若者から教えられる

昨日、仕事を手伝っていだくことになったアルバイトの学生さんと打合せをおこないました。今年大学に進学されたばかりの方で、大学受験のことについて少し雑談をしました。
非常に優秀な方ですが、ほんのわずかな差で第1希望の大学は不合格でした。その話を聞いて私は来年もう一度挑戦すればいいのにと思ったのですが、話を聞いてなるほどと納得しました。そして同時にとても感心したのです。

彼は、「浪人してもすることがないように勉強した」のだそうです。あとから、あれをやっておけばよかったと後悔することがないように、できることとはすべてやったのです。その上での結果なので、悔いはないというのです。とてもすがすがしい気持ちになりました。どれだけの人がこのようなことを言えるのでしょうか。

私が教員時代に同僚が受験勉強について生徒を叱咤する次のような言葉を思い出しました。私が大嫌いな考え方です。

「自分はもう少し勉強していればもっといい大学に入れていた。後悔している。だから、君たちは後悔しないようにもっと勉強しなさい」

彼らは、世間的にはよいといわれる大学を卒業しています。その彼らがもっといいという学校は、本当にもう少し勉強していればいけたのでしょうか。「もう少し勉強してれば」などという言葉は自分の能力や才能という問題から目をそむけた、自分に都合のいい言い訳です。努力できるのも立派な才能です。「もう少し勉強できなかった」のは、それだけのものだったのです。また、勉強時間に比例して伸びるというのはあるレベルまでです。才能の問題だけではなく、勉強の仕方の工夫など多くの壁があります。そのことを考えさせずに、ただ勉強しろというのは、誰にでも言える無責任なアドバイスなのです。

それと比べて彼の言葉の何と立派なことか。また、彼は「もし浪人するなら、勉強のやり方そのものを変えなければいけない」とも言っていました。やりきってダメだったのだからやり方を変えなければいけないと冷静に自分の学習を分析しています。やりきったからこそ言える言葉でもあります。

私自身、彼のようにやりきったと言えるだけのことをしてきたのかと聞かれると、とても自信を持って答えられそうもありません。まだ若い彼から大切なことを教えられた気分です。
これからしばらく仕事でかかわれることをとてもうれしく思います。若い彼からたくさんのことを学べそうな予感があります。彼との出会いに感謝です。反対に私が彼に何か少しでも与えることができればよいのですが・・・。

ベテランと若手のずれ

あるベテランからこんな話を聞きました。今年度その先生の副担任になったのは新卒の常勤講師でした。「朝と帰りのS.T.(短学活)の時間、教室を見に来ていいよ」と伝えたのですが、その先生は学級開き直後のL.T.(学級活動)の時間を1度参観しただけで、その後1度も担任の学級経営を見にこようとはしませんでした。1年間で1番大切な時期の学級経営を見ることは勉強になるのに、盗む気がないのか。出張の時には代わりにS.T.に行ってもらうことになるのに、その時困ると思わないのか。と若手の行動が理解できないようでした。これ以上言っても強制になるし、それも嫌だからもう自分からは積極的にかかわらないと決めたそうです。

若手からは直接話を聞いていないので、想像でしかありえませんが、初めての授業で手いっぱいで、精神的に余裕がなかったのかもしれません。そもそもS.T.は自分の生徒としての経験から単なる連絡であって大切なものとは思っていなかったのかもしれません。いずれにしても、ベテランから学べる貴重なチャンスを失くしてしまったようです。
自分のことを振り返ってみると、新任のとき、副担任をしている学級のS.T.を私から見せていただくようにお願いし、また年度の途中からは半分任せていただけました。後の私の学級経営の基本となることを学ぶことのできた1年間でした。当時は私のように、みな自分から盗みにいっていたように思います。最近の傾向でしょうか、若手が盗もうとしないという話をベテランからよく聞きます(「盗む」という文化がなくなってきている?参照)。また、S.T.が学級経営にとってとても大切であることを知らないのは仕方ないにしても、ベテランがわざわざ水を向けたことには意味があるはずだと思う想像力のなさも、問題かもしれません。

では、若手だけの問題でしょうか。勉強しに来なさいというのおこがましい気がして言いにくいかもしれませんが、ベテランも4月のS.T.はとても大切な時期だから、観にきたらと、誘う理由を明確にしてより強く言えば事態は変わったかもしれません。もっと強く働きかけることが必要になっていると思います。

