介護関係者向け研修

先週末に、介護関係者向けのコミュニケーションに関する研修をおこなってきました。今回は、「利用者の家族とのコミュニケーション」がテーマです。利用者を間にはさんで、どのようにご家族とコミュニケーションを取ればいいのかを考えていただきました。

利用者の家族との関係は、相談相手となれることを目指してほしいと思います。お願いされる、お願いするという関係ではなく、利用者のことを一緒に考える関係です。これは学校における教師と保護者の関係に似ていると思います。利用者の家族との信頼関係をつくるためには、まず相手の気持ちをきちんと受け止めることが大切です。自分が面倒を見ないことを心苦しく思っているかもしれません。そういった負の感情を含めてきちんと受け止めることが大切です。子どもの問題は自分の育て方のせいだと苦しんでいる保護者への対応と同じですね。

介護では、家族との連絡を密にとる必要があります。直接会って伝える、電話で、書面で、それぞれで注意すべきことが変わってきます。よかったこと、気になることなど内容でも異なりますが、基本は具体的な事実(エピソード)で伝えることです。「今日は元気でした」では、本当に見ていてくれたのか不安になります。「今日のリクレーションでは積極的に○○して、元気に過ごされました」というように事実で伝えることが大切です。また、利用者によいことがあれば職員もうれしいはずです。家族に直接伝える時は、そのことを態度で示すことも意識してほしいと思います。いくらよかったことを話していても、暗い表情では本当によかったのか不安になってしまいます。
気になることを伝える時は注意が必要です。過度に不安に思われることもありますから、ていねいな説明が必要です。書面よりは直接伝えた方がよいことも多いでしょう。いずれにしても客観的な事実を冷静に伝えるとともに、それに対して自分たちはどのように対応するつもりであるかという対策も合わせて伝えることが大切です。合わせて、ご家族への具体的なアドバイスもしておくとよいでしょう。負の事実を指摘されただけでは不安になります、それに対してどうすればいいのかを伝えることで、不安を和らげるのです。
また一見簡単そうで難しいのが、普段通りに過ごされた時に何を伝えるかです。「いつも通りでした」は、その場にいつもいない家族にとってはよくわからないことです。先ほど述べたように具体的な事実で伝えることが大切です。その日のちょっとした行動、エピソードを一言伝えるだけで印象は大きく変わります。この一言が書けるかどうかは、利用者さんをどれだけ個として見ているかどうかで決まります。漫然と「みんな○○している」と眺めているのか、「△△さんは、○○している。□□さんは××している」と固有名詞で目の前の事実を見ているかの違いです。

利用者と家族の間で気持ちがすれ違うこともあります。利用者は「知らない人と一緒は嫌なので、訪問介護を利用して家でお風呂に入りたい」、家族は「不自由な体で家の小さなお風呂はつらいだろう。デイサービスを利用して広々としたお風呂でゆったりさせたい」と思っていたとしましょう。利用者は「家で風呂に入れるのが面倒だからデイサービスを利用させようとしている」と誤解するかもしれません。互いの気持ちをストレートに伝え合えればこのようなすれ違いはなくなりますが、なかなか難しいこともあります。介護職員には互いの思いを橋渡しすることが求められます。それぞれの気持ちを受容し、互いの気持ちを理解し合えることを第一に考え、聞かれたり、その必要があったりすれば自分の考えを述べますが、そうでなければこちらからはあまり強く主張せずに、できるだけ客観的な事実を伝えることに徹することが大切です。

この一連の研修も今回が一区切りでした。円滑なコミュニケーションは信頼関係をつくる基本です。職員の笑顔が利用者の笑顔に、利用者の笑顔が家族の笑顔につながります。かかわる人すべてが笑顔になること目指してほしいことをお伝えしました。
最後に、「どのような思いで現場に立っているか」「そのためにどのようなことを意識しているか」、そして「まわりからはどのように見えていると思うか」などを互いに聞き合ってもらいました。日ごろなかなか聞けないことを聞くことができたと思います。互いにとても参考になったようです。

介護の世界は、介護職員を教師、利用者を子ども、その家族を保護者に置き換えると、学校現場と似た部分がとてもたくさんあります。参加者の意見や考えから私が学ぶことがたくさんありました。本当によい経験をさせていただきました。皆さんに感謝です。
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