キレる子どもと言語活動

言語活動の重要性がよく言われます。子どもの精神面の発達においても言語活動は大きな意味を持っています。
たとえば、「キレる子どもは、言葉が先にキレる」ということをよく聞きます。自分の気持ちをうまく伝る言葉が見つからなくて、言葉が途切れて、そしてキレた行動をしてしまう。大人だってこのような状況になることはあります。人がキレるときは、コミュニケーションがうまくとれないときが多いのです。自分の気持ちを表現する、うまく相手に伝えるということは決して簡単なことではありません。

こういうキレやすい子どもの対応を考えることは、学習活動における言語活動を考えるヒントにもなります。
実際に子どもがキレてしまった場合、大きな声で叱ったりすることはより興奮させて逆効果になります。大丈夫だとやさしく抱きかかえてあげる、落ち着くまでじっと見守る、別の場所に連れて行って一人にしてあげるなど、まず落ち着かせることが一番です。
ここで、子どもをしかるのではなく、自分の気持ちを言葉にすることを意識します。

「どうしたの」
「むかついた」
「何にむかついたの」
「よくわからない」
「むかつく前に何があったか教えてくれるかな」
「△△君に『ボールを貸して』って言った」
「ボールがほしかったんだね。そしたら」
「『今、□□君と使っているから嫌だ』と言われた」
「嫌だと言われたんだ。それで」
「むかついた」
「そうか、その後どうしたの」
「ボールをとって、放り投げた」
「○○君は、ボールを放り投げたかったのかな」
「よくわからない。気がついていたら、放り投げていた」
「本当にボールを放り投げたかったのかな」
「よくわからない」
「○○君はボールを放り投げたかったんじゃないと思うよ。○○君は、本当はどうしたかったんだろう。一緒に遊びたかったのかな」
「うーん、そうかもしれない」
「一緒に遊びたかったんだ。それなのに嫌だと言われて仲間外れになった気がしたのかな」
「なんか、はじかれた気がした」
「そうか、はじかれた気がしたんだ。それで、ボールを放り投げちゃったんだ。じゃあ、どうすればよかったんだろう」
・・・

言葉がキレてしまう子です、なかなかうまく伝えることができないかもしれません。辛抱強く一つひとつ聞いてあげます。うまく言えないときには「・・・と思ったのかな」とこちらから言葉を向けたり、それはこういうことではないかと整理してあげます。そして、自分の感情は何だったかを気づかせ、言葉にしていくのです。

言葉を習得していくには、実際にその言葉が生きた状況で使われる、使う必要があります。「むかつく」という言葉でしか伝えられない子どもには、そのときの自分の感情や状況を言葉を使って相手に伝えるという経験をさせる必要があるのです。学習活動における言語活動も同じです。伝えるべきものがあって、それを伝える経験をすることが大切です。そして、このとき伝えるべき相手がきちんと聞く姿勢を見せる、またわからないことがあれば質問するといったコミュニケーションが成り立つような工夫が必要なのです(言語活動を支える力をつける参照)。
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