小学校で授業アドバイス

先週末は小学校で授業アドバイスをおこなってきました。今年度4回訪問させていただくことになりました。20代の若手を中心におこないます。

今回は空き時間の方と一緒に解説も交えて授業を参観しました。共通していたのは次のようなことでした。

・指示がまだ通っていないのに次の場面に進む。
・作業中に追加の指示をするので、徹底しない。
・友だちの意見を聞くことを意識させていない。
・作業が早く終わった子どもへの指示が予め用意されていない。
・一つひとつの場面で、子どもにどうあってほしいか意識できていない。
・挙手指名だけで進むので、わかった子どもしか参加できない。
・一問一答が多い。
・子どもの外化を評価しない。
・ほめる言葉が少ない。
・・・

授業規律がまだ十分に確立していないようでした。子どもたちも落ち着いていますので、今の時期であれば教師が意識をすればまだ簡単に改善できます。子どもをほめることで授業規律をつくるようお願いしました。

いくつかの面白い場面や気になる場面がありました。
授業中に前の席の子どもが身を乗り出して水槽を見ています。時々先生の方を見ます。授業者はそれに気づきました。ここで、すぐに注意をするかと思いました。この先生は、できていないことをチェックする視点で子どもたちを見ていたからです。しかし、何も言わずにその子どものそばに行きました。授業者の顔が笑顔になりました。飼育していた蝶が羽化していたのです。子どもはそのことを伝えたかったのでしょう。しかし、声を出して授業を中断するわけにはいきません。そこで先生に気づいてほしいとサインを送っていたのでしょう。授業者の笑顔がその子どもにはとてもうれしいものだったに違いありません。
授業者は中断しようかどうか少し悩みましたが、列ごとに素早く見るように指示をしました。私たちが授業を見ているので、あまり中断させたくなかったのでしょう。早く席に戻るように指示をします。「ちゃんと見えた?よかったね」「じゃあ、席に戻ろうか」と、まず見ることができたかを確認してあげてから、戻るように指示をする。こうすることで子どもたちも納得してもう少し素早く動けたかもしれません。
この先生には笑顔を増やすことと同時に、「できない子どもを減らそうとするのではなく、できる子どもを増やそうとする」ことをお願いしました。私の言いたいことはすぐに理解していただけました。とてもよい感覚を持っている方です。本人もきっと子どもをもっとポジティブな視点で見たいと思っていたのでしょう。
その日あった道徳の時間で意識して笑顔をつくってみたところ、子どもたちがとても集中してくれた。余裕を持つことができて、授業時間が短く感じられた。あとで、こう報告してくれました。すぐに実行する、とても素直な方です。よい手ごたえを得てくれたことをとてもうれしく思いました。

他の地区からこの学校に移ってこられた先生がいました。とても柔らかい表情でうなずき、子どもたちをとてもよくほめます。以前勤務されていたところは、生活指導面で大変な時期があった学校だったようです。その学校はそれを乗り越える過程で子どもたちを受容することを大切にしてきたのでしょう。この先生の姿はそのことの現れのように思いました。
子どもが発言する場面では、子どもをしっかりと見ながら話を聞きます。しかし、発言者だけを見ていて、他の子どもを見ることはしていません。子どもたちも先生を見ていて発言者を見ていません。子ども同士をつなぐことを意識して、学級全体を見るようにお願いしました。子どもたちとの関係をしっかりつくることができる方なので、視点を変えればすぐにできるようになると思います。

子どもたちが積極的に参加している国語の授業がありました。説明文の構成を考える場面で子どもたちが自分の考えを発表します。一生懸命考えたのでしょう。しっかりと友だちの発表を聞いています。授業者も、同じ考えの子どもがいるか確認をしているので、指名されなかった子どもも認められたと感じているのか集中力を切らしません。いくつかの考えが出てきました。どれが正しいのだろうと、子どもたちは真剣です。ここで授業者は説明を始めました。「・・・だから、これは・・・でなければいけない。だから、これは×」と一つの考えに大きく×をつけました。子どもたちの中から何ともいえない空気が漂ってきます。一緒に授業を見ていた先生は、一言「悲しい」とつぶやきました。子どもの気持ちになっての言葉でしょう。とてもよい感覚を持っている方です。説明が続くにつれて、今まで集中していた子どもの意欲がみるみる下がっていきました。ネガティブな評価は子どもたちの意欲を低下させることがよくわかります。
時間がかかるかもしれませんが、考えの異なる点を焦点化しながら子どもたちに説明させ、自分たちで結論を出させるようにしたいところです。友だちの説明を聞いてなるほどと思えば考えを変えてもいい。考えを変えたことを評価すれば、間違えていた子どもも決してネガティブな気持ちにはなりません。とはいえ、このような進め方は決して簡単ではありません。次の課題でしょう。

6年生の社会科で、遣唐使に関する川柳をつくる授業がありました。なかなか挑戦的な試みです。つくった川柳をグループで1つに絞り黒板に書かせます。書き終わったところで時間がなくなってしましました。川柳をつくらせたねらいを授業者にたずねると、出てきたキーとなる言葉を子どもたちに問い返しながら、知識の確認をしたかったようです。この授業は学年で共通に取り組んでいるようでした。よいチームワークだと思います。
川柳をつくるには遣唐使に関する知識が必要で、それを教える時間とつくる時間が必要なので時間が足りなくなった。どうすればよかったのかと質問をいただきました。ポイントは、知識は原則「教える」か「調べる」かしかないということです。どちらを選ぶかの判断が大切です。川柳をつくるのは子どもが主体の作業です。教師主体の「教える」ではなく子どもが主体となる「調べる」作業と一体化することで時間を節約することができます。ここで大切となるのは調べる必然性を、川柳をつくる作業の中に組み込むことです。たとえば、「教科書や資料集にある用語を必ず入れるように」といった条件をつくるのです。評価の基準も「用語をうまく使っていて、なるほどと納得できるもの」というように用語を意識したものにします。グループで一つに決めるということはせずに、「たくさん集める」「自分が一番いいと思ったものを選ぶ」「自分が選んだものに使われている用語を説明できるようにする」といったものにすることで、知識の獲得と川柳が結びつくと思います。発表も個人でおこないながら「同じ用語を使った人」とつなげていき、その用語がどこにあるか他の子どもに調べさせたりすることで全員が参加することが可能になります。このような展開を考えました。私にとっても学びの多い授業でした。

以前この市の他の小学校でも授業アドバイスをさせていただいたことがあります。その学校でも、初めて授業を見たときに基礎的なことができていないと感じる部分が多くありました。しかしその後、みるみる進歩していきました。先生方がとても素直で前向きだったことが印象に残っています。この学校の先生方もその点は全く同じでした。この市の先生方の特徴なのかもしれません。きっと同じように大きな進歩を見せてくれることと思います。次回の訪問が今からとても楽しみです。
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