介護研修で、債務不履行と個人情報について考える

一昨日、介護関係者向けに研修を行いました。介護の仕事における法的なリスクのお話しの2回目です。

今回は、賠償責任に関連して債務不履行について実例をもとにお話ししました。特に訪問介護では、どのような役務を提供することになっていたかを明確にしておかないと、債務不履行となる危険性があります。とはいえ、役務の内容をすべて細かく契約書に書き込むことは難しいので、コミュニケーションをきちんと取ることが求められます。また、例え食事の介助であっても、その時の利用者の様子を観察したり転倒などの防止に努めたりする責任があります。自分たちがどのような役務があり、どのような責任があるのかを常に意識することが必要です。
また、最近よく言われる個人情報の問題についても考えていただきました。例えば、身寄りがいないと思っていた方から子どもがいることをこっそり教えられたらどうすればいいのでしょう。個人の秘密ですから外部に漏らすのは論外ですが、自分一人の胸の中にしまっておけばいいのでしょうか。とても悩ましい問題です。しかし、利用者の安全や管理上必要な情報であれば、共有することも必要です。この例であれば、万が一のことを考えて機密度を高くして何らかの形で記録に残すべきでしょう。
介護の仕事は個人情報がとても重要になります。利用者の健康状態や生活習慣等の個人情報をたくさん集めることが求められます。個人情報保護を意識しすぎて、情報の収集やその共有を怠るのではなく、漏えいしないような対策をしっかりすることが求められます。

こういったことは学校でも同様です。特にカウンセリングなどについては、どこまで共有するかの判断が必要ですが、少なくとも記録は残しておく必要があります。養護教諭や担任個人の胸の中だけにしまっておくというのは、何かあった時に判断を間違えたり、対応が遅れたりする危険性があるのです。一方スクールカウンセラーのような外部の人間は、校内の人間とは立場が違います。学校に対して個人情報を守秘する義務があります。スクールカウンセラーの判断で情報開示することになります。どのような話があったかについては、こちらからはしつこく聞くことは避けなければいけません。

参加された皆さんは、とても真剣にいろいろなリスクを考えてくださいました。こうして考えることが、リスクを減らすことにつながっていくと思います。いつも思うことですが、介護分野で学んだことは必ず教育にもつながることが含まれています。自分の専門にこだわらずに他の分野に目を向けることの大切さを感じます。
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