このようなずれを、個人レベルで修正するのは人間関係のこともあり、なかなか難しいように思います。大切なのは、学年主任や教務主任、管理職が意識して対応することです。今回のようなS.T.の参観に限らず、若手にはベテランから具体的にどのようなことを学ぶとよいかを伝え、ベテランにはあなたのここが素晴らしいから若手に学ぶように言ったと伝え、気持ちよく対応してもらう。学年や職員の打ち合わせの場で、たとえば今回の例であれば、「この時期のS.T.はとても大切です。担任の経験のない方は是非ベテランの学級経営を学ぶようにしてください。ベテランの方も出し惜しみせずに若手に学ぶ機会を与えてください」とベテランと若手の交流を促し、互いに学び合う雰囲気を学校につくる。このようなことが大切になります。

ベテランは「若手が盗みにこない」、若手は「先輩が教えてくれない」。互いにこんな言葉を発しています。このようなずれを少しでも減らすために、管理職やリーダーの方が意識して働きかけ、先生同士が学び合う雰囲気をつくってほしいと思います。

学校の役割を考える

「学校の役割は、 子どもたちが、大人になったときに、生涯ちゃんとお金を稼げる人 に育てあげることです。その為には、社会で必要とされる 資格や 技術をしっかり身に付けることです」。この言葉がある校長のブログで書かれていました。もちろんこれが学校の役割のすべてということではなく、たまたま全国学力・学習状況調査の実施に関連して書かれていたことです。今、大阪では学校改革のキーワードとして、「ユーザー視点」という言葉が使われていますが、それに通じるものがあります。学校現場をまわっていると、自分の子どもの視点からだけで、全体のことを考えない意見を言われる保護者に出会うこともあります。「ユーザー視点」ということでいえば、これも認めるべきことなのでしょうか。

これからの日本の社会構造を考えれば、「生涯ちゃんとお金を稼げる」というのは、教育だけで何とかなる問題だけではありません。お金を稼ぐためには「資格や技術を身につける」という発想もちょっと単純すぎるような気がします。経済の発展が減速している状況では、なかなか職に就けない人も出てきます。構造的な問題です。パイの数より人の数の方が多いのです。資格や技術を身につけることは、ひところはやった言葉の勝ち組になる手段であり、その影には必ず負け組ができてしまいます。確かにユーザーという視点では勝ち組になることが大事に思えるのも理解できますが、校長という立場では、勝ち組になるというような発想ではなく、もう少し広い視点で学校の役割を語ってほしいと思いました。

少なくとも税金を投じておこなわれている公的な義務教育では、社会のためという視点が大切だと思います。私たちの社会をより良い形で持続していくための大切な担い手を育てるという役割が、常に第一であってほしいと思うのです。稼ぐことが一番の目的である企業も、社会に貢献する対価として利益を得ています。そうでなければ、暴力団との区別がなくなってしまいます。私は子どもたちに「社会の役に立つことで稼ぐ」という意識を持った人間になってほしいと思います。そのために、「役に立つ」「認められる」という経験がとても大切になります。自己有用感をもつことは子どもの学習や働くことへの原動力にもつながります。人の役に立つ、人から認められる経験を積むことを学校の役割として意識してほしいと思います。

学校HPの変化

学校HP(ホームページ)の発信を見ていると、この何年間でいくつかの変化があったように思います。
以前は、入学式や卒業式、体育大会などの行事や特別なことだけが記事になっていました。それも行事が終わってから何日か経ってやっと更新されるという状態です。しかし、学校用のHPシステムやブログの普及で簡単に記事が更新できるようになってから、学校HPもほぼ毎日更新することが当り前になってきました。それに伴い、記事の内容も、特別なことでなく毎日の子どもたちや学校のようすが中心になってきました。
そして、最近になって、ただ日常の姿を記事にしているのではなく、学校が伝えたいものを意識して記事にしていると感じることが増えてきました。HPが学校公報として機能し始めたということでしょう。

