発達障害の子どもが学級に多いと感じたら

発達障害という言葉が市民権を得るようになりました。学校現場以外でも耳にすることが増えました。しかし、この言葉が安直に使われすぎているように思います。落ち着かない子どもやコミュニケーションがうまく取れない子どもがいるとすぐに発達障害ではないかとラベルをつけ、ラベルをつけることでうまく対応できないことを正当化しているように感じるのです。私の学級は発達障害の子どもが多いという愚痴を聞くことがあります。中には学級の10%以上の子どもがそうであると言う方もいます。専門家からは10%という数字は統計的に異常値だと聞ききます。発達障害と似た傾向がある子どもをすべて発達障害という言葉でくくっているようなのです。

発達障害がこれほど広く知られていなかった頃は、こういった障害をもった子どもは教師が上手く対応できない子ども、困った子どもと言われていました。今では、発達障害として認知されその対応も研究されてきました。中には薬を使うことで症状が改善される例もあります。そのためか、病院に行って薬を処方してもらうことを安易に望む声も聞きます。専門家による対応を必要とすることもありますが、発達障害のように見える子どもがすべてそうではありません。基本をしっかり押さえて授業をすれば、子どもの行動が改善されることはよくあるのです。「落ち着かない子どもを注意することを止めて、落ち着いた瞬間にほめる」といった、一般的な授業技術を使うことで子どもたちの行動がよい方向に変わる例をいくつも見てきました。発達障害のせいにして、自分の授業を振り返ることをしないために、そういう子どもが多いように見えていたのです。

いろいろと対応を工夫していた教師にとって、発達障害についての知見はとても有用でした。しかし、発達障害が広く知られるようになったためにかえって自分の授業の課題に気づけなくなっていることもあるようです。発達障害の子どもが学級に多いと感じたときは、子どもではなく自分の授業の進め方に問題がないか、一度振り返ってほしいと思います。
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