「劇で語る! 校務の情報化」で、校務の情報化のポイントを伝える(愛される学校づくりフォーラム2013 in 東京 午前の部)

愛される学校づくりフォーラム2013 in 東京」が無事に終了しました。今年も多くの方に参加いただき盛況のうちに終了しました。いつもながらこれだけの会を運営することは、企業会員からお手伝いいただくスタッフの協力あってのことです。感謝以外の言葉がありません。午前の部はその企業会員も参加しての「劇で語る! 校務の情報化」です。愛される学校づくり研究会の個性ある会員による5つの劇団が登場して、校務の情報化がなぜ必要なのか、どのように学校力の向上に役立つかを具体的な場面で伝えます。学校現場で忙しい会員たちです、一堂に会しての練習時間はもとより取れません。練習不足で思わぬ失敗が続くのではないのか。そんな心配も密かにしていたのですが、全くの杞憂でした。会場へ向かう新幹線の中で、乗客の怪訝な視線に耐えながら東京まで練習を続けた会員もいます。会場の隅で開始まで練習をする姿も見えました。日ごろ子どもたちに努力や工夫の大切さを説いている先生方です。さすがに言行一致しています。いやいや、先生方だけではありません。企業会員の中には仕事で移動中に台詞の練習をしていた方もあったそうです。(社長さん、職務専念義務違反なんて固いことは言わないでくださいね)
本番は、笑いも交え、観客の皆さんにわかりやすく伝えることができたと思います。

司会は玉置崇先生です。幕間は座長と国際大学GLOCOMの豊福晋平先生、私へのインタビューで進んでいきました。いつものことですが、劇とその場の観客の雰囲気に応じて玉置先生は変幻自在、質問に関する打ち合わせはあってなきがごとし。思わぬ方向から切り込まれます。私としては劇を素直に楽しむ余裕はあまりありませんでした。

ライブ映像をお見せできればよいのですがそれもかないませんので、各劇団が劇を通して伝えたかったことを私なりに整理したいと思います。

鈴木劇団は、「業務時間の短縮、素早い情報共有」がテーマです。
朝の打ち合わせなどで、共有すべき情報を毎回口頭で伝えたり、その都度印刷したものを元に説明したりしていることがあります。学校内で閉じたネット−ワーク上で共有すれば、読んだだけで十分伝わる情報は一々確認する必要はありません。各自の端末で情報が読めるのであれば、必要なもの以外印刷する必要はありません。資源のムダも省けます。事前に余裕のあるときにデータをアップしておけば済むので、うっかり忘れも防げますし、時間も有効に使えます。これらのことは先生を楽にすることが目的ではありません。業務時間の短縮は、浮いた時間を本来教師が一番使いたい、子どもとかかわることや本当に必要なことを話し合うために使うことが目的です。素早い情報交換は、情報を共有化することで、子どもたちに対して組織としてよりきめ細やかな対応をするためです。

小西劇団は、「データ蓄積と活用、いいとこ見つけ」がテーマです。
過去の資料を書類の中から探すのは大変なことです。前年度の担当者が異動でいなくなったりした時は、その引継ぎも十分にできないことがあります。行事への思いやねらい、反省も、いつの間にか風化してはっきりと思い出せなくなってしまいます。ネットワーク上で共有しておけば、検索することで計画案だけでなく関連するものをすべて手に入れることができます。データの形で蓄積されているので、修正しての活用も容易です。
職員会議も議題とその資料を事前にネットワーク上で共有して、予め意見を募っておけば、必要なことに絞って議論することができます。
経験の浅い先生にとっては、通知表の所見などはどのように書いてよいか悩むところです。書籍等で勉強することもできますが、子どもの過去の所見から具体的に学ぶことがとても有効です。個人の履歴がネットワーク上のデータベースに蓄積されていることで、過去の通知表の内容なども簡単に閲覧することができます。
また、多くの職員で子どもたちのよいところを見つけ、データベース上で共有する「いいとこ見つけ」で、担任だけでは気づけない一人ひとりのよさを知ることができます。いろいろな視点から見た子どもたちのよいところを通知表の所見に活かすだけでなく、子どもたちに伝えることで、自己有用感を高め、同時に教師への信頼を深めることができます。校務の情報化を考えるとき、データベースに何を蓄積するかはとても重要な課題なのです。
劇中、情報機器の操作について困った時は「川本先生!」という場面が何度も出てきました。得意な先生になんでも聞いて負担が集中してしまうという学校でよく見られる風景を、笑いを取るためにカリカチュアライズしたものです。もちろんこれがよいことだと主張しているわけではありません。会場の皆さんには気づいていただけたことと思いますが、「川本先生」がちょっと不機嫌に見える演技をしていたのはそれを伝えるためだったのです。

