いつも同じことを言う教師

子どもの教師への評価に「先生はいつも同じことを言う」があります。これはよい意味でも悪い意味でも使われます。悪い場合は「くどい」「しつこい」に近い使われ方です。教師が求めるものが高く、それに子どもが応えられないとき、どうしても同じことを何度も言うことになり、子どもはまた言っている、また怒られたと感じるのです。一方よい場合は、教師が大切にしていることは結局このことだ、このことを意識していればいいのだと納得できているときです。教師がいつも言うべきこととは何なのでしょうか。

それは、目指す子どもの姿、行動を考えるときに、常にそこに立ち返るべき原点です。
たとえば、最近「当り前のことがちゃんとできる」ということを大切にしている学校によく出会います。この言葉の優れているところは、子どもたちの取るべき行動の原則として非常に広い範囲を含んでいることです。「時間を守る」「ルールを守る」「約束を守る」「整理整頓をする」・・・。どれも「当り前のことがちゃんとできる」に含まれています。「時間を守る」には、「学校に遅刻をしない」「チャイムが鳴る前に席につく」「体育館への移動に遅れない」などが含まれます。だんだん細かくなっていきますね。
一方子どもたちへの指示や指導はできるだけ具体的であることが大切です。「当り前のことがちゃんとできる」と言っても、「チャイムが鳴る前に席に着く」が「当り前のこと」として意識はされません。そのことを意識させる必要があります。だからといって、できるようになるまで「チャイムが鳴る前に席に着く」と言い続けることはネガティブを言われ続けるので、悪い意味で「いつも同じことを言う」と感じることになります。

「今日も遅刻がいなかったね。当り前のことがきちんとできているね。えらいね。ところで、さっきチャイムが鳴る前に全員席に着いていたかな。どう?」
「着いていなかった」
「チャイムが鳴る前に席に着くのは、当り前のことかな?」
「当り前のこと」
「じゃ、これもきちんとできるようになろうね」

指導する時には必ず、原点となる言葉に立ちかえるようにします。広い範囲を含むので、できていることもたくさんあるはずです。そのことをきちんとほめ、だからこれもできるようになろうと前向きに伝えるのです。原点に立ち返ることが意識されてくれば、どのような場面でも、自分で正しい行動を判断できるようになっていきます。

いつも言うことを「当り前のことがちゃんとできる」レベルにするのか、「時間を守る」レベルにするのかは子どもたちの状況によって異なります。年間と月単位でレベルを分ける方法もあります。校長と担任で分けるという考え方もあります。いずれにしても、示すときにはそこに含まれる具体的なことを子どもに考えさせる。できていないと指導するときは必ずそこまで戻り、できていることをほめることも忘れない。このことを意識して、よい意味で「先生はいつも同じことを言う」と言われる教師になってください。
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