学習会で「コの字の机配置」「4人グループ」について話す

先日、学び合いに取り組んでいる市の中学校で学習会の講師をしました。若い職員が増え、「改めて、足下を見つめ直そう」ということで、「なぜコの字の机の配置なのか?」「なぜ4人グループなのか?」ということについて、4月のこの時期にお話をさせていただくことになりました。

コの字の机の配置のよさについては皆さんきちんと理解されているようでした。子どもが友だちを聞き手と意識して話す。聞き手が話し手をしっかり見て聞く。そのような子どもの姿をつくるためには、子ども同士が向き合うコの字の配置が優れているのです。その目指すところを活かすためのポイントをいくつかお話しました。
子どもの視線が子どもに向かなければコの字にする意味がありません。子どもが話しているときに、視線を他に奪うような行為は避ける必要があります。
教師が教室の前に立つと子どもどうしてもそちらを見ます。発言者が教師の方を向いて話し始めたら、友だちの方を向くように指示します。発言中に他の子どもの視線を感じたら、子どもの発言をじゃましないように目や手を使って、話し手の方を向くよう促します。教師がコの字の中に入ることで、視線を中に向けるようにするのもよいでしょう。子どもたちの姿勢を変えることなくやり取りができます。子どもと同じ目の高さまで教師が姿勢を低くすることも有効です。こうすることで、子どもの目線は教師ではなく友だちに向きやすくなります。
話している途中に教師が板書すると、子どもの視線は黒板に移ります(子どもの発言、意見をすぐに板書しない参照)。途中で問い返したりすることもできるだけ避け、途中で言葉をはさむ場合は、視線が大きく動かないようにコの字の中に入るようにします。
もう一つ大切なのが、聞き手が反応することです。友だちを見て話すということは、その反応を見るということでもあります。子どもたちが、うなずきながら聞く、よくわからなければ首をかしげるといった反応をする聞き手に育っていることが大切です。子どもの発表場面だけでなく、教師が話をする場面、授業以外の場面などいろいろな場面で、「○○さん、うなずきながら聞いていたね。△△さん、気づいていた? どんな気持ちがした?」「今うなずいてくれた人がいるね。納得した?」「首をかしげてくれたね。反応するのはとてもいいことだね。何か困ったことがあったのかな? 聞かせてくれる」と反応することを価値づけして聞く姿勢を育てる必要があります。
机をコの字の配置にすれば、子ども同士がかかわり合って話す、聞くようになるわけではありません。教師の意図的なかかわり方が必要になるのです。

4人グループについて、ペア活動との違いをお話ししました。ペアは1対1ですので逃げられない関係です。小学校の低学年では抵抗がありませんが、自我が発達してくる中学年以降はうまく成立しないこともよくあります。その点4人グループはペアよりも緩い関係です。子どもたちにとってよりかかわりやすい場となります。中学校ではペアよりも4人グループの方が使いやすいのです。
4人グループに限らず、学び合いを成立させるためのポイントは「聞く」ことです。一方的に教える、教えられる関係になってはいけません。子どもがわからなければ自分から聞き、聞かれたら一生懸命教える、こういうかかわり方が大切です。友だちに聞ける子を育てるためには、教わることへの抵抗感をなくすことが必要です。その第一歩として、個人作業の共同化があります。聞けなくても、友だちの手元を覗くだけでもよいのです。こうしてわかる経験を積むことで友だちに頼る、聞くことへの抵抗感をなくしていくのです。
4人グループのよさの1つに、活動量の確保ということがあります。子どもたちが活発に活動しているように見えても、実は発言しているのは一部の子どもだけで、多くの子どもは傍観者になっていることもよくあります。4人グループにすることで、子どもたちが積極的に参加する機会を増やすことができます。とはいえ、何でも4人グループにすればうまくいくわけではありません。課題の内容、課題の把握や出力、教師のかかわり方など、4人グループを活かすためにはたくさんの要素を考える必要があります(グループ活動を活かすために参照)。

先生方の考えを拾いながら進めたかったのですが、時間の関係もあり後半は一方的な講義になってしまいました。それでも、皆さん集中して話を聞いていただけ、とてもうれしく思いました。

学習会終了後、英語の若手教師が質問に来てくれました。GDM(「GDM英語教授法研究会」参照)を取り入れている方です。GDMのように、1時間に1つのことをいろいろな形で考え、基本的に個人で取り組むものであれば、最後まで頑張って理解することができる子どもも、教科書や問題演習のように一定時間でこなさなければいけない課題のときに、うまくまわりとかかわれなくて、結局教師が個別に対応しなければならなくなることがあるそうです。どう対応すればよいかという質問です。GDMのようにすべて英語で進む授業でも、最後まで頑張ればわかるという成功体験をしていれば頑張れるものです(子どもが積極的になるには参照)。しかし、限られた時間の中でこなす課題の時には、なかなかそうはいきません。自力では解決できない、うまく友だちとかかわれないのであればどうしても教師が助けてしまうことになります。しかし、教師に教えてもらって解決する経験を積むと、ますます教師に頼り友だちとかかわれなくなります。なんとか友だちとかかわれるようにする必要があります。「聞いてごらん」と友だちにつなぐことはきっとしているのだと思いますが、聞かれた側にわかるまでしっかり説明することを徹底することが必要かもしれません。先ほども述べましたが、最初は友だちの答を覗く、写すところから始めてもよいかもしれません。友だちとかかわることでうまくいくという成功体験を、まず積ませるのです。
とても真剣に授業に取り組んでいるからこそ出てくる質問でした。明確な答を出すことができなくて申し訳なかったのですが、私にとってはかかわれない子どもにどう対応するかを考えるよい具体例になりました。ありがとうございました。

いつものことですが、私がお話する以上に先生方から学ぶことが多い1日でした。先生方に感謝です。
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