平林劇団は、「ネットで学校比べ、コミュニケーション活性化」がテーマです。
保護者は学校のホームページを見比べています。自分の子どもの通う学校がどのような情報を発信しているか、とてもシビアに見ています。行事ごとにしか更新されないようでは、学校が自分たちの教育活動を保護者に伝える気がないと思われても仕方がありません。いわんやホームページがないというのは論外です。ホームページは、保護者の信頼を得るための重要な手段となっています。愛される学校づくり研究会の先生方の学校のホームページでは毎日更新は当たり前のことです。更新頻度ではなく、どのような情報をどのような形で伝えればよいのか、その質を競い合っています。
しかし、残念な情報が豊福先生から発表されました。この1週間で4日以上更新した学校はわずか7%しかないというのです。それどころか、1度も更新しなかった学校が半分以上なのです。ホームページの活用をもっと意識してほしいと思います。
また、ホームページは保護者や地域の方々への情報発信ツールと思われがちですが、決してそれだけではありません。管理職やリーダーが教職員と直接話す機会は限られていますが、学校の目指すところ、子どもたちのよい姿などを外部に対して発信する形をとって、間接的にメッセージを送ることもできるのです。ホームページで「学校ではこんなことを目指しています」と発信すれば、保護者はそれが学校全体でおこなわれているものと思うはずです。保護者がそう思うと教職員が考えれば、管理職が直接言うよりもよほど意識してもらえます。
学年や教科、行事の担当者などがそれぞれ発信するようになれば、教職員間のコミュニケーションの活性化にもつながります。教職員のベクトルも揃っていきます。学校ホームページにはこういう内向けの発信という活用方法もあるのです。学校経営になくてはならないツールとなってきていることがおわかりいただけると思います。

中林劇団は、「安心と安全のお届け、緊急メール発信」がテーマです。
修学旅行などの宿泊行事などでは、保護者は我が子が無事に過ごせているかとても気になるものです。ホームページで逐次状況を報告することで安心を届けることができるのです。こういった宿泊行事の時のアクセス数は通常の何倍にもなることからも、保護者の関心が高いことがよくわかります。
また、台風の接近時など、緊急時に家庭に対して学校の対応などを素早く確実に伝えることはとても大切なことです。従来の電話連絡網では、全員にいきわたるには何時間もかかってしまいます。それに対して電子メールを活用した緊急メール配信は、短時間で確実に情報を伝えることができます。システムがきちんと構築されていれば、電話連絡網をつくって配布することと比べて、登録などの手間もわずかで済みます。しかし、年に1回あるかないかの発信では、肝心な時にメールアドレスが変更になっていて届かないといったことにもなりかねません。定期的に発信をして、メンテナンスをすることも重要になります。
社会が変化している中、子どもたちの安全に直接かかわる情報の提供は当然のことです。それを怠ることは信頼をなくすことにつながります。企業では存在そのものが揺らぐことにもなりかねません。いかにコスト(金銭だけでなく人的も含む)をかけずに実現するかは学校の大切な課題なのです。

水谷劇団は、「小刻み学校評価、短時間で集約と発信」がテーマです。
学校評価が義務づけられていますが、実際には集約作業に時間がかかり、その大変さから年に1度、保護者アンケートを形式的におこなって終わりという学校をよく見かけます。保護者の側も、何か月も前のことを聞かれても覚えていなかったり、たずねられている内容がよくわからなかったりするために、いい加減な回答になってしまうことがよくあります。アンケートの集計結果が発表されたときはもうすでに学年末で、どのように改善するのかも曖昧で、改善されたかどうかの評価も結局うやむやになってしまっていることもよくあります。
こういう状況を変えるのにアンケートシステムが有効になります。WEB上にアンケート項目や集計期間などを設定するだけで、保護者が携帯電話やパソコンから簡単に回答できるようになります。集計も自動でおこなえるので、今までに集計にかかっていた時間を集計結果の細かい分析に充てることができます。手間がかからないので、行事ごとにアンケートを取ることも苦になりません。とはいえ、より正確な評価をいただくためにホームページなどでの情報発信は欠かせません。学校が目指すこと、学校で起こっていることを正しく伝えることでより正確な評価を得ることができます。手軽にできることを活かして、小刻みに学校評価を実施することで、その結果を素早く学校経営に反映させることもできます。「どうせ学校に言っても変わらない」そう考えている保護者も、学校が外部の意見を真剣に受け止めて変わったことに気づけば、学校に対する評価をあらため、信頼するようになります。学校評価は前向き活用すべきことです。そのためには、集計といったムダな時間を削減し、大切なことに時間を割けるようなシステムが必要なのです。

最後に司会者から「学校の情報化を進めるためにどうすればよいのか」ということを問われました。

情報機器の整備が必要といった問題はひとまず脇に置いて、学校の情報化は何のためか今一度考えてほしいと思います。子どもたちの成長のためのよりよい環境をつくるための手段が校務の情報化です。情報機器やシステムがないからといって何もしないのではなく、今ある環境で何ができるかということを考えてほしいのです。たとえば、学校通信を毎週保護者向けに出すことでホームページのねらいの一部を実現できます。これも立派な校務の情報化です。何もしないで予算をほしいと交渉するのでもなく、ただ整備されるのを待つのでもなく、一歩でも前へ進むような動きをしてほしいのです。その姿がまわりを動かし、予算もついてくるのです。どうすれば「子どもたちのため」の時間をつくることにつながるのか、どうすることが「学校の信頼」を得てよりよい教育のための応援団を増やすことにつながるのか、このことを考え具体的に行動していくことが学校の情報化につながっていくのです。

このようなことを話させていただきました。
参加者の方々にとても真剣に聞いていただいていることが、張りつめた空気から感じました。きっと私たちの主張をしっかりと受け止めていただけたことと思います。それぞれの学校で校務の情報化を進める参考になれば幸いです。
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