています。どうしても言葉が出てこない子には「誰か助けてあげて」と子どもにつなごうとしました。子どもたちは真剣に考えている様子ですが発言できるまでには考えがまとまっていません。残り時間もあとわずかでしたが、授業者は全体での話し合いをやめて、「一度自分で考えてみようか」と個人に戻しました。
自分の考えがうまく言葉にならずモヤモヤしているのでしょう。隣の子に話しかけている子もいます。授業者はすぐにペアで相談するよう指示しました。すると子どもたちが一斉に話し始めました。全体の場では意見を言えなかったけれど、自分の考えを持っていたのです。子どもたちが本当に真剣に考えていたのです。

このような場面が生まれたのはたまたまではありません。日ごろから子どもたちが互いの意見をきちんと聞く姿勢が育っていて、安心して意見が言える雰囲気があるからこそ、このような活動ができるのです。授業者が「自分だけでなく、学級に関わっている先生方みんなのおかげです」と言っていたのが印象的でした。このような雰囲気は教師集団で育てていくものなのです。

検討会でも子どもたちの素晴らしい様子がたくさん語られました。また、参加された教科指導員の先生からは、子どもたちとのかかわりや教材の位置づけなど、話し合いの中では語られなかったことについて大変勉強になるお話しを聞かせていただけました。

授業者、参加された先生方、そして私にとっても大変学ぶことの多い時間を過ごさせていただきました。皆さんに感謝です。

子どもとの人間関係が基本

昨日は中学校で国語の授業アドバイスを行いました。

子どもたちと先生の人間関係のよさが印象的な学級でした。子どもたちが先生を信頼していることが、表情や反応に表れていました。こういう学級で授業を見ると改善点がはっきりします。例えば、前時の復習が終わった後、グループでの活動に入ったのですが、子どもたちがざわつきました。先生との人間関係が悪い場合は、先生から解放されてざわついたり、だれることがよくあります。しかし、この学級ではそういうことないはずです。
最初の復習で受け身の時間が長かったため、その反動で一時的にざわついたのでしょう。思った通り、しばらくすると子どもたちは集中していきました。
であれば、復習を早めに終えるか、挙手した子どもに指名して先生が説明するという形をやめて、多くの子どもがかかわるような工夫をすればよいのです。
子どもと先生の人間関係は、授業のすべての場面で影響をおよぼします。まず人間関係をつくることが基本となります。その上で、いろいろな工夫が生きてくるのです。

授業後、授業者とピンポイントで具体的な話をすることができました。子どもたちとこのような人間関係を作ることができる先生ですので、きっと新しい工夫をしてよりよい授業をつくっていかれると思います。次の機会がとても楽しみです。

同じ方向で取り組むことのよさ

先週末は中学校で来年度の研究の方向性を確認する会議に参加してきました。

会議の前に、全校の授業の様子を見学させていただきました。授業を見ていて印象に残ったのは、学年として同じ方向で取り組んでいることの結果が子どもたちから見てとれたということです。
例えばどの学級も座席は男女が市松模様で並ぶようになっています。子どもたち同士で相談する活動を取り入れています。1年間続けてきた結果でしょう。この日見た授業のペア活動では男女がとても楽しそうにしっかりと関わり合っていました。
また、先生方は子どもたちの言葉を聞くことを大切にし、しゃべりすぎないよう意識しています。その結果、子どもたちと先生の関係がきちんと作られていて、子どもたちは集中して授業に参加しています。
どの学級でも、どの教科でも同じです。1学期の頃は学級や担当の先生によってバラツキがありましたが、ほとんど感じられなくなっているのです。学年にかかわる先生がみな同じことを意識して取り組めば、個々に取り組んでいるときとは結果は大きく違います。子どもたちが育つことで、先生の経験や力量の差を子どもたちが埋めてくれるようになります。誰の授業でもきちんと集中して参加するようになるのです。

この学校では、来年度に向けて、共通で取り組むことを明確しようという動きが出てきています。先生方に、同じ方向で取り組むことのよさが実感されてきているのだと思います。学校全体がどのように変わっていくかとても楽しみです。
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