幾何ツールを使った授業研究会で学ぶ

昨日は幾何ツールを使った授業研究会に参加しました。

この研究会では、1人の授業者が同じ教材で2度授業をします。1回目の授業後の検討会での意見を受け、その場で修正して次の授業にのぞみます。修正はあくまでも授業者の自由意思でおこないますので、言い訳はできません。授業者にとってはとても厳しいものです。今回の授業者は、研究会をきっかけに成長している先輩に続こうと、自ら手を挙げてくれたそうです。この前向きな姿勢に頭が下がります。

iPad上で動く幾何ツールの活用がテーマの研究会ですが、話題の中心は常に子どもたちの活動であり学びです。そのための道具として幾何ツールが有効であったか、どう扱うべきだったかが語られます。
1回目の授業で一番の話題となったのは、「2つの四角形にどのような関係があるのか」という課題をスモールステップで解決させるか、自由に取り組ませるのかでした。

授業者はまず長方形という特殊な場合を例にとりあげ、それから課題に取り組ませました。子どもたちは4人グループで課題に取り組みます。幾何ツールを使って図形を動かしてみるのですが、四角形が平行四辺形の場合や台形の場合にどうなりそうだという見通しをもった時点で幾何ツールから離れ、証明に意識が向かいました。個人で証明しようとしているグループが目立ちました。
この後、全体で発表がおこなわれました。平行四辺形の場合、台形の場合と子どもが説明をします。聞いている姿は、同じものに取り組んだ子どもとそうでない子どもで違うように感じました。同じものに取り組んでいない子どもは、すぐに説明を理解できていないようでした。一方、同じものに取り組んだ子どもは、自分の考えと比較しながら聞いている子どもと、自分はできているからとあまり集中していない子どもに分かれているようでした。このような違いが出てきた要因の一つに、個々が取り組んだものが課題として共有されていないままに説明が進んでいることがあると思います。
最後に「何でもない四角形」の場合が発表されました。一般化です。このとき、子どもたちの集中は明らかに違っていました。自分たちが考えていない視点だったからでしょう。説明を全体で共有して時間となりました。

長方形の場合を軽く扱ったあと、他の四角形の場合はどのようになるかと中間の課題を提示する。一度全体で共有してから、一般化に取り組むことでスモールステップをはっきりさせるとよいという意見。こうすることで子どもたちを共通の土俵にのせることができ、子ども同士がつながりやすくなるということです。
一方、「どのような関係があるのか」とだけ課題を与えて自由に取り組ませる。どんなことに気づいたか、困ったことがないかを発表させた上で焦点化し、再度課題に取り組ませるとよいという意見。こうすることで子どもたちが自ら見つけた課題に取り組むことになるので意欲が高まり、活動が活発になるということです。
共に、子どもたちの活動をより活発にし、かかわり合いを増やしたいという視点での意見です。どちらが正解というわけではありません。面白いのは、課題に取り組んで発表して終わりではなく、途中に共有化する場面を設けることは共通しています。
授業者がどのような選択、判断をするのか次の授業が楽しみです。

次の授業では、長方形の場合を確認した後、「さわりながら」「次の図」と「切りかえる」と幾何ツールの活用を意識した言葉を少し付け加えました。子どもたちの動きは前回と明らかに異なっていました。幾何ツールを触り続けています。「次の図」という言葉が効いたのでしょうか。いろいろな図をつくっては、検討しています。
続いて、どんなことを調べようとしているか発表させました。「平行四辺形の場合・・・」「台形の場合・・・」と発表され、課題が共有化されました。
「証明してください」という授業者の言葉で、今度は幾何ツールから離れて証明に取り組む姿が増えました。課題が明確になったためか、「台形って何?」「平行四辺形は台形だよね?」といった子ども同士で問いかける言葉も聞かれます。明らかに子どもたちのかかわりが増えています。
発表の時も、説明を聞いた後グループで確認をする場面を設けました。
授業者はすぐに修正できそうなことに絞って、修正をしましたが、前回と比べて子どもたちの反応かなり変わっています。ちょっとした言葉で幾何ツールもずいぶん活躍しています。授業の面白さを感じました。

1回目の検討会では授業の進め方に焦点が当てられましたが、2回目は子どもたちのようすが違っていたため、子どもたちの活動に焦点が当てられました。

定義や性質を確認する「学びなおし」が起こっていた。
自分の課題に集中している子どもは、友だちの発表の時も顔を上げずに自分の課題に取り組み続けた。
この学校の子どもたちは正解を発表しなければいけないという意識が強い。
・・・

子どもたちの事実がたくさん語られました。
正解ではなく、「こんなことに気づいたが、そこから先がわからない」といった困ったことを発表して共有できるとよいといった意見に授業者が「はっ」とした表情が印象的でした。
教科の仲間と多くの時間をかけて準備をしてのぞんだ授業です。だからこそ、授業者には多くの気づきがあったことと思います。
各グループの活動を撮影してくれた学生の方からも、子どもたちのようすや感想を聞くことができました。学生の発表の時、その前に座っていた先生が発言者に向かって体をひねっていました。さすがに学び合いを大切にしている先生方は、自身もそのことを実践しているのだと感心しました。

授業者、参加者それぞれの立場で多くの学びのあった研究会でした。授業者、授業者の同僚、参加した先生方、お手伝いいただいた学生、そしてこの会を企画していただいている大学の先生、皆さんに感謝です。
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