確実な変化が見られる中学校

先日、中学校の現職教育に参加してきました。今年度5回目の訪問で、4回目の授業研究です。この日に授業研究は体育で、私がまだ見たことがないフラッグフットボールの授業でした。指導案からも教材研究がしっかりされていることが伝わります。どのような子どもの姿が見られるのかとても楽しみでした。

授業研究の前に、学校全体の様子を2時間見せていただきました。一部の先生を除いて教師が一方的にしゃべる場面を見ることがなくなりました。子どもの言葉から授業を進めようとしています。子どもを受容することと合わせて、この学校に定着してきています。確実によい変化が現れています。ただ、子どものつぶやきに対してすぐに個別に反応する場面が目につきます。全体で共有すべきことであれば、まず全体に対して再度言わせて、みんなで考えることが必要です。そうでなければ、あとで個別に対応すればいいのです。全体の場で個人的なやり取りは必要ないのです。
子どもに発言を求めるのはよいのですが、挙手をした子どもだけを指名する傾向が強いように感じます。挙手した子どもだけで授業を進めるのではなく、全員が参加することを意識してほしいと思います。「すぐに指名をせずにまわりと確認させる」「1問1答を避け、挙手に頼らず何人も続けて指名する」「発言をなるほどと思った子どもにその理由を聞く」というように、子ども同士をつなぎ、子どもに参加することを求めてほしいと思います。

また、子どもの発言意欲も少ないように感じます。ほぼ全員が正解できているはずでも、数人しか手が挙がらない場面がよくあります。その原因の一つに、子どもたちの発言をポジティブに評価していないことが上げられます。受容はするのですが、評価や価値づけがないのです。よい発言をしても評価されなければ発言意欲はわきません。
もう一つの原因は、課題のゴールが不明確で活動の評価がはっきりしないことです。活動に対する指示はあるのですが、「何のために」「どうなればいいのか」という目的と目標が子どもたちにわかる形で示されていないのです。教師が評価しなくても、「やった」「できた」と自己評価ができれば、それなりに達成感があるのですが、その評価の基準が見えなくては自己評価できません。ただやらされているだけす。当然発言意欲もわかないのです。

授業規律も一部の学級で緩んできているように思います。よい状態の学級は、教師や友だちの発言をとても集中して聞いています。が、子どもたちの作業を止めずに教師が説明を始めている学級では、子どもが落ち着きません。作業が終わったら大きな声で「終わった」と宣言したりもします。次の指示がないので、まわりと雑談してもいいはずだと主張しているのです。基本がいつの間にかおろそかになっています。
今年度も残りわずかですが、これらの課題への対策を具体的にして、年度内に取り組んでいくことが必要です。研修部のメンバーは実行力のある方たちですから、すぐに動いてくれることと期待しています。

社会科の室町時代の授業です。東山文化と北山文化について、代表的なものの写真をもとに「比べてわかること」を個人でワークシートに書かせていました。指示が具体的なので取り組みやすいのでしょう。子どもたちはとても集中していました。この比較することが授業のゴールであればいいのですが、おそらくそうではありません。とすると、このことに時間をかけすぎてはいけません。一番考えさせたいことに使う時間がなくなってしまうからです。授業者に確認したところ、2つの文化の違いの原因を考えさせることで、かかった費用の違いから「戦乱」、いぐさの利用から「二毛作」というように、室町時代の出来事や特徴を整理させたかったということです。しかし、比較に時間をかけすぎて、時間が足りなくなり十分な活動ができなかったようです。「比べてわかること」は、取り組みやすいからこそ全体の場で発表させることで素早く共有し、出てきたことをもとに主となる課題を考えさせるべきだったと思います。

何人もの若手がアドバイスを聞きに来てくれました。この日見た授業のことだけでなく、今抱えている課題について質問もしてくれました。
「理科の岩石の授業は、観察はしても最後は石の組成などの知識を教えることになってしまう。どのようにすればいいのだろうか」という質問をしてくれたのは、2学期の授業研究でとても素晴らしい授業を見せてくれた若手です。この日の授業でも、子どもたちはとても集中していて、素晴らしい姿を見せてくれました。授業者からは自信も伝わってきます。しかし、そのことに甘んじることなく、よりよい授業を目指していることをとてもうれしく思いました。
まず、岩石の観察で見つけたことを、「黒い粒がある」「粒が大きい」・・・といった子どもたちの言葉で表現させ、全体で共有させます。続いてこれらを比較することで、共通なこと、異なることを明確にします。これらの子どもたちの気づきを、教科書や資料集を参考に理科の用語を使って表現することを次の課題にします。「黒い粒」は「雲母の結晶」、「粒が大きい」は「結晶が大きい」というように置き換えていくことで、知識と自分たちの観察がつながっていくはずです。このようなアドバイスをしました。

「体育のダンスの授業でどうしてもうまくできない子どもが何人かいる。この後のグループでの創作活動で上手く仲間に入れないのではないか心配だ。どうすればいいのだろうか」という質問がありました。初任者ですが、子どもたち全員が活動できるようにすることを意識して授業をしています。子どもたちを活動させることができるようになり、表情がずいぶん明るくなっています。授業が楽しくなってきたようです。だからこそ、出てきた質問です。
音楽の速さについていけないのであれば、音楽ばかり頼らずにカウントを使って練習することも一つの方法です。教師が個別に対応しようとするより、子ども同士のかかわりあいでできるようにすることも大切です。向かい合ってカウントを取りながら同じ動きをする。できる子が相手に合わせて早さを調節する。苦手な子のペースでできる子を真似することで動きを覚えることができます。子ども同士がかかわらなければできない活動を工夫するのです。また、グループの創作では全員が同じ動きをするのが原則かもしれませんが、苦手な子と他の子どもとの動きを変えるという方法もあるでしょう。苦手な子どもの単純な動きとまわりの子どもの動きのコントラストを活かそうという発想です。苦手な子どもを隅に置くのではなく、あえて真ん中にして活かすのです。
この課題は、今回の授業研究にもつながることでした。授業研究については次回の日記で。
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