子どもたちの姿を共有する

私立の中学校高等学校で授業アドバイスを行いました。2学期は学年やコース単位で先生方と授業見学をして、授業後に検討会を行う形式で行うことになりました。この日は、高校2年生の一般コースと中学校が対象でした。

高校2年生は、全体として落ち着いて授業に参加していました。安定感があります。気になるのが、どの授業でも子どもたちの発言場面が少ないことです。子どもたちが落ち着いているのでどうしても先生の説明が多くなっているのです。子どもに問いかけても一問一答で終わっていることがほとんどです。また、子どもたちが指示されたことにはまじめに取り組むからでしょうか、「先生が説明する」、「子どもたちが板書を写す」、「課題を個人で取り組む」、また「先生が説明する」という流れの授業がかなり多く見られました。
一方で、グループやペアの活動を取り入れている授業も多くありました。子どもたちは人間関係もよく、互いにかかわることもできていますが、全体での共有場面ではなかなか発言してくれません。発言を受けてすぐに先生が説明することが多いため、子どもたちの全体での発言意欲が低くなっているようです。子どもの考えをつなぐことを意識してほしいと思います。
子どもたちが内容を理解できず、問いかけに反応できない時に、先生の説明が多くなることも気になりました。わからせたいという気持ちはわかりますが、理解するための時間が必要です。先生の説明を理解しようとしている時にどんどん言葉が足されていくと、頭の中がオーバーフローしてしまいます。ちょっと間を取って、子ども同士で相談する時間を取るといったことが必要でしょう。
授業をする先生方が、子どもたちにどうなってほしいのかが今一つ明確でないような気がします。子どもたちにつけたい力は何かを意識し、その力をつけるために必要な活動は何かを考えて授業を組み立ててほしいと思います。今回のような授業を見あう機会が、子どもたちに求める姿を共有するきっかけになることを願っています。

一緒に参加している先生方の質問に答えたり、子どもたちの様子を見て状況を解説したりしましたが、しっかりと受け止めてくれる先生がたくさんいたことをうれしく思いました。アドバイスを受けて早速午後に実践したと検討会で報告してくれた方もいました。学年全体で子どもたちの様子と授業について話し合う機会が持てたことはとても意義のあることだと思います。

中学校は、一人一台のiPadを活用する場面が多くありました。ICT機器の活用が日常化していることを感じます。子ども同士がかかわる場面も多いのですが、日ごろの人間関係が授業に持ち込まれている姿を多く目にしました。まわりと相談するような場面で、隣近所ではなく、遠く離れた座席の友だちと話をしたり、男子、女子だけで集まって相談したりしていることが多いのです。女子のエネルギーが大きいため、男子が女子を避けて集まっているようにも見えます。その一方で、強制的、機械的につくられたグループでは、ちゃんと男女が上手くかかわれています。どのような実験をするのかをグループで考える理科の授業では、額を寄せながら男女がかかわりながら相談していました。社会のグループでの活動も、男女が協力し合ってよい表情で発表する姿が見られました。
これまで、関係を上手くつくれない子どもがいるために、好きにかかわり合うようにさせてきたのでしょうが、その必要はもうないと思います。座席をもとにグループを作り、だれとでもかかわるよう求めることが必要です。
子どもたちにプロジェクト的に学習を進めさせることと、これまでの試験に対応するための問題演習とのバランスに苦労している方もいらっしゃいました。定期試験も含めて試験のあり方についても検討する時期になっているように思います。
ICTの活用では、社会科の発表の場面が印象的でした。若年層への選挙の投票を促す動画を作成して発表するのですが、中学3年生にしてはなかなか見事なものでした。発表に対して各グループから質問をさせることで、よい緊張感を持たせています。聞く側も楽しそうな表情で見ていますが、真剣に聞いていることがわかります。質問が終わると、クラウドのアンケート機能を使って発表を即時評価します。観点毎に評価の数字がすぐに示されます。また、発表に対してコメントする欄には、想像以上にたくさんの言葉が並んでいます。子どもたちはICT機器を実に自然に活用しています。一人一台の環境を活かした授業づくりを見ることができました。
また、面白い活用実態の報告もありました。数学のAIを活用した自習ソフトの活用です。問題演習の宿題にソフトを利用させるのですが、紙の時と比べて子どもたちの取り組みが段違いだというのです。紙の時は宿題にほとんど手をつけなかった子どもちゃんとやってくるというのです。学習時間は何倍にもなったそうです。その結果学力つくのかどうかはこれから検証する必要がありますが、実に興味深いことです。今後の推移が楽しみです。

中学校の検討会はグループで行われましたが、実に楽しそうに話されていることが印象的でした。生徒の人数が少ないこともありますが、先生方がどの子どものこともよく知っており、子どもたちの固有名詞が飛び交う話し合いでした。子どもたちのことや授業について気軽に話し合える空気があることを感じます。
授業を見あって、先生方が自由に話し合うことがこの学校の新しい文化となること願います。
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