指導案を作る時、何を大切にする

指導案の相談を受けることがよくあります。指導案を作る時に大切にすること、そして実際に授業をする時に注意する点について、私のアドバイスのやり方をもとに簡単にまとめてみたいと思います。

私が指導案を見ただけでアドバイスできることはかなり限定的になってしまいます。その理由は、その学級の子どもたちのことを担任のようにはわからないからです。発問に対して子どもたちがどのように反応するかで授業の展開は変わってしまいます。授業者と顔を合わせて、予想される反応を聞きながら一緒に考えることではじめて有効なアドバイスができるのです。
といっても、いきなり発問から検討するわけではありません。まず単元や教材を通じて子どもたちにつけたい力が何かを確認し、これをできるだけ具体的にすることから始めます。その力がついたということは、子どもたちがどんな発言や反応をすることでわかるのかという、ゴールとなる子どもの姿をイメージするのです。その上で、その姿を引き出すためにどのような課題や発問が必要かを考えます。まず、考えた課題や発問に対して子どもはどんな反応をするだろう、それに対してどのように切り返していけばよいだろうかと授業者とキャッチボールしていきます。いきなり目標とする反応が出てくればよいわけではありません。全員が目標とする反応を最初からするのであれば、つけたい力は既についているのですから、目標が低すぎるわけです。目標とする反応を数人がすると予想するのであれば、それを全体にどう広げるのかを考える必要があります。ねらいと異なる反応も当然予想されます。こういった言葉が出てきたら、「こう返そう」、いや「ちょっと相談する時間を取ろう」とその対応をシミュレーションし、どうしてもねらった言葉や反応を引き出せそうもなければ、課題や発問を変えることになります。指導案には書かれることがないかもしれませんが、予想される子どもの反応とその対応をできるだけ多岐にわたって想像するのです。説明をいろいろと考えることより、予想される子どもの反応とその対応をシミュレーションすることが、指導案の検討の第一だと思います。

実際に授業を始めると、子どもたちが授業者にとって都合のよい反応だけをしてくれるとは限りません。思わぬ反応に戸惑わないためにも、いろいろと予想しておくことが大切になります。とはいえ、事前に予想をしても、子どもたちは思いもよらない反応をしたり、すぐには理解できないような発言をしたりします。指導案の流れにこだわると、反応を無視したり発言を修正したり、追加で説明を始めたりすることになります。余裕がなければ難しいとは思いますが、子どもが思わぬ反応をした時に、指導案の流れはいったん忘れて、「面白い」「どういうことだろう」「もっと考えを聞きたい」という気持ちになってほしいと思います。そういう姿勢で接することで、子どもたちが安心して自分の考えを言ってくれるようになります。「○○さんの考えわかる?」と子どもたちにつないでいくことで、ずれた意見も子どもたちが修正してくれます。主体的、対話的に学ぶことにつながります。

指導案を作る時はできるだけ子どもたちの反応を予測し、その対応をシミュレーションする。実際に授業をはじめたら、予想外の子どもの反応も、指導案にこだわらず、できるだけ活かすことを考える。このことを大切にしてほしいと思います。
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