授業の導入を考える

授業の導入で大切なことは何でしょうか。前時の復習でしょうか。落語のまくらのように子どもたちのテンションをあげることでしょうか。子どもたちが興味・関心を持つようなものを見せることでしょうか。

国語で目の錯覚について書かれた教材を扱う授業でのことでした。教科書には有名なルビンの壺(壺にも、2人の人の顔にも見える絵)が載せられていました。授業者は子どもに興味を持たそうとネットから見つけてきた、いろいろなトリックアートを子どもたちに見せていました。子どもたちもよく反応しています。授業者が準備したものを見せ終わったのは授業が始まって10分以上過ぎたときでした。その後、教科書の文章を読むのですが、子どもたちは集中して取り組んだでしょうか。実はすぐには集中しませんでした。トリックアートに夢中になっても、教科書の文章を読みたい、理解したいとはならなかったのです。また、トリックアートに興味をもつことはこの文章を理解することとにはほとんど役立ちません。10分以上もかける価値はあまりなかったのです。

導入で大切なことは、できるだけ早くその時間の中心となる課題につなげることです。授業時間は内容に対して決して多くはありません。子どもが集中できる時間は限られています。導入はその目的を達成できるなら、できるだけ短い方がよいのです。復習であれば、その時間で使うもの、必要なものに絞ることが大切です。興味・関心を持たせるのなら、できるだけインパクトの強いものを与えて、すぐに本題に入るべきなのです。先ほどのトリックアートであれば、子どもたちが「えっ!」と思う、これぞというものを見せて、すぐに本文に入るべきだったのです。

導入を考えるときは、その時間の中心となる課題、活動をまずしっかりと組み立て、そのために必要なことは何かを明確にしなければなりません。子どもたちにとって必然性のない課題であれば、必然性を持たせる。前提となる知識が必要であれば、その知識を復習する。求められるものによって導入の形も異なるのです。中心となる課題、活動に限られた時間、エネルギーを集中させるためにも、導入は効率よく、できるだけ短くするのがポイントです。漫談のような授業の内容と関係のない話をするのは論外です。このようなことを意識してほしいと思います。
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