ICT活用の公開授業で考える

先月、私立の中学校高等学校のICT活用の公開授業を見学してきました。今後小中学校で1人1台環境が急速に普及してくると思いますが、その時どんなことが起こるかを考えるよいきっかけとなりました。

教室を回っての第一印象は、ICTを活用するねらいがはっきりしていない授業が多かったことです。悪い言い方をすれば、ICTを無理して使っているということです。例えば、小テストを個人のタブレットに送って解かせる場面がありました。できた子どもは端末で解説を見ていますが、それで理解したかどうかはわかりません。紙の小テストを単に置き換えただけで、そこにICTが関与する意味をあまり感じませんでした。紙を配る時間と解答をする時間を省略したということでしょうが、それだけではあまりにもったいない気がします。これに限らず、紙の代わりにタブレットに情報を配信するといった使い方が多かったように思います。タブレットを子どもたちの思考を広げたり、深めたりするような道具として利用するような活用が見られなかったのが残念です。
この学校ではこれまで従来の大学受験に対応するような、一問一答で教師の質問に答え、説明をノートに写すことが中心の、知識注入型の授業が展開されていたのではないかと想像します。その授業の形にICTを当てはめようとするので、小テストや紙の代わりといった使い方になっているように思います。
おそらく、今後1人1台のPCの環境が整備された時に、従来の授業の中で置き換えられるところを探すという、この学校と同様のことが起こるように思います。発想を変えて、これからの子どもたちに求められる力は何かをしっかりと考え、従来の授業の形にとらわれずにどんな活動をすればよいかを考えることで、ICTのよりよい活用場面が見えてくると思います。また、タブレットをノートと鉛筆の代わりと考えると、板書をノートに写す意味がなくなります。決まった内容は配信すれば済みますし、リアルタイムで板書されたものはデジカメで写せば事足ります。ノートに子どもが書く意味のあるものは、自身の思考過程や、振り返りが中心になってくるでしょう。このデータを蓄積して活かす方法が今後問われてくると思います。

今後1人1台のPC整備が進むと、課題になるのはWi-Fi環境です。この学校では1人1台導入時は、同時利用しようとするとネットにつながらない問題が多発したそうです。今ではインフラが整備され、全員が同時に利用しても支障なく快適に使うことができています。こういった環境面でのノウハウも重要になってきます。先進的に取り組んでいる学校のノウハウを全国で共有できる仕組みを作っていくことが求められます。

今回の公開授業が、ICT活用について多くのことを考えるきっかけになりました。よい刺激をいただけたことを感謝します。
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