算数で大切にしたい活動

算数では、数の概念や足し算・引き算などの演算の概念、長さなどの単位の概念などを形成することがとても大切になります。このとき、意識してほしいことは、問題を解けるようにすることをあせるあまり、言葉から直接式をつくる訓練に終始しないことです。

演算で考えてみましょう。算数の問題は、言葉で書かれたものを、式を立てて解くことが求められます。しかし、言葉と式を直接結びつけることはとても危険です。なぜこの問題は足し算なのか、なぜ引き算なのかを言葉で説明することはとても難しいことだからです。「違い」を聞かれているから「引き算」というのは、本当は説明にはなっていません。そもそも「引き算」という概念は言葉で形成されたものではないからです。

「残り」「違い」と聞かれたら「引き算」と教えることはHow to としては、多くの問題で有効かもしれません。しかし、その言葉の表しているものを無視して「引き算」と直接結びつけて解かせても、「引き算」を理解したことにはなりません。
「残り」と「違い」は「引き算」で求められますが、同じことを表しているわけではありません。教科書では、「残り」が「引き算」の定義、概念の出発点となっています。引き去った「残り」を求めることが「引き算」であると定義をしているのです。では、「違い」も「引き算」になることはどのように理解していくのでしょうか。たとえば、赤組8人、白組5人の「違い」を考えてみましょう。赤組、白組を整列させ、求めるものは図のどこの部分が表す数かを考えさせる。はみ出た3であれば、それはどのような操作で求められるか考える。それは、白組の5人と対応する5人を白組から引き去った「残り」だから、引き算で表される。このような過程を経ます。「違い」を「残り」に帰着させて引き算となること理解させるのです。「残り」を考えることで引き算の概念を形成し、それをもとに「違い」に拡張しているのです。

教科書では、子どもたちがばらばらにいる図、整列した図、ブロックで対応させた図、5つのブロックを対応させ、分解した図と丁寧にこの段階を踏んでいます。授業では、ブロックを使った操作をすることが必須となります。ブロックの操作が、今までやった「残り」と同じ操作だと気づくことで、これが引き算だと子どもは理解するのです。
子どもが納得できるまで、この操作を経験させることが大切です。ここをさぼって、だから「違い」は引き算だねと教え込むことは危険なのです。

また、ブロックのよさは操作できることだけではありません。人間のままでは、どうしても赤組の子ども、女の子といった属性が残ります。一旦ブロックに置き換えることでその属性は消えます。この置き換えは、数の本質的な概念形成に役立ちます。数は対応関係に注目した概念で、属性を消し去ることがその本質だからです。

問題文という言葉と式という言葉。この2つの言葉だけを行き来することを重視するのではなく、図による視覚化、ブロックのような具体物による操作、この3つを自在に行き来する活動がとても大切です。特に演算の概念形成は、どのような操作がその演算となるのかをしっかりと理解させ、練習では問題文を直接式にするのではなく、その表す状況を絵や図で表し、どのような操作で求められるのかを意識して式を立てるようにさせてほしいと思います。
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