この視点でHPを考えると、学校が伝えたいことが明確であることが大切になってきます。明確であれば、記事もシャープになります。
子どもが真剣に学んでいることを伝えたいのであれば、必然的に授業中の記事が増えます。子ども同士のかかわり合いを大切にしているのであれば、子ども同士が話し合っている場面が記事になるでしょう。HPの記事から自然に学校が目標としているものが伝わるようになってきます。
また、もう一歩進んで、子どもや学校のようすから伝わればいいというだけでなく、積極的に学校が目指すものはこういうものです、この活動にはこういうねらいがあるのですと、明確な記事として載せる学校も出てきました。これは、学校にとってはとても厳しいことです。なぜなら、目指すものを明確にしている以上、本当に実現できているかという目で見られることになるからです。「学校はこのように、子ども同士が互いにかかわりながら学ぶことを目指しています」と記事にすれば、学校公開日のときには、子どもがそうなっているのかを参観者はチェックします。できていなければ、当然厳しい評価となって返ってきます。それでも記事にするということは、必ず実現するという強い意志の表れでもあります。このことは、外部だけでなく内部にとっても意味があります。職員がこの記事を読めば、自分が実現できていなければ外部から厳しい評価をされるというプレッシャーがかかります。逆に、達成できている具体例として記事に取り上げられれば、やる気につながります。校長が職員会議で経営目標について語るよりよほど効果があります。
こういう記事が多い学校は、HPを学校経営の道具として意識しているということです。

先週、何校かで靴がきちんと下駄箱に入れられている写真が紹介されていました。「本校は子どもたちが落ち着いています」と言うよりも、よほど雄弁に語ってくれます。子どもや学校のようすで伝えるということがよくわかっている学校だと思います。記事にしたいがとても記事にできない状態の学校もあるかもしれません。「今はこの状態ですが、1年後にはキチンとなるようにします」と宣言できれば素晴らしいと思います。
また、年度初めの学力テストについてもその意味をきちんと説明している学校がいくつかありました。この時期におこなう意味、何を調べる、何に活かすのかが書かれていました。この記事を読めば、なるほどそういうことかと納得し、きちんとそいうことを伝える学校の姿勢に信頼を寄せると思います。当然読んだ方は、テストの結果はどうだったのか、結果を受けて具体的にどのような対応をするのか興味を持たれるはずです。ただテストをおこないましたという記事との違いです。読まれた方の疑問や関心にきちんと応えるという意志があってはじめて載せられる記事だと思います。

HPが学校に根付き、進化してきています。HPを学校経営の道具としてうまく使う学校が増えてきました。HPがまさに学校の顔となりつつあります。学校の顔としてどうあるべきか意識することで、学校経営もシャープになるはずです。こんな視点で学校HPを見るのも楽しいものです。

新年度の学校HPは要注目

新年度になっての楽しみに学校のHPがどのように変わるかということがあります。校長や担当が変わった学校でなくても、新年度から新しい企画が始まる学校もあります。デザインが変わる場合もあれば、記事の視点が変わる場合もあります。

私が注目するのは校長のメッセージです。なぜなら、そこには校長が何を大切にしたいのか、この記事を通じて誰がどうなることをねらっているのか、といった校長の経営姿勢がはっきりと表れるからです。学校のHPを武器にしようとしているのか、それともお荷物と感じているのかも校長のメッセージを見ればすぐにわかります。

また、日々更新をしている学校などは、誰が記事を書いているのかも注目します。校長がほとんど一人で記事を書いている、HP担当が中心となって書いている、学年やグループの担当が分担して書いている、全員が当番で書いている、すぐにはわからない学校もありますがこの違いも学校の状況やHPに対する考え方が表れていておもしろいものです。

記事の内容も、学校ごとに個性があります。行事が中心の学校、授業のようすが多い学校、部活動や授業以外での子どものようすが多い学校、それに対するコメントも事実を中心にする学校、行事や授業への思いや内容、解説といったメッセージ性の強い学校。どれが正解というわけではなく、HPをどのような道具としてとらえているかの違いでしょう。

今までは、学校の変化は外部からはなかなか気づくことはできませんでしたが、最近は変化の兆しをHPから知ることができます。学校が変わるときは、まずHPの内容が変わるのです。だから私は新年度の学校のHPに注目するのです。
校長が変わっても今までと同じように更新されるのだろうか、新しく赴任した校長はどのような方針でHPを利用しようとするのだろうか・・・。この時期の学校のHPを見る楽しみは尽きません。

生徒指導面で学校がよくなるためのポイント

いわゆる生徒指導面で困難校と呼ばれる学校とかかわらせていただくことが過去何度かありました。こういった学校がよい方向に変わっていく姿からたくさんのことを学ばせていただきました。私が学んだ、学校がよくなっていくためのポイントを少し書かせていただきたいと思います。

・校長のリーダーシップ
教師集団がやろうと思ったことを思い切ってやれるようにする。責任は私が取るから信じたことをやってくださいという姿勢をはっきり示す。

校長がこうしろとトップダウンで指示をして徹底させるというやり方もありますが、教師集団が納得していなければ意味がありません。苦しい時ほど受け身では何ともなりません。校長の思いをきちんと伝えた上で、教師集団がどうしていくか自分たちで考えることが大切になります。そのためには、教師同士が互いの考えを伝え合う、聞き合う必要があります。また、校長が責任を取るためには、きちんと相談や報告をしてもらう必要があります。校内での情報の共有化と切り離せません。

・チームワーク
学校内で起きる問題を個人の問題とせずに、チームで解決にあたる。

学級内で起こった問題を学級担任や教科担任の問題として個人で解決しようとすることがよくあります。また、まわりが教師個人の問題だと批判することもあります。そうではなく学年の、学校の問題として互いに協力し合わなければ決して解決はしません。日ごろから、相談できる、助け合える関係を作ることが大切です。問題に対しては、常に複数で解決にあたる体制が求められます。

・目標とする子どもの姿の具体化
目標を具体的な子ども姿で表すことで、教師が取るべき行動を明確にする。

抽象的な目標では、そのためのアプローチが明確になりません。具体的な目標に向かうことでなすべきことが見えてきます。ある学校では、「授業中に生徒が一人も寝ない」という目標を掲げていました。レベルが低いと思われますか? この目標を達成するには、授業の内容を変えたり、子どもとの人間関係をつくったりとたくさんのことが必要になります。一つひとつのことをきちんやりきることで、はじめて達成されます。このように具体的な目標を達成するためになすべきことをやりきれば、他の面でも間違いなく学校はよくなっているはずです。

・普通の生徒との関係づくり
まず、普通の生徒たちとよい関係をつくり、安心して生活が送れる教室をつくる。

教師が問題生徒に関わってばかりいては、それ以外の大多数の生徒がほったらかしにされます。教師に対する信頼も薄れますし、その原因となる問題生徒に対してもネガティブな感情を持ちます。子どもたちを認め受容することを通じて、きちんと授業規律をつくり上げていくことが大切になります。授業規律を乱す行為に関しては毅然とした態度も必要です。しかし、決して子どもの人格を否定することがないようにしなければなりません。

・授業重視
子どもたちの学校生活のほとんどを占める授業を、子どもたちにとって楽しく充実したものにする。

生徒指導上問題を起こす生徒は学校や学級の中に居場所がないことが多くあります。どんな子どもも参加できる授業を目指すことは生徒指導上もとても大切なことです。人は周りから認められると「自分はここにいていいのだ」と思えるようになります。そのためには、まず、一人ひとりを受容し、認める授業にする必要があります。その延長上に、「わからない」「できない」という子どもが、「わかりたい」「できるようになりたい」、「わかった」「できた」となる授業があります。これが、楽しく充実した授業の基本です。

・保護者、地域との連携
保護者や地域に学校のことをしっかりと伝え理解してもらう。その上で協力しあう関係をつくる。

学校だけでは子どもを育てることはできません。とはいえ、一方的に協力をお願いしても聞いてもらえるわけではありません。学校の目指すところ、子どもたちの姿を伝えるだけでなく、困っていることも素直に伝えて、初めて学校のことを理解してもらえます。その上で、一緒に考える姿勢で相談し、協力を願えば、必ず保護者や地域は応えてくれます。子どもを育てる仲間、応援団になってもらえば、子どもたちを第三者の視点で批判的に見るのではなく、どう育てるかという当事者の視点で見てもらえるようにもなります。

今年度、たまたま知り合いの校長が生徒指導面で困難な学校に赴任されました。この方が赴任先で最初に職員に伝えたことを知る機会がありました。私がここに書いた内容とほとんどずれがありません。私が学んだことが間違いなかったと意を強くすると同時にこの学校がきっとよい方向に変わっていくと確信しました。この後、学校がどのように変わったか、お話を聞かせてもらうことがとても楽しみです。

子どもの学力を上げるには

子どもの学力を上げるにはどうしたらよいのかと質問される機会がありました。どの立場で考えるかによっても答は違うと思いますが、このことについて少し考えてみたいと思います。

「子どもが自分で学びたい、力をつけたいと思って勉強する」ことが基本になることは間違いないと思います。問題はどうすればそうなるかということです。

学びたいと思うためには、学ぶことが楽しいと思うことが大切です。興味・関心を持たせるような題材を準備するなどの工夫が求められます。

力をつけたいと思うためには、力をつけることが自分にとってどのようなメリットがあるかが明確になることが大切です。しかし、このことは一つ間違えると学習の本質を誤ってしまうことにもなりかねません。学年が進むにつれて、いい学校に入りたい、将来就職に有利になるといった発想も目にするようになります。このような感覚を決して否定はしませんが、このことは、効率的に結果を求める姿勢につながる恐れがあります。試験に出るから覚える、出ないから覚えない、途中の課程はいいから早く答が知りたいといった誤った効率主義に陥ってしまえば、本当の力はつきません。また、効率を求めるようになると、結果がでないとすぐにやる気を失います。
では、どんなメリットが明確になればいいのでしょうか。自分が進歩した、進化したと感じること、「自己有用感」だと私は考えます。そのためには、子ども自身が進歩したと実感できるような評価の仕組みが必要になります。努力の結果が目に見えやすいように、できるだけ細かく目標を設定し、スモールステップで評価することが有効です。評価のサイクルを小刻みにすることで、進歩を早く実感できるようにもなります。

一方、子どもが学びたい、力をつけたいと思っても、どうすれば力がつくのかその方法がわからなければ何ともなりません。どのように勉強すればよいのか、何を頑張ればよいのか具体的にすることが大切です。単にこの問題をやりなさいという指示ではなく、いくつかの選択肢を与えるなど、自分で何をするか考えさせるような工夫も必要になります。このとき、何ができるようになる、何を目標にするかが明確になっていると、自分のやったことと成果の関係をきちんと評価できるので、学習意欲を高めることができます。先ほど述べたようにスモールステップで評価すれば、何ができて何ができていないのかを細かくチェックできるので、努力するべきことを明確にすることができます。

今まで述べたことは、子どもの学習意欲、目標・評価、学習方法の問題といってもよいと思います。意欲があるから結果が出ることもあれば、結果が出たから、興味・関心をもち意欲につながることもあります。単独の問題ではなく、互いに影響しあう問題です。どこかに偏るのではなく、バランスよくそれぞれを意識した取り組みをすることで子どもの学力は上がっていくと思います。

若手が育つということ

先週末、昨年度アドバイスをさせていただいた小学校の校長と若手6人の先生と食事をする機会をいただきました。初めて会ったときは、自信の無さや迷いがいろいろな面で感じられましたが、1年経ってそういったものがずいぶん影を潜め、かわりに言葉や表情から自信が感じられるようになりました。この1年間をやりきった充実感と自分が成長したという手ごたえがその自信の裏付けになっているようです。新年度もこのままやればうまくやっていけるというのではなく、失敗があっても前向きに取り組むことできっとなんとかできるという自信なのでしょう。そこには、子どもからも同僚からも学ぼうとする謙虚さが感じられます。まさに伸び盛りの若者らしい姿です。

会話の端々から、彼らがこの1年を振り返り、新年度のスタートをどのようにしようかいろいろと考えていることが伝わります。互いに気軽にそのことを話し合っていました。いろいろな学校で若手を見ていますが、意外と孤独で同僚に相談することもできなかったりします。この学校では、一緒に教材研究をしたり、アドバイスもみんなで聞き合うようにしたりしましたが、そのことが、彼らが気軽に相談できる雰囲気作りに役立ったのかもしれません。

彼らがこの1年間で大きな成長をした背景には校長の存在があります。今年度は学校の研修を若手中心のものとすることで、若手が互いに学び合い成長することをまず目標としました。そして、その結果ベテランにもよい影響がでることをねらいました。若手を同じフォーラムに参加させることで話をするきっかけとしたり、今回のような機会を設けたりして、互いの人間関係をつくることも意識されていました。彼らが学校の変革への基点となるようにこの1年間育てようとしたのです。
新年度も新人が何名か配属されるようですが、何かあったら彼らに相談するようにと校長は話をされたようです。新人の悩みを自分の経験をもとにきっとうまく受け止めてくれることと思います。

校長の期待に応えてみな大きな成長を遂げてくれました。人事異動で校長は新年度から現場を離れることになりましたが、彼らがきっと学校をよい方向へと進める原動力になってくれると信じておられました。まだまだやり残したこと、やりたかったことがあるとは思いますが、思いを託すに足る若手を育てたことには満足されているようでした。この校長の姿から管理職のあり方を学ばせていただきました。
1年間、彼らの成長に立ち会えたことと彼らを支えた校長の姿を見せていただけたことは私にとっても大きな学びにつながりました。ありがとうございました